pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

デュタステリド(CombAT trial)

出荷停止になってしまったデュタステリドの有用性について

Clinical outcomes after combined therapy with dutasteride plus tamsulosin or either monotherapy in men with benign prostatic hyperplasia (BPH) by b... - PubMed - NCBI
BJU Int. 2011 Mar;107(6):946-54
CombAT trial
研究デザイン:多施設、ランダム化、二重盲検、並行群間試験、ITT解析
P:50歳以上の前立腺肥大 (BPH;benign prostatic hyperplasia)の男性4844名
E/C:①併用群タムスロシン0.4mg+デュタステリド0.5mg ②デュタステリド0.5mg ③タムスロシン0.4mg 
O:急性尿閉(AUR;acute urinary retention)または前立腺関連の手術までの期間
追跡期間:4年


<患者選定基準>
IPSS≧12
PSA:1.5~10ng/mL
前立腺容積(PV;prostate volume):≧30mL
Qmax:5–15 mL/s
最小排尿量:≧125mL

<患者除外基準>
前立腺がんの既往
3か月以内の前立腺手術
3か月以内の急性尿閉
タムスロシン、フィナステリド、デュタステリドによる治療失敗経験

<結果>
AUR/BPH関連手術の増加(Fig1)

AUR/BPH関連手術の頻度 併用 デュタステリド タムスロシン
PV≦42mL 3.6% 4.4% 6.1%
PV42~57.8mL 3.4% 4.7% 10.7%
PV>57.8mL 5.6% 6.6% 18.4%
PSA<2.7ng/mL 2.7% 4.8% 7.0%
PSA2.7~4.4ng/mL 3.8% 6.1% 12.3%
PSA≧4.4ng/mL 6.0% 4.8% 15.9%

(詳細は原著をご参照ください)


<感想>
とくに前立腺容積が大きいケースでは、タムスロシン群でリスクが増加しています。

デュタステリドによって縮小した前立腺が投与中止後に再肥大化するのに数か月を要するようですが、前立腺容積が大きいケースでは、前立腺を縮小する作用のないαブロッカー単独治療ではAURのリスクは高いと示唆されています。

デュタステリドを中止したらどうなるかを見た臨床試験などないと思います(もしあったらすみません汗)ので予測できませんが、デュタステリドを休薬する場合、とくに重症例においては慎重に経過を見ていく必要がありそうです。


関連記事
デュタステリドvsフィナステリド(前立腺肥大症) - pharmacist's record