エストリオール膣錠(ホーリンVなど)は高齢女性の萎縮性膣炎に用いられます。
エストロゲンの膣への作用
①膣粘膜の発育・増殖にて、膣の弾力性を増し、厚みをもたせる
②膣の自浄作用(pHを酸性に保ち、他の細菌の増殖を抑える)
③膣に潤いを与える
萎縮性膣炎
閉経後の女性ではエストロゲンの分泌低下により上記エストロゲンの作用が低下し、膣内pH上昇による膣炎・尿路感染症、膣の萎縮・乾燥、かゆみ、性交痛、頻尿などの症状をきたす。
<萎縮性膣炎の治療>
RCTやメタ解析より、
・エストロゲンの全身投与と膣内投与の有効性に有意差がなかったこと、患者の自己評価では膣内投与のほうがより有効であったこと
・ エストリオール0.5mg、1mgの膣錠の比較研究で、いずれも有効かつ効果に有意差がなかったこと
などより、低用量エストロゲン局所療法が勧められている。
ただし、エストロゲン膣錠が別の病態に用いられることがあります。性器脱のペッサリー療法です。
性器脱(骨盤臓器脱)
骨盤底筋群によって支えられている膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓器が、出産や加齢によって骨盤底筋が緩むと、支えを失った臓器が膣内に落ちてくる。子宮が膣から出てきてしまうことを子宮脱と呼ぶ。
リスク因子:出産(産道を通過するときに骨盤底筋が障害をうける)、肥満・慢性の咳・便秘など(腹圧が上がり骨盤底に負荷がかかる)
症状:性器の下垂感・異物感・脱出感、脱出部分のただれ・炎症・出血。膀胱脱を伴うと尿失禁・頻尿・残尿感・尿閉など。直腸脱を伴うと排便困難・便秘など。
横になると楽になるのが特徴。無症状であることも多い。
<治療>
骨盤底筋訓練、ペッサリー療法、手術療法など
・子宮が膣口より1cm奥まで下垂する、もしくは膣外へ脱出する場合は、ペッサリー療法or手術療法
・子宮が膣口より1cm奥まで達しない場合は、骨盤底筋訓練を行う
[ケーゲル体操(骨盤底筋訓練)]
性器脱の悪化を防ぐという報告あり
膣と肛門をギュッと締める(5秒)⇔緩める(10秒)を5回繰り返す。速いペースで締める⇔緩めるを5回繰り返す。これを1日5~10セット、毎日行う。
↓尿失禁にも有効
[ペッサリー療法]
子宮を上に押し上げて固定する
副作用:おりもの・出血・違和感・不快感など
管理法:初回装着後、自然脱出や出血がなければ2週間後に点検。その後は1~6ヶ月程度の定期的な診察にて有害事象のチェック、ペッサリーの洗浄や交換を行う。
ペッサリー装着後の膣壁のびらんの予防として、エストラジオール膣錠1mg分1眠前投与が有効。
このようなデリケートな疾患の場合、問診表に症状などを記載していただけないことが多いです。そうなると薬局薬剤師は診断名を知らされぬまま処方内容の情報だけで患者さんとファーストコンタクトをとることになりますので、あらゆる可能性を考えながら、服薬指導を行う必要があります。
参考