まだ発売されていないようですが、GSKの帯状疱疹ワクチンの第3相試験の結果が去年NEJMに掲載されました。
Efficacy of an adjuvanted herpes zoster subunit vaccine in older adults. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2015 May 28;372(22):2087-96
高齢者における水痘帯状疱疹サブユニットワクチン「HZ/su」の有効性を検討した第3相試験
研究デザイン:プラセボ対照ランダム化比較試験、18か国で実施
P:50歳以上の高齢者(50代、60代、70歳以上)
E:帯状疱疹ワクチン(n=7698)
C:プラセボ(生理食塩水)(n=7713)
O:帯状疱疹リスク
追跡期間3.2年
E/C:2か月間隔をあけて、2回投与。筋肉内注射。2回目の投与の1か月後よりフォロー開始。少なくとも30か月追跡。
<患者選定基準>
Supplementary Appendixより
not included:帯状疱疹の既往、水痘または帯状疱疹の予防接種歴あり(子供のころの水痘ワクチンも含む)、免疫抑制状態(悪性腫瘍やHIV、自己免疫疾患の治療など)など
<患者特性>
平均年齢:62歳
女性:6割
人種:白人7割、アジア人2割
<結果>
帯状疱疹ワクチン | プラセボ | |
---|---|---|
帯状疱疹の発症 | 6/7698(0.3/1000人年) | 210/7713(9.1/1000人年) |
7日以内の有害事象 | ||
注射部位の痛み | 3464/4382(79%) | 490/4377(11%) |
注射部位の赤み | 1664/4382(38%) | 59/4377(1.3%) |
注射部位の腫れ | 1153/4382(26%) | 46/4377(1.1%) |
筋肉痛Myalgia | 2025/4375(46.3%) | 530/4378(12.1%) |
疲労Fatigue | 2008/4375(45.9%) | 728/4378(16.6%) |
頭痛 | 1716/4375(39.2%) | 700/4378(16.0%) |
震えShivering | 1232/4375(28.2%) | 259/4378(5.9%) |
発熱 | 939/4375(21.5%) | 132/4378(3.0%) |
胃腸症状Gastrointestinal symptoms | 788/4375(18.0%) | 387/4378(8.8%) |
投与30日以内の重篤な有害事象 | 87/7698(1.1%) | 97/7713(1.3%) |
※年齢層による有効性の差はほとんどない。
プラセボと比較して帯状疱疹が激減していますが、絶対リスクは年間0.88%の減少なので、1年NNVは114でしょうか。
114人にワクチン接種することで年間1人帯状疱疹を防げるという計算になります。
有害事象として注射部位の痛みは腫れがみられるのはわかるのですが、筋肉痛や疲労、頭痛、発熱などの有害事象も多いですね。ただプラセボでも筋肉痛、頭痛、疲労などは1割を超えていることに驚きました。ちなみに重篤な有害事象はプラセボと差はないという結果。
子供のころに水痘(水ぼうそう)にかかったことがあるなら水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の免疫を獲得するものの、体力低下/加齢などにより、神経節に潜んでいたウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症するとされていますが、すでにVZVに感染して免疫獲得したのに、なぜ帯状疱疹ワクチンが有用なのかいまいちイメージできなかったのですが、NEJMのこの画像がわかりやすいです。
http://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/2005/nejm_2005.352.issue-22/nejmp058091/production/images/medium/nejmp058091_f1.gif
N Engl J Med. 2005 Jun 2;352(22):2266-7.
国内で2014年に水痘ワクチンが定期接種となり、小児の水痘罹患率が減ることで、成人へのVZVの暴露が減り、無症候性の再活性化が起きなくなることで、高齢者の帯状疱疹の罹患が増えるという説もあるようです。
後遺症を残しやすい顔面麻痺をきたすRamsay Hunt症候群といったやっかいな合併症もありますし、帯状疱疹後神経痛が残ってしまい苦しむことのないように予防法の確立も必要とされているように思います。
国産の水痘ワクチンは帯状疱疹予防の適応を有していないが、帯状疱疹ワクチン(海外;Zostavax)と同等の感染価とされ、帯状疱疹の予防にも有用(「レジデントのための感染症診療マニュアル」)とのこと。現時点(2016.2)では正式な適応は有していないようです。
他、帯状疱疹についての詳細はCDCのサイトをご参照ください
Shingles | Resources and References | Herpes Zoster | CDC