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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

LSSに対するプレガバリンとリマプロストの併用効果は?/NSAIDsとの併用は?

整形外科

Comparative study of the efficacy of limaprost and pregabalin as single agents and in combination for the treatment of lumbar spinal stenosis: a pr... - PubMed - NCBI
Spine J. 2016 Mar 29. pii: S1529-9430(16)00439-3
研究デザイン:prospective, double-blind, double-dummy, randomized controlled trial 非劣性試験
P:LSS(lumbar spinal stenosis 腰部脊柱管狭窄症)
E:リマプロスト単独
C:①プレガバリン単独 ②プレガバリン+リマプロスト併用
O:the baseline-adjusted ODI score at 8 weeks after treatment(セカンダリ、VAS scores for leg painなど)
治療期間:8週間

ODI(Oswestry Disability Index):慢性腰痛患者のADL障害の程度を評価するスコア
①痛みの強さ ②身の回りのこと ③物を持ち上げること ④歩くこと ⑤座ること ⑥立っていること ⑦睡眠 ⑧性生活 ⑨社会生活 ⑩乗り物での移動
の10項目を、
0~5点で評価(重症度が増すほどスコアは高い)
Oswestry Disability Index
日本腰痛学会雑誌 Vol. 15 (2009) No. 1 P 11-16

<結果>
3群すべてにおいて、ODIスコアや下肢痛VASスコアは改善、QOLは向上。
ODIスコア:リマプロスト単独はプレガバリン単独や併用群に対して非劣性を示した
ベースライン調整したODIスコアや下肢痛のVASスコア、QOLなど3群間に差はない


併用療法は、リマプロストorプレガバリン単独と比較して、LSSの症状を改善しない(does not provide additional relief in symptoms)との結論。
ふーむ。そうですか。
リマプロストはとりあえず飲んどけといった感じで幅広く処方されている印象ですが、リマプロスト単独で劇的に改善したという事例は自分の経験上においてはちょっと記憶にないですね。本当にリマプロスト単独が併用療法に劣ってないと言えるのでしょうか。非劣性マージンを見ると、"The non-inferior margin of the ODI was set at δ=10 points"。δ(デルタ)てなんでしょう…?ODIは10項目で0~5点評価とのことなので、フルスコアで50点だと思います。50点満点で10点の差が信頼区間上限の非劣性マージンということでしょうか??
仮にそうだとすると、たとえば群間差は7点(5-9点)だったとしても非劣性は示されたということになります。50点中7点、小さいとはいえ無視できる差といえるか微妙なところです。

アブストのresultに数値の記載がないので、ますますもやもやします。フルテキスト読みたいですね。
しかも、これn数の記載がないんですよね。アブストとはいえn数くらい記載してよっと思いました。

アブストの情報だけでは評価できないって感じです
なら、ブログにとりあげんじゃねーよ!という突っ込みが聞こえてきそうですね。ほんとすみません。


これだけでは消化不良なのでNSAIDsとの併用はどうかという国内の文献
Limaprost alfadex and nonsteroidal anti-inflammatory drugs for sciatica due to lumbar spinal stenosis. - PubMed - NCBI
Eur Spine J. 2013 Apr;22(4):794-801
研究デザイン:multicenter prospective randomized trial(盲検化の記載なし、ITT解析ではない
P:LSS who had radicular-type neurologic intermittent claudication(根性型神経性間欠性跛行) assessed based on a self-reported diagnostic support tool(自己申告診断サポートツール
E/C
 Group A:5μg limaprost three times daily
 Group B:NSAID and gastroprotective agents (independently decided by each doctor) with the recommended standard  pharmacological dose
 Group C:NSAID plus 5 μg limaprost three times daily as well as gastroprotective agents.
O:changes in LBP, 神経根痛radicular pain, 下肢のしびれleg numbness, and cold sensation of foot assessed by numerical rating scale (NRS 数値評価スケール ).
試験期間:6週間
COI:なし

NRS:marking on a line from 0 (no symptom) to 10 (worst possible symptom)

試験前に鎮痛薬analgesics、筋弛緩薬muscle relaxants、抗けいれん薬anticonvulsants、メチルコバラミンmethycobalaminを服用していた場合、2週間以上の中断期間を設定
理学療法や疼痛緩和の注射は研究を通して禁止

使用されたNSAIDs
NSAID use was as follows: 60 mg loxoprofen 3 times daily (n = 25), 8 mg lornoxicam 3 times daily (n = 5), 200 mg etodolac 2 times daily (n = 3), 100 mg celecoxib 2 times daily (n = 7), and 25 mg diclofenac 3 times daily (n = 1).

α0.05、power80%
NRSで2点以上の差を検出するのに必要なサンプルサイズ各群18名


全65名が試験に参加
リマプロスト21名→1名lost to follow-up→20名完遂
NSAIDs21名→1名胃痛で脱落→20名完遂
併用23名→1名口渇、1名lost to follow-up→21名完遂

平均年齢:70歳
女性:6割前後
有症状期間:7~8ヶ月


<結果>
Fig2 安静時
f:id:ph_minimal:20160525225327j:plain


Fig3 運動時
f:id:ph_minimal:20160525230359j:plain


リマプロストも多少は鎮痛効果が得られるのでしょうか。NSAIDsとの併用でより改善しています。
ただ、対照群としてプラセボが設定されていないので、プラセボ効果が除外できていない点を差し引く必要があると思います。

そもそも、リマプロストはLSSのしびれに有効性ありとして適応が通ってますが、しびれのスコアがほとんど改善してないですね…。

リマプロストはLSSにも適応が通っており、よく処方される薬ではありますが、その効果には限界があるように感じます。
添付文書を見てみると、「後天性の腰部脊柱管狭窄症(SLR試験正常で、両側性の間欠跛行を呈する患者)に伴う自覚症状(下肢疼痛、下肢しびれ)および歩行能力の改善が認められ、全般改善度は56%(94/168例)」で、引用文献は社内資料。
これだけではなんともいえないので、有効性が検討されている文献はないのかな?と、LimaprostでPubmed検索したら33件のみhit。少なくてびっくり。パッと見、アジア圏の論文ばかり(欧米では販売されていないのでしょうか?)。
人気商品である割に、エビデンスはあまり豊富ではないようですね。



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