pharmacist's record

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SGLT2阻害薬エンパグリフロジン服用開始後の尿量変化と尿糖の量は?

SGLT2阻害薬は尿糖排泄とナトリウム排泄による利尿作用がありますが、尿量増加は長く続かないそうです。
尿量・尿糖の変化を調べた報告あり(国内の研究)。

Yasui A, et al. Diabetes Ther. 2018 Apr;9(2):863-871. PMID: 29488164
Empagliflozin Induces Transient Diuresis Without Changing Long-Term Overall Fluid Balance in Japanese Patients With Type 2 Diabetes

初日はがっつり尿量が増えていますが、約1か月後にはプラセボと差がないという結果
服用から数日(day2~7)の経過が知りたいところですが…汗

この論文のディスカッションに「エンパグリフロジン投与1日目に24時間尿量が有意に増加したが、尿量はベースライン値に戻り、持続的な尿糖排泄にもかかわらず、5日目にはプラセボと比較して変化はみられなかった」という記述がありました。5日目は本研究では調査してないと思うので、引用文献のこちらの話かなと。
Pharmacodynamic Effects of Single and Multiple Doses of Empagliflozin in Patients With Type 2 Diabetes
PMID:27692976

数日で尿量は戻るとみていいんですかね。
本論文のディスカッションにて、「初期の短期間の尿量増加の後、1週間以内に平衡に達すると予想される」と言及されています。
心不全の先生の講演でも、そのように教わったようなおぼろげな記憶…。


一方、尿糖はどうかというと、ビジアブには載せてませんが、day1,27,28すべてプラセボより有意に多いです。グルコースの量としては1日80~90gくらい排泄されています。10mgと25mgの差はほとんどないように見受けられます。

↓詳細はこちら
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6104279/figure/Fig2/

1日300kcal分くらい喪失してるってことでしょうか。
体重が減るのも納得。


尿量安定後の尿糖1日80g、尿量1日2.5リットル(ベースライン値より少し多い)とすると、尿1mlあたりグルコース32mg。100ml=1dLなので、尿糖3.2g/dLってことですね。

診療ガイドライン - 第2章 検尿の原則:診療ガイドライン|社団法人 日本腎臓学会|Japanese Society of Nephrology
↑こちらによると、

という目安のようなので、SGLT2阻害薬を”きちんと毎日飲んでいれば”おそらく「4+」になるであろうと考えられます。尿の希釈具合で多少はブレるでしょうけど、「1+」とかだと尿糖の量が少ないのでちょっとおかしいですね。尿検査の結果は、SGLT2阻害薬の服薬コンプライアンスのチェックにも使えるかもしれません。

ちなみにこちらの51ページに各試験紙の目安が載っていますがキットによって目安が異なるようです。
https://www.jccls.org/pdf/approval/063_026.pdf
1000mg/dLで「4+」の試験紙もあれば、2000mg/dLで「3+」のものもあるようなので結果の解釈にご注意ください。