2014年4月より調剤薬局で血液検査が可能となりました。導入している調剤薬局チェーンもあるようです。
薬局で血液検査を行うことで病気の早期発見が可能となり利用者に利益が得られるのであれば良いのですが、1年に1回の健康診断を受けていれば、病気のスクリーニング力に大差はないのでは?という気もしますので導入の是非については検証の余地があるようにも思います。何はともあれ、薬剤師も検査データを読み取る勉強をしなくてはならないのは間違いありません。
今回はHbA1cについて取り上げます。
HbA1c
赤血球に含まれるタンパクの一種で、酸素を運ぶヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの。赤血球の寿命が約120日であることから、過去1~2ヶ月の血糖値を反映し、血糖コントロールの指標となる。
目標 | HbA1c |
---|---|
血糖正常化を目指す | 6.0未満 |
合併症予防 | 7.0未満 |
治療強化が困難な場合 | 8.0未満 |
熊本宣言2013 ―あなたとあなたの大切な人のために Keep your A1c below 7%―:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society
熊本宣言2013より
Diabetes Care 2008年8月号(アメリカ糖尿病学会)によると、
Hb1Acと平均血糖値の関係は、HbA1c6.0%≒平均血糖値126mg/dL(100-152)となっており、HbA1c1%上昇に伴い、平均血糖値は約30mg/dL上昇。
換算式は、
過去1~2ヶ月の推定平均血糖値(mg/dl)=28.7×HbA1c(%)-46.7
ただし、HbA1cはさまざまな理由により偽性高値・偽性低値を示すことがある。
急速に血糖値が変動した場合は、1~2ヶ月の血糖値を反映するHbA1cは偽性高値、偽性低値となる。
<HbA1c偽性高値>
・脾臓摘出による赤血球寿命延長
・赤血球産生低下に伴う赤血球寿命延長(鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、腎不全時のエリスロポエチン分泌低下による腎性貧血などによる)
・腎不全におけるBUN上昇(尿素により産生されるカルバミル化Hbのため)
・慢性アルコール中毒
・アスピリン大量投与
<HbA1c偽性低値>
・輸血後(血糖正常な血液輸血)
・妊娠による赤血球寿命短縮
・脾機能亢進により脾臓で赤血球破壊が亢進(肝硬変など)
・溶血性貧血
・血液透析(溶血を伴う)
・貧血治療による赤血球産生亢進(鉄欠乏性貧血への鉄剤投与、腎不全に伴う腎性貧血へのエリスロポエチン投与など)
※腎不全ではさまざまな変化がみられるが、腎性貧血治療のエリスロポエチン投与により、偽性低値を示すことが多い。
たとえば、糖尿病と貧血が見つかり、食事療法と貧血治療を開始した場合、鉄剤の投与によりHbA1cが下がる可能性があります。食事で糖尿病も改善したから糖尿病の治療は不要と勘違いしてしまう。実際、そんなケースがあるかわかりませんが、HbA1cは血糖値によらずに変動することもあるということは薬剤師も知っておいたほうが良さそうです。注意すべきは治療が必要な糖尿病患者さんが勝手に治療をやめてしまうことですので、適切なアドバイスが出来るよう検査値の知識も必要とされると思います。