以前はカリウム保持性利尿薬と呼ばれていたスピロノラクトンは最近ではMRAという位置づけとしてエプレレノンなどと一緒に語られることも多くなりました。
「浮腫」の適応を有する利尿薬ではあるのですが、フロセミドみたいなループ利尿薬と比べると利尿作用は弱いというのが一般的な認識かと思います。では、”どれくらい”弱いのか…。
ググってみたらこんな研究がありました。
医学部の薬理学実習でヒトを対象にした実習の導入可否の検証を目的とした研究なのですが、取り上げられたのが利尿薬の単回投与でした。尿量をプラセボと比較しているので見てみましょう。
医学部薬理学実習における利尿薬を用いたヒト実習項目の導入意義の検討
臨床薬理2019 年 50 巻 2 号 p. 33-40
健康成人6名が参加したクロスオーバー試験です。
フロセミドやトルバプタンと比べると、スピロノラクトンの尿量増加は軽度ですね。
ただし、スピロノラクトンのTmaxは2.5~3時間なので、観察時間では薬効が発揮されていないという可能性も…。カリウム排泄量もプラセボより増えてますからね(尿量増加に起因するものと思われますが)。論文の著者もカリウム排泄量がプラセボより低くなることを想定していたみたいですが、想定どおりにならなかったと述べています。
そして、フロセミドとトルバプタンの電解質排泄量の差よ…。Na利尿と水利尿の差がはっきりわかりますね!
ついでにエプレレノンとサイアザイド系もやってほしかったなぁ~。(←そもそもこの研究目的は利尿薬の効果を見るのが第一優先ではないので勝手なこと言うたらアカン汗)
エプレレノンは臨床用量なら尿量増加はほぼない、みたいな話を研修で聞いたことがあるので、プラセボとほとんどかわらないのかな?サイアザイドはどれくらい増えるんだろう!?
ちなみに6名のうちの1名でフロセミドによる一過性の血圧低下が起こりました。体重48.3 kg,BMI18.9 と比較的やせ型の女性です。投与前の血圧が114/62→投与後に100を下回り、投与2時間後に84/47へ。投与後の飲水量はビジアブのとおり定められていましたが、この方については中断して適切な飲水を許可したとのこと。
フロセミドはNa利尿なので主に血管内から水を引くので血圧が下がりやすいんでしょうね。水利尿のトルバプタンは血管内だけでなく血管外からも水を引っ張ってくるので血管内脱水は起こしにくく、一過性の血圧低下は起こしにくいんじゃなかったかなと。
最後にひとこと。
これは健康成人が対象なので、心不全など浮腫がある患者さんを対象にしたら、また違う結果になる可能性もあることを付け加えておきます。