pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

子宮頸がん対策は検診だけやっておけば大丈夫?

ph-minimal.hatenablog.com
ちょっと前の話ですが、HPVワクチンについての情報発信「みんパピ」に支援しました。
職場にも流しましたが、うーん…、反応はイマイチ。

まだまだ大勢の人がこの問題を知らないというかなんというか…。
あぶないワクチンなんでしょ?で片付けられてしまっている現状。

とりあえず、自分は身の回りの人たちにどこまで知っているのか聞いて回ってます。
「やっぱり副反応が怖い」ということで迷っている方がいますね。
自分もその気持ちはわかります。
恐怖というのは、ウイルスよりも驚異的な速度で伝播しますからね。
何年か前のあの時点で日本全国に恐怖が蔓延したのです。

自分もこの問題について徹底的に解説できるレベルにないので、少しずつ勉強していきます。

よくあるのが、「検診をちゃんと受けていれば大丈夫でしょ」っていうやつです。

本当にそうなのでしょうか?

今回のテーマはワクチンではなく、「子宮頸がん検診を受けておけばヨシ」なのかどうかです。

f:id:ph_minimal:20200917112612p:plain
※子宮頸部上皮内腫瘍 (cervical intraepithelial neoplasia、CIN)

必ずしも右方向(悪化)にだけ進んでいくのではなく、逆方向(改善)に進むケースも多いようです。
消失率のくわしいデータはこちらが参考になります。

Natural history of dysplasia of the uterine cervix
J Natl Cancer Inst. 1999 Feb 3;91(3):252-8.PMID:10037103
(Table3 2年、5年、10年での悪化or改善の割合が載っています)

ちなみにCIN→がんの2年進展率は30%だそうです。
日本産科婦人科学会雑誌第64巻第9号 4)CIN の経過観察と治療の判断」)


さて、この流れをみて、なんで「検診をうけておけばヨシ」という考え方になるのか自分にはよくわかりませんでした。
検診でCIN1~CIN2が見つかったとしても、進行を防ぐためにできることはなにもありません。
定期的にフォローしていくだけです。
さぞ精神的負担になるでしょうね。進行してないか毎回ドキドキしながら検診を受けるわけです。

あくまで進行の度合いの経過を「観察する」だけで、いよいよやばいとなったらメスをいれる…というのが定期検診です(この認識で合ってますよね?)。自分が女性の立場になったら、検診でがん化を防いだとしてもメスを入れるなんて超怖いですし、ぜったい嫌ですけどね。ワクチンの副反応に対する恐怖もさることながら、がんに至る前の段階のCINも怖いって思うんですけど…。

もしCIN1~2で発見されたら、薬をつかったりして治癒できるっていうなら、「検診をうけておけばヨシ」というのもわかるのですが、あくまで観察するだけで、進展して治療適応になったら侵襲的処置ですからね…。これで「検診をうけておけばヨシ」というのはちょっと共感できませんでした。


今後、HPVワクチンについては続々とエビデンスがでてくると思います。
NEJMのコホート研究(がんをアウトカムにした初の観察研究)はこのブログで取り上げましたっけ?ブログに書いたか忘れましたが、似たようなデータがたくさん出てくるでしょうね。世界的には子宮頸がん撲滅に向けて着々と進んでいるようです。

さて、日本はどうなるか!?
というところなのですが、このネタ、1ヶ月くらい前に書きかけの状態で放置していたテーマでして…。いまはコロナがヤバいですね。自分はずーーっとStayHomeなので、生活に変化はないのですが、みなさん、なるべく3密は避けて行動しましょう。あと体調不良なら仕事を休んでくださいね(体調良好でも仕事を休みたいひと、ぼくと握手)。