pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

みんパピ! ~みんなで知ろうHPVプロジェクト~

クラウドファンディング

と言われると、キングコングの西野さんがやってたやつだな!っていうくらいの知識しかないのですが…

readyfor.jp

キターー!!
これは世の中(日本)が変わる分岐点なのでは!?って感じですね。
日本以外の先進国はすでにHPVワクチンの接種率が上がっているのですが、日本は…
(WHOから名指しで日本が批判されたなぁ…遠い目)

これは支援するしかないっしょ!
てことで、参加したのですが、これが俗に言うクラウドファンディングってやつみたいです。

さらば諭吉!
女性の命と子宮を守るために旅立つのだ!


さて…、私は産婦人科医と違って、この問題にあまり詳しくないのですが、パッと思いつくのがランセットに載った論文ですね。
Impact of HPV vaccine hesitancy on cervical cancer in Japan: a modelling study
Lancet Public Health. 2020;5(4):e223-e234.PMID: 32057317

2010年、日本で12~16歳の女児にHPVワクチンの定期接種が開始

当初の接種率は70%以上だったが、2013年に有害事象の報告を受けて積極的推奨が中止。
メディアで大きく取り上げられ、接種率は1%未満に低下。
現在も接種率は低いまま。

この2013年からのワクチンクライシスにより、接種率が70%以上を維持した場合と比べ、生涯にわたって24,600~27,300例の発症、5,000~5,700例の死亡をもたらすと予測。
しかし2020年に接種率を回復させれば、14,800~16,200例の発症と3,000~3,400例の死亡を防ぐことが可能との見積もり
ワクチンクライシスが続けば、今後50年間で防ぐことができたはずの子宮頸がんによる死亡が9,300~10,800人にのぼるとの見込み。


こりゃあヤバいことになってるぞと思いました。
なにがおそろしいかって、日本のメディアがこの問題をスルーしていることもあって(もちろん例外もあります!Buzzfeedの岩永さんとか!)、こういうワクチンがあるっていうことをそもそもみんな知らないのです。

「子宮頸がんの前がん病変を防ぐワクチンがあるが有害事象の懸念を指摘している人もいる」という日本の実情を知っていて、「なんか怖いからみんな打たない」っていうわけではないんです。

知らないんです
(少なくとも私の周りは薬剤師以外は知らなかったです。せいぜい、なんか怖い副作用がでて中止になったんだっけ?くらいの薄れゆく記憶となっている模様)。

知らないんだから接種率は上がりませんよね。

こんなに医療従事者たちが声をあげているのに、テレビとか完全にスルーですよね。なんでだろ?
テレビの影響力ってやっぱりすごいので上手に協力しながらやっていきたいんですけど…

副作用が心配っていう人たちの気持ちを無視しろってわけではなく、きちんと向き合いながらこのワクチンの有用性についての議論にスポットライトがあたればいいなと個人的には思います。
まずは知ってもらわないと話になりませんから…。

メディアも取り上げざるを得ないほど、このプロジェクト「みんパピ」が大きくなるといいですね!



HPVワクチンについての論文情報はBuzzfeedの峰先生(NIHの先生)の記事にまとまっています
HPVワクチンをめぐる12個の作り話をファクトチェック 「危険?」「効果がない?」(前編)

こちらも読み応えあり
HPVワクチン 厚労省はいつ積極的勧奨を再開するのですか?
いろいろ考えさせられます。。。