糖尿病の治療薬が続々と開発され、種類が多くなってきました。
看護師さん向けのバイタルサインの本に、血糖値についての解説があり、糖の流れを回転寿司に例えるという、とてもわかりやすい記述がありました。
早わかり見える!わかる!バイタルサイン―バイタルサインのしくみと「キメドキ」がわかる! (Smart nurse Books 12)
- 作者: 石橋克彦
- 出版社/メーカー: メディカ出版
- 発売日: 2012/03/19
- メディア: 単行本
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少しアレンジして、各種糖尿病治療薬の作用の違いについても、回転寿司に例えてみると、おもしろいです。
回転寿司のレーン:血管
寿司:ブドウ糖
割り箸:インスリン
お客さん:細胞
市場でマグロを仕入れてきて、寿司ネタ用にさばきます(=食事をとり炭水化物を吸収して、消化酵素で分解し、ブドウ糖へ)。←ここを邪魔するのがグルコシダーゼ阻害薬。寿司ネタの供給が滞ります。
寿司がレーンに乗って巡ります。お客さんが寿司を食べるのには割り箸が必要です。この回転寿司は特殊で、寿司を1つ食べるのに割り箸が1つ必要です。その割り箸はカウンターにはなく、寿司と同じようにレーンに流れています。割り箸がないとお客さんは寿司を食べることができず、レーンに寿司がたまってしまいます(血液中のブドウ糖を細胞に取り込んでエネルギー源としますが、細胞に取り込むにはインスリンが必要)←割り箸をレーンに直接投入するのがインスリン注射薬です。速攻型は一気にレーンに投入、持効型は少しずつレーンに投入して長時間一定の量に保ちます。
ある風変わりな客(肝臓)は寿司を食べずに、寿司をたくさんつかって巨大寿司をつくります(グリコーゲン貯蔵)。これはいざというときの蓄えとなり、必要に応じて寿司を新たに作って(糖新生)、再度レーンに流すことができます。←新たに寿司をつくるのを防ぐのがメトホルミン(他にも様々な作用機序あり)
寿司はレーンを巡って、いったん廃棄コーナーへと向かいますが、ゴミ箱に捨てられるのはもったいないということで、やっぱりレーンに復活します(尿細管での糖の再吸収)←これを邪魔して、ゴミ箱に捨ててしまえ!というのがSGLT阻害薬です。
寿司がレーンに溜まっている状態が続くと、客が寿司を食べるのに飽きてくるのか、割り箸の使い方すらわからなくなってしまいます(インスリン抵抗性)。←割り箸の使い方を客に教えるのがピオグリタゾンやメトホルミン
店内には割り箸工場(膵臓のランゲルハンス島)があって、そこで割り箸をつくっています。
SU剤は、割り箸工場のスパルタな現場監督です。問答無用に割り箸を作らせます。
グリニド系も、スパルタな現場監督ですが、すぐにいなくなってしまいます。
GLP1は、割り箸工場の臨機応変な現場監督で、四六時中、割り箸を作らせるのではなく、寿司がレーンに流れていないときは、サボっていいよと指示を出します。
DPP4阻害薬は、GLP1と似てるのですが、その臨機応変な現場監督がすぐにどっかへ行ってしまうので、それを邪魔して、現場に留まらせます。
1型糖尿病は割り箸工場が機能していないという病態なので、治療薬は割り箸を投入しなくてはいけないことがわかります。現場監督をいれても、割り箸の使い方を教えても、寿司をゴミ箱に捨てても駄目です。割り箸がないと寿司をお客さんに食べさせることができません。割り箸がないと細胞内飢餓となってしまいます。
大雑把にまとめるとこんな感じになるかと思います。いろいろとツッコミどころがあるかと思いますが、こういうのも面白いかなと。
こうしてみてみると、エネルギーを外に出してしまう、というカロリー制限という観点では2型糖尿病においては利にかなっているように思えるSGLT2阻害薬ですが、副作用があいついで報告されています。
日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society
上記、SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationは必読かと思われます。この暑すぎる夏…、脱水注意ですね。
↓もちろんメトホルミンも脱水注意です。
「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」から:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society