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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

中耳炎の合併症:乳様突起炎

お子様に多い中耳炎ですが、中耳炎の合併症として乳様突起炎があります

 

乳様突起炎

中耳炎の発症から1~3週間程度経過後に発症することが多い

<起因菌>
肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌など

<症状>
耳の後ろの発赤・腫脹、発熱、膿性耳漏。
腫脹により耳介がズレることもある(コウモリのように)。進行すると難聴をきたすこともある。

<治療>
原則入院

保存的治療(鼓膜切開+抗菌薬 原則点滴)にて改善せず悪化するようなら手術療法を検討。発症から経過が短いと保存的治療で治る傾向にあるというデータあり。

抗生剤:ABPC(アンピシリン)、CTRX(セフトリアキソン)など

 

※小児の急性中耳炎の抗生剤の選択(レジデントのための感染症診療マニュアル参照)

<肺炎球菌>
AMPC

インフルエンザ菌
ペニシリナーゼを産生しない→AMPC
ペニシリナーゼ産生→CVA/AMPC、CCL(セファクロル:ケフラール
BLNAR→第3世代以上のセフェム

<モラキセラ>(小児では少なく、成人でみられやすい)
第3世代以上のセフェム

 

小児急性中耳炎ガイドラインでは

初期治療はAMPC
→改善がなければ増量、もしくはCVA/AMPC、CDTR-PI(セフジトレン)などを考慮

重症例や非改善例ではTBPM-PI(テビペネム)、TFLX(トフスロキサシン)も選択肢としてあげられています

 

 中耳炎は必ずしも細菌性というわけではなく、ウイルス性(RSウイルス、インフルエンザウイルスなど)の中耳炎もあります。

 広域スペクトルの抗菌薬を使いすぎると耐性菌の増加が懸念されますが、ペニシリン系より、第3世代のセフェムや、ニューキノロン、ペネム系などが初期治療として処方されるケースが多いような気もします。ガイドラインにおいても軽症~中等症例ではまずAMPCを試してみて、経過を見ながら次のステップへ移ることが推奨されています。軽症では抗生剤非投与での経過観察3日間にて改善するケースも想定されており、抗生剤が必須というわけではないようです。重症度を考慮した上での治療計画が重要です。

 

小児の中耳炎に抗生剤は有効か、文献を調べてみました。  

Antibiotics for acute otitis media in children. - PubMed - NCBI

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jun

中耳炎に対する抗生剤vsプラセボ 13のRCT(3401名の小児)のメタ解析

抗生剤投与24時間で痛みは減少する?
→RR0.89(95%CI 0.78 to 1.01)

痛みの残留は?
2~3日後→RR 0.70(95% CI 0.57 to 0.86; NNTB 20)
4~7日後→RR 0.76(95% CI 0.63 to 0.91; NNTB 16)
10~12日後→RR 0.33(95% CI 0.17 to 0.66; NNTB 7)

鼓膜の動きの検査(tympanometry)の異常のある子供の数は?
2~4週間後→RR 0.82(95% CI 0.74 to 0.90; NNTB 11)
6~8週間後→RR 0.88(95% CI 0.78 to 1.00; NNTB 16)
3ヵ月後→RR 0.97(95% CI 0.76 to 1.24)

鼓膜穿孔は?
→RR 0.37(95% CI 0.18 to 0.76; NNTB 33)

反対側の耳の中耳炎発症は?
→RR 0.49(95% CI 0.25 to 0.95; NNTB 11)

治療3ヵ月後(3ヶ月以降?)の急性中耳炎の再発は?
→RR 0.93(95% CI 0.78 to 1.10)

重篤な合併症は?
→群間差なし

抗生剤の副作用は?
嘔吐、下痢、発疹など→ RR 1.38(95% CI 1.19 to 1.59; NNTH 14)

個々の患者のデータの解析では、耳漏のある中耳炎や2歳未満の小児で有益と判明

 

 このコクランレビューをどう解釈するか難しいところです。意外と痛みを抑える効果があるかもな、という印象です。10~12日後の痛みの度合いの差が顕著なので、抗生剤非投与では炎症が長引くということなのかもしれません。

 どのような抗生剤が使われたのか知りたいところですが、フルテキスト閲覧できませんでした。海外のデータなので、抗生剤の投与量も日本より多い可能性もあり、副作用の発症率は一概に鵜呑みにはできないかもしれませんが無視できるデータではありません。重篤な合併症はまさかの有意差無しです。乳様突起炎のリスクは抗生剤で減らせないのかもしれません。

 この文献だけで評価はできませんが、耳痛が強く、耳漏も顕著で、啼泣がひどいといったお子様(特に2歳未満)には抗生剤の投与を検討すると良いのではないでしょうか。

 

 中耳炎と抗生剤の話に脱線しましたが、乳様突起炎に話を戻します。急性中耳炎の合併症である乳様突起炎はコモンな疾患ではありませんが、中耳炎発症、数日~数週間経過後、耳の後ろが赤くなって腫れているといった所見が見られたら、受診することをおすすめします。