咳や発熱などのコモンな症状の原因疾患は幅広く知っておく必要があると思います。咳や発熱というと、多くは風邪によるもので自然軽快しますが、肺炎が隠れていることもあります。また、咳が長引く場合は、上気道咳症候群や咳喘息、風邪症状の先行がなければGERDの疑いもあります。
検査をせずに肺炎を予測できる? - pharmacist's record
長引く咳について - pharmacist's record
咳や発熱の裏に環境的素因が隠れていることもあります。たとえば、引っ越してから、咳や発熱がみられたとなると、過敏性肺炎の疑いがあります。
過敏性肺炎(過敏性肺臓炎)
病原性や毒性のないカビや、ペットなどの動物性蛋白質、化学物質などの抗原となりうるものを繰り返し吸い込むことで肺が感作され、アレルギー性の間質性肺炎が生じる。
クームスⅢ型、Ⅳ型アレルギーに分類。
Ⅲ型:抗原が免疫複合体を形成。皮膚反応は遅発型3~8時間
Ⅳ型:感作T細胞と抗原との反応によりT細胞からサイトカイン放出。皮膚反応は遅発型24~72時間
<過敏性肺炎の症状・所見>
咳、発熱、呼吸困難、全身倦怠感など。慢性では体重低下がみられることも。
胸部X線:両側の肺にすりガラス状の陰影(異常所見が見られないこともある)
急性では半日程度で発症し、亜急性では数日から数週間、慢性期では急性・亜急性の反復。
<原因(抗原)>
夏型過敏性肺炎:トリコスポロン(カビ)を抗原とする過敏性肺炎で70~80%を占める。腐木に繁殖しやすく古い日本家屋などで起こりやすい。湿気の多い浴室や台所で働くことが多い主婦に発症しやすい傾向にある。高温多湿の夏季に発症しやすく、夏風邪と間違えられることがある。
鳥飼病(鳥の糞):過敏性肺炎の4%程度。インコや鳩の排泄物の蛋白質が抗原となる。鳥の飼育、羽毛布団の使用、周辺に公園など鳥の多い環境などで発症することがある。
農夫肺:過敏性肺炎の8%程度を占める。干し草の好熱性放線菌というカビが抗原となる。カビを含んだ有機粉じんの吸入で発症。北海道や東北に多い。
加湿器肺:清掃を怠った加湿器に生じたカビを吸入することで発症。エアコンが原因となることもあり、あわせて換気性装置肺と呼び、過敏性肺炎の4%程度を占める。
その他:きのこ栽培業者でみられるきのこの胞子の吸入、さとうきびの吸入、かびの生えた畳、実験動物飼育などさまざま。
<治療>
①抗原の回避:浴室や台所のカビに注意。加湿器・エアコンの清掃。公園など鳥の多い場所を避ける。場合によっては転居・転職を余儀なくされることもある。
②薬物治療
低酸素血症を伴うような中等症以上の症例では、副腎皮質ステロイド短期間使用を考慮。プレドニゾロン20~40mg程度で開始し、漸減。一般にステロイドの反応は良好とされるが、反応が悪い場合、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日、3日間)で緩解したという報告もある。また、難治例では免疫抑制薬のシクロスポリンを用いることもある。
農夫肺36名を対象としたDB-RCT
プレドニゾロン8週間投与(20名)、プラセボ8週間投与(16名)
肺機能の改善はプレドニゾロンで有意(投与1ヵ月後)だったが、長期的には有意差無し。短期的な症状改善に有効とされる。
風邪の対症療法を行っても症状が改善しないとなると、さまざまな原因を考えなくてはなりません。診断に必要な情報は検査結果だけはなく、患者さんの情報が大事です。診察を受ける時、医師からなぜそんな生活習慣のことを聞かれるのかと疑問に思ったりすることもあるかもしれませんが、診断に必要な情報を探しているのです。なにか変わったことがあったら医師にきちんと伝えることをおすすめします。