pharmacist's record

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呼吸音の聴診

 薬剤師による医療行為はどの程度まで適法とされるのか詳しく知らないのですが、薬局の在宅医療への参入が進み、薬科大ではフィジカルアセスメントの講義も行われる時代になったようです。
 在宅訪問を行っている薬剤師さんは聴診器など持参して、患者さんのバイタルをとったりしているのでしょうか。中途半端な知識で介入するなという医師からの厳しい意見もあることでしょう。

 どこまで薬剤師が介入するかという議論はあるかと思いますが、薬剤師もバイタルサインといった知識も必要とされるのは間違いないと思います。そもそも基礎知識がなければコメディカルと話もできません。薬剤師が在宅医療に足を踏み出すにあたってSpO2って何?crackleって何?では話になりません。

 というわけで、今回は呼吸音についてとりあげてみたいと思います。


聴診器
オーソドックスなタイプは裏表に膜型とベル型がついている。
膜型:広く平らな面が膜型。高音域を聴く。圧着させて聴診する。
ベル型:少しくぼんでいる面がベル型。心音・心雑音など低音域を聴く。強く圧着せず軽く押し当てる

呼吸音の聴診
主に膜型を使用。圧痕がつくくらい強く密着させる。
肺尖部~下肺野まで左右対称に聴診。
音を出して呼吸をすると肺の音が聴こえなくなるので、口を大きく開いて声を出さずに口呼吸。

<呼吸音>
空気が気道を通過する音。

呼吸音 どんな音? どこで聴取?
気管支呼吸音 粗い高音。吸気と呼気の長さ=1:2 吸気と呼気の間に音が停止 喉頭部(気管)
気管支肺胞呼吸音 気管支呼吸音と肺胞呼吸音の中間の音。吸気と呼気の長さ=1:1 気管分岐部付近
肺胞呼吸音 木の葉がそよぐような音「サーサー」吸気と呼気の長さ=2.5:1 吸気と呼気の間も連続して聴こえる 全肺野(前胸部、背部)で聴取

→肺野の下の方(本来、肺胞呼吸音が聴こえる部位)で気管支呼吸音が聴こえたら肺炎や強い肺線維症を考える(炎症部位は音の伝導が良くなる)。

呼吸音の異常 考えられる疾患
減弱・消失 伝達異常(気胸、胸水、肺水腫、肥満)、COPD、腫瘍、異物、無気肺
増強 気管支炎、間質性肺炎
呼気延長 気管支喘息COPD
左右差 気胸、胸水貯留


<副雑音>
通常聴取できない異常な呼吸音。肺内から生じる異常音を「ラ音」と呼ぶ

ラ音 どんな音? どんな状態? 代表的な疾患
高音性連続性ラ音wheeze(ウイーズ) 笛声音「ヒューヒュー、ピーピー」呼気時に聴こえやすい 細い気管支の狭窄。 気管支喘息※1、肺炎・気管支炎※2
低音性連続性ラ音rhonchi(複数形:ロンカイ)、rhonchus(ロンカス) いびき音「グーグー、ブーブー」 太い気管支が狭窄している ①痰の貯留(気管支喘息、気管支拡張症、肺水腫、肺炎など)や②異物、腫瘍などによる気道狭窄。①の場合は咳払いで痰が移動し、音が移動・消失することあり
捻髪音(ねんぱつおん)fine crackle(ファイン・クラックル) 高くて細かい断続音「パチパチ、パリパリ」咳払いをしても消失しない 閉塞していた細い気管支が開放。吸気終末に聴こえる(特に下肺) 肺線維症、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、マイコプラズマ肺炎※3、クラミジア肺炎
水泡音coarse crackle(コース・クラックル) 荒い断続音、液体の中を空気が行き来する音「ブルブル、ゴロゴロ」吸気・呼気ともに聴取 太い気管支に液体が貯留 細菌性肺炎、肺水腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、慢性気管支炎

※1 肺野全体で聴こえる。一般に呼気時に聴取されるが、重症喘息では吸気時にも聴取。さらに重度の気管支狭窄を起こすとwheezeが聴こえないことがある。
※2 乳幼児は気管支径が細いので肺炎や気管支炎などの炎症性浮腫でwheezeが聞こえることもある。
※3 マイコプラズマ肺炎は肺炎球菌などの細菌性肺炎と比べると聴取しにくい。

 まとめるとこのような感じになりますが、COPDでwheezeが聴こえることもありますし、必ずしも上記の表にあげた疾患に特異的とは限りません。雑音が吸気に強いか呼気に強いか、咳払いにより変化するか、どの部位で聴取されるかなどさまざまな特徴を見分けて、さらに身体所見などを踏まえて診断を突き詰めていくことになります。
 自分は聴診器を首にかけたことすら記憶にありませんが(大学時代に使ったかも…?)、さまざまな副雑音が意図する病態は把握しておく必要があると思います。


 ただ、やはり実際の音を聴かないと勉強にならないですよね。ヒューヒュー(※1)とかブーブー(※2)とかパリパリ(※3)と言われても…。

※1 教室で男子と女子がいちゃついてるのか?(←ひやかし方が古い…)
※2 お子様が車のおもちゃで遊んでいるのか?
※3 味付け海苔でも食べているのか?(←自分の大好物です)

音声で学ぶとなると現場で学ぶしかないのかなという気もしますが、CD付の書籍も売られているようですね。

CDっていう媒体はちょっと古いかもですが…。

CDを再生する機器がそもそもウチにないわ!ていう方には、

スマホで聴けるQRコードがついている本もあるみたいです。

いつか必要になったらこういう音声つきのツールで学ぶのが良いかなぁと思っております。


 さて、薬剤師もいつか聴診器を首からかけて在宅施設訪問する未来がやってくるのでしょうか(すでにそういう薬剤師もいらっしゃるかもしれませんが)。

 もし自分がお薬のお届けで聴診器をもっていくとしたら…。どんな聴診器を用意すればいいんでしょうね。無知な自分でも耳にしたことのあるのはリットマン!聴診器の有名ブランドですよね。お高いですけど…。

ピンク色の聴診器なんてあるんですね。
よし、ピンク色の聴診器にしますか!
パールピンクの聴診器の男性薬剤師がやってきたら、目立ちますよね!
"いろんな意味"で…。