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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

股関節痛と、変形性股関節症の画像所見は一致しない?

整形外科 症候・診断・検査

Association of hip pain with radiographic evidence of hip osteoarthritis: diagnostic test study. - PubMed - NCBI
BMJ. 2015 Dec 2;351:h5983.
股関節痛と、変形性股関節症X線検査の関係性を検討したdiagnostic test study。

以下の2つの研究が対象
Framingham Osteoarthritis Study(n=946) 、Osteoarthritis Initiative(n=4366)
平均年齢:61~63歳
女性:5~6割
BMI:28
頻繁な股関節痛の有病率:約15%


<結果>
Framingham(table2)

感度(X線所見あり) 特異度(X線所見なし)
鼠径部の痛み(Groin pain) 36.7%(11/30) 90.5%(1647/1820)
大腿前部の痛み(Anterior thigh pain) 24.4%(11/45) 90.4%(1632/1805)
鼠径部または大腿前部の痛み 27.1%(16/59) 90.6%(1623 /1791)
頻繁な股関節痛、内旋に伴う股関節痛 18.0%(9/50) 90.3%(1625/1800)

(number with symptom/total number)

Osteoarthritis Initiative(table3)

感度(X線所見あり) 特異度(X線所見なし)
鼠径部の痛み(Groin pain) 16.5%(39/237) 94.0%(7984/8495)
大腿前部の痛み(Anterior thigh pain) 15.3%(24/157) 93.9%(8049/8575)
鼠径部または大腿前部の痛み 15.8%(51/323) 94.1%(7910/8409)

(number with symptom/total number)


<結論>
股関節痛と変形性股関節症の画像所見は必ずしも一致しない。
股関節のX線画像所見に依存すると、多くの高齢者の変形性股関節症を見逃す可能性あり。


<感想>
変形性股関節症は痛みや歩行機能障害の主な原因であり、股関節痛がありX線画像所見が得られれば変形性股関節症と診断される(What is already known on this topicより)ということですが、必ずしも画像所見と一致しないので見落としに注意ということです。

股関節痛があっても、画像所見がない割合がそこそこ多く、画像所見があっても股関節痛の訴えは半数以下。
画像所見ありの群の母数がとても少ないですね…。特異度は高めですが、陽性的中率は高くありません。

自分の理解力不足のせいか、resultをどう解釈すればよいかいまいち釈然としませんでした。
画像所見に異常がないなら、痛みがあってもそれは変形性股関節症ではないのでは?という気もします。著者の指摘のとおり画像所見の見落としの可能性もあるかもしれませんが、そもそも別の原因が隠れていないかの再検討も大事なのではないかと思うのですが…。


変形性股関節症の国内の有病率は単純X線診断で男性で2.0%((平均年齢64歳)、女性で7.5%(平均年齢49歳)
(「変形性股関節症の疫学―1,601例の病院受診者に対する調査」より)
今回とりあげたBMJの文献では、X線診断では見落としがあるということで、実際の有病率はもっと高いという可能性もあるかもしれません。

診断基準としてはアメリカリウマチ学会(The American College of Rheumatology)の診断基準(ACR基準)が知られています。
The American College of Rheumatology criteria for the classification and reporting of osteoarthritis of the hip. - PubMed - NCBI
Arthritis Rheum. 1991 May;34(5):505-14.

①大腿骨または臼蓋の骨棘(こつきょく)形成 
②関節裂隙の狭小化(joint space narrowing)
③ESR(赤沈):20mm/h未満
股関節痛と、①~③のうち2項目以上該当で、感度89%、特異度91%

ACRの①、②は画像所見です。
病期の見極めや、手術法の選択にもX線画像所見が有用とされています。
(「変形性股関節症における立位X線像と病期との関係」整形外科と災害外科Vol. 52 (2003) No. 3 P 674-677)

ACR基準は感度も特異度も良好ですが、一方で信頼性が低いという報告もあります。
Validity, reliability, and applicability of seven definitions of hip osteoarthritis used in epidemiological studies: a systematic appraisal. - PubMed - NCBI
Ann Rheum Dis. 2004 Mar;63(3):226-32
こちらの文献ではACR基準はプライマリケアの場において、poor reliability(信頼性に乏しい) and poor cross-validity(妥当性に乏しい)と評されています。


診断については難しいことはわかりませんが、レントゲン写真だけに依存すると変形性股関節症を見落としてしまう恐れもあるかもしれないので総合的に慎重に評価しよう、他の痛みの原因がないかについても追及しよう、というところでしょうか。
ACR基準のように、ESRにて炎症性疾患を除外することも大事かもしれませんね。