pharmacist's record

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受動喫煙と肥満/喘息の重症度

Asthma-associated comorbidities in children with and without secondhand smoke exposure. - PubMed - NCBI
Ann Allergy Asthma Immunol. 2015 Sep;115(3):205-10
背景:副流煙の暴露(受動喫煙)は喘息のトリガーとして知られているが、喘息の重症度と併存疾患について詳しく調べられていない。

研究デザイン:ケースコントロールスタディ
対象:Pediatric Asthma Management Programに登録された5~18歳の小児

アウトカム:肺機能検査(スパイロメトリー、メサコリン負荷、呼気一酸化窒素)、BMI測定、インフルエンザワクチン接種率、経口ステロイド、救急受診、入院を評価

<結果>
BMIパーセンタイル75%以上:OR1.64(95%CI 1.22-2.2)
メサコリン負荷試験:OR0.49(95%CI 0.36-0.68)
呼気一酸化窒素:OR0.6(95%CI 0.37-0.97)
1秒率:受動喫煙ありのほうが数値が低い(P<0.05)

<結論>
副流煙の暴露がある喘息患児は、肥満増加、重度の喘息と関連あり。


細かい記載はないですが、小児が喫煙の暴露を受けるということは、ご家族(親)が喫煙者いうことになると思います。小児の受動喫煙が肥満と関連があるとのことですが、喫煙の有無と食生活はあるかもしれないと思いました。偏見かもしれませんが、禁煙派のほうが健康志向の食事を心がけているような気がします。
アブストラクトに交絡因子の調整についての記載はなし)


※メサコリン負荷試験
メサコリンを吸入して、FEV1がベースラインより20%以上低下するかどうかで気道過敏性を評価。喘息の重症度と相関する。

※呼気一酸化窒素(NO)濃度測定
気道に炎症がおきると一酸化窒素合成酵素が増え、呼気中の一酸化窒素が増える。これを測定することで気道の炎症状態を評価できる(好酸球炎症を反映)。呼気NOが高い場合、吸入ステロイド反応性の指標となるという説あり。
小児における呼気NOの基準値は、小学生(中央値10ppb)<中高生(中央値14ppb)、女性<男性
ダニの感作やアレルギー性疾患でも上昇。
非アレルギー<ダニアレルギー<アレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎<未治療のぜん息
(呼気NO測定ハンドブック参照)

国内の報告における喘息診断の呼気NOカットオフ値
非喫煙者:30ppb 感度78.1%、特異度73.5%
喫煙者:40ppb 感度67.8%、特異度70.6%
喫煙自体は喘息の炎症を悪化させNO増加の要素を持つが、健常者においては喫煙で呼気NOは低下。喘息の喫煙者は相関がはっきりしなくなるとの報告あり。喫煙者のほうが診断精度が下がる傾向になる。
受動喫煙者では煙が刺激となり、喘息が悪化し呼気NOが増加すると言われている。
(「呼気一酸化窒素濃度測定の気管支喘息のカットオフ値と喫煙の影響」)

Exhaled nitric oxide cutoff values for asthma diagnosis according to rhinitis and smoking status in Japanese subjects. - PubMed - NCBI
Allergol Int. 2011 Sep;60(3):331-7
ステロイド未使用喘息患者142名、健常者224名の呼気NOを測定
健常者より喘息患者のほうが呼気NOが有意に高い。
呼気NO;22ppbをカットオフ値として、感度90.8%、特異度83.9%

An official ATS clinical practice guideline: interpretation of exhaled nitric oxide levels (FENO) for clinical applications. - PubMed - NCBI
Am J Respir Crit Care Med. 2011 Sep 1;184(5):602-15
Recommendations
・呼気NO25ppb未満(小児20ppb未満)では、コルチコステロイドの反応性が低い可能性がある
・呼気NO50ppb以上(小児35ppb以上)では、好酸球性の炎症を示し、症状のある患者ではコルチコステロイドの反応性が高い


呼気NO検査は気道の好酸球性炎症を調べる非侵襲的な検査ということで簡便ではありますが、喫煙による数値の変動、他疾患での上昇などもありデータの解釈は慎重に行ったほうが良さそうです。



続いて、小児の受動喫煙に関するメタアナリシス
Effects of secondhand smoke exposure on asthma morbidity and health care utilization in children: a systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI
Ann Allergy Asthma Immunol. 2015 Nov;115(5):396-401.e2
子供の受動喫煙と喘息の重症度(入院、ER受診、喘息症状、喘鳴、肺機能検査)についてのメタアナリシス
アブストラクトにメタアナリシスの方法について記載がなく、バイアスリスクを評価できない)
<結果>
25試験が選定基準を満たした
受動喫煙ありvsなし

オッズ比(95%CI)
喘息入院 OR1.85(1.20 to 2.86)
ER受診/緊急の受診 OR1.66(1.02 to 2.69)
喘鳴 OR1.32(1.24 to 1.41)
1秒率(FEV1/FVC) OR -3.34(-5.35 to -1.33)


喘息入院リスクが高くなっています。
副流煙の暴露から喘息患児を守らなくてはいけないですね。


こちらはNEJMよりスコットランドの疫学研究。法律でタバコを禁止することで小児喘息の入院率はどうなったでしょう?
Smoke-free legislation and hospitalizations for childhood asthma. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2010 Sep 16;363(12):1139-45
公共の場での喫煙を禁ずる法律による、小児(18歳未満)の喘息入院率への影響を調査

調整:年齢層、性別、社会経済的地位、地域(都市部と農村)、月、年

<結果>
禁煙法実施前は、喘息入院は年間5.2%(95%CI 3.9-6.6)の割合で増加していたが、
実施後、18.2%減少(95%CI 14.7-21.8)
年齢層、性別、地域、社会経済的地位などの間に有意な相関はなかった。

<結論>
スコットランドの2006年の禁煙法が、喫煙の職業暴露のない小児においても、呼吸器疾患の減少と関連していた。


禁煙法実地前後で比較しているので、必ずしも法律実施だけが喘息入院の減少につながっているかどうかははっきりせず、過大評価となっている可能性もあるかもしれませんが、少なからず影響してると言えそうです。

ご家族が家の中でタバコの煙に配慮していても、公共の場が喫煙フリーだと知らず知らずのうちに副流煙に暴露、入院リスク増加ということでしょうか。もしかしたらthirdhand smoke(三次喫煙)の影響もあるのかもしれません。
(secondhand smoke;二次喫煙。受動喫煙を指す。thirdhand smoke;タバコを消したあとの残留物の吸引。室内や洋服に付着したタバコの煙の暴露も含む)
禁煙の場所が増えてきて、過度な禁煙/嫌煙はやりすぎでは?と思っていましたが、このような疫学データを見ると、ある程度の制限は必要かもしれません。

禁煙に成功した自分としては、吸っててもメリットなんてないんだからみんな禁煙すればいいのにと思う一方で、たまに吸いたくなったりして…。なぜかタバコを吸う夢をたびたび見るんですが、潜在意識の中ではまだ吸いたいのかもしれません…笑。