pharmacist's record

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非喘息性急性下気道感染症に対する経口ステロイドvsプラセボ(JAMA2017)

JAMA2017,8より
昨日メール飛んできた発表ほやほやの経口プレドニゾロンの論文ですッ

Effect of Oral Prednisolone on Symptom Duration and Severity in Nonasthmatic Adults With Acute Lower Respiratory Tract Infection: A Randomized Clin... - PubMed - NCBI
JAMA. 2017 Aug 22;318(8):721-730.

研究デザイン:Multicenter, placebo-controlled, randomized trial

P:"急性の咳","抗菌薬を必要としない、少なくとも1つ以上の下気道感染症状","慢性肺疾患の既往がない","過去5年間に喘息治療薬の使用なし"
401 adults with acute cough and at least 1 lower respiratory tract symptom not requiring immediate antibiotic treatment and with no history of chronic pulmonary disease or use of asthma medication in the past 5 years
E:40-mg prednisolone (n = 199) 分1
C:placebo (n = 202) 分1
O:中等度の咳の持続期間と2~4日目の症状の重症度
治療期間:5 days.
資金提供:National Institute for Health Research (NIHR) (UK).

プライマリアウトカムは2つ
資金提供は製薬メーカーではない

少なくとも1つ以上の下気道感染症状ってなんだろう?ってことでISRCTN57309858.をチェック
Phlegm (sputum)
Chest pain
Shortness of breath
Wheeze
このどれかってことでしょうね

アブストのアウトカムに臨床的に重要な差も記載されているのがわかりやすくていいですね(詳細は原著を参照)

患者除外基準は、
肺がんや慢性肺疾患(COPDなど)
気管支喘息(5年以内に治療あり)
など

ベースラインの患者背景
mean age, 47 [SD, 16.0] years; 63% women; 17% smokers; 77% phlegm; 70% shortness of breath; 47% wheezing; 46% chest pain; 42% abnormal peak flow),


<結果>
Median cough duration was 5 days (interquartile range [IQR], 3-8 days) in the prednisolone group and 5 days (IQR, 3-10 days) in the placebo group (adjusted hazard ratio, 1.11; 95% CI, 0.89-1.39; P = .36 at an α = .05).
Mean symptom severity was 1.99 points in the prednisolone group and 2.16 points in the placebo group (adjusted difference, −0.20; 95% CI, −0.40 to 0.00; P = .05 at an α = .001).


有害事象に差はみられず、重篤な有害事象の発生はないってことですが、PSL40mg/日で5日間…、それなりになにか影響ありそうな気もしてしまいますが、、、。n=400近いですが、有害事象を検討するのには不十分だったりするんですかね。有害事象の詳細が見てみたいところです。

セカンダリとして抗菌薬の使用量が検討されています
抗菌薬を必要としない患者群といえど、必要に応じて抗菌薬投与された模様。これもプラセボと有意差なし。

このあたりの結果の詳細を読んでみたいところですね。


wheezeや胸痛が約5割に認められている患者群に抗菌薬無しで(投与許可されてるみたいですが)、ステロイドを入れるという感覚がいまいち自分にはピンと来ないのですね。
で、その抗菌薬を必要としないっていう判断の基準はなんなのかってところ、そこが一番興味がわきました。

これについてはISRCTN57309858.を見ましょう。
NICEガイドラインにそった記述があります。
抗菌薬を考慮するのはどんなとき?

ちょこっと抜き取ると、「頻呼吸20回以上、片側性の胸部徴候、SpO2<94%」などという記述…。あとは基礎疾患とか…
参考になるので是非ISRCTN57309858を読んでチェックしてみてください。
NICEのガイドラインというのもちょっと見てみたくなってきましたね


さて、率直な感想としては、自分がこの患者組み入れ基準に適するようなLRTIを発症したとして、PSLがっつり飲みたいか?と言われれば、別に要らないっす!という感じでしょうか。

咽頭炎に対する経口ステロイドのほうがもうちょっとマシな結果だったような(似たようなもん?)
咽頭炎に関しては、地域医療ジャーナルに書いたのでそちらをご参照ください
cmj.publishers.fm
経口ステロイド短期使用の有害事象のコホート研究なども取り上げています。

最近、この手の研究結果がチラホラと…。咽頭炎もJAMAでしたね。
咽頭炎、LRTIと続きましたが他にもあるのでしょうか!
正直なところ、外来で管理できるレベルの感染症の患者さんにステロイドって必要なんですかね。
有害事象のほうが怖そうな印象ですが…。

くわしいことは知りませんが、現時点ではあまり経口PSLをすすめたい気持ちにはならないですね。
もう少し有害事象について詳しい情報が欲しい。地域医療ジャーナルでとりあげたBMJ2017の文献以外にも探してみよっかなという気持ちがフツフツと沸いてきましたが、眠気も湯水のようにフツフツと沸き起こってきて意識が朦朧としてきたので今日はこのへんでおひらき。