pharmacist's record

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糖尿病の治療薬を回転寿司で例えると

 糖尿病の治療薬が続々と開発され、種類が多くなってきました。

 看護師さん向けのバイタルサインの本に、血糖値についての解説があり、糖の流れを回転寿司に例えるという、とてもわかりやすい記述がありました。

早わかり見える!わかる!バイタルサイン―バイタルサインのしくみと「キメドキ」がわかる! (Smart nurse Books 12)

早わかり見える!わかる!バイタルサイン―バイタルサインのしくみと「キメドキ」がわかる! (Smart nurse Books 12)

 

 少しアレンジして、各種糖尿病治療薬の作用の違いについても、回転寿司に例えてみると、おもしろいです。

 

回転寿司のレーン:血管

寿司:ブドウ糖

割り箸:インスリン

お客さん:細胞

 

 市場でマグロを仕入れてきて、寿司ネタ用にさばきます(=食事をとり炭水化物を吸収して、消化酵素で分解し、ブドウ糖へ)。←ここを邪魔するのがグルコシダーゼ阻害薬。寿司ネタの供給が滞ります。

 

 寿司がレーンに乗って巡ります。お客さんが寿司を食べるのには割り箸が必要です。この回転寿司は特殊で、寿司を1つ食べるのに割り箸が1つ必要です。その割り箸はカウンターにはなく、寿司と同じようにレーンに流れています。割り箸がないとお客さんは寿司を食べることができず、レーンに寿司がたまってしまいます(血液中のブドウ糖を細胞に取り込んでエネルギー源としますが、細胞に取り込むにはインスリンが必要)←割り箸をレーンに直接投入するのがインスリン注射薬です。速攻型は一気にレーンに投入、持効型は少しずつレーンに投入して長時間一定の量に保ちます。

 ある風変わりな客(肝臓)は寿司を食べずに、寿司をたくさんつかって巨大寿司をつくります(グリコーゲン貯蔵)。これはいざというときの蓄えとなり、必要に応じて寿司を新たに作って(糖新生)、再度レーンに流すことができます。←新たに寿司をつくるのを防ぐのがメトホルミン(他にも様々な作用機序あり)

 寿司はレーンを巡って、いったん廃棄コーナーへと向かいますが、ゴミ箱に捨てられるのはもったいないということで、やっぱりレーンに復活します(尿細管での糖の再吸収)←これを邪魔して、ゴミ箱に捨ててしまえ!というのがSGLT阻害薬です。

 寿司がレーンに溜まっている状態が続くと、客が寿司を食べるのに飽きてくるのか、割り箸の使い方すらわからなくなってしまいます(インスリン抵抗性)。←割り箸の使い方を客に教えるのがピオグリタゾンやメトホルミン

 店内には割り箸工場(膵臓のランゲルハンス島)があって、そこで割り箸をつくっています。

 SU剤は、割り箸工場のスパルタな現場監督です。問答無用に割り箸を作らせます。

 グリニド系も、スパルタな現場監督ですが、すぐにいなくなってしまいます

 GLP1は、割り箸工場の臨機応変な現場監督で、四六時中、割り箸を作らせるのではなく、寿司がレーンに流れていないときは、サボっていいよと指示を出します。

 DPP4阻害薬は、GLP1と似てるのですが、その臨機応変な現場監督がすぐにどっかへ行ってしまうので、それを邪魔して、現場に留まらせます

 1型糖尿病は割り箸工場が機能していないという病態なので、治療薬は割り箸を投入しなくてはいけないことがわかります。現場監督をいれても、割り箸の使い方を教えても、寿司をゴミ箱に捨てても駄目です。割り箸がないと寿司をお客さんに食べさせることができません。割り箸がないと細胞内飢餓となってしまいます。

 

 大雑把にまとめるとこんな感じになるかと思います。いろいろとツッコミどころがあるかと思いますが、こういうのも面白いかなと。

 こうしてみてみると、エネルギーを外に出してしまう、というカロリー制限という観点では2型糖尿病においては利にかなっているように思えるSGLT2阻害薬ですが、副作用があいついで報告されています。

日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society

上記、SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationは必読かと思われます。この暑すぎる夏…、脱水注意ですね。

↓もちろんメトホルミンも脱水注意です。

「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」から:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society