関節リウマチRAの治療で用いられるメトトレキサート(MTX)の副作用防止として葉酸を投与することは有名ですが、どんな副作用をどの程度防止するでしょうか?
コクランレビューがでています。全文フリーです。
Folic acid and folinic acid for reducing side effects in patients receiving methotrexate for rheumatoid arthritis. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 May 31;5:CD000951.
背景:MTXはRA治療のファーストラインで用いられる。薬理作用は葉酸代謝の拮抗であり、多くの患者が粘膜・胃腸・肝臓・血液の副作用を経験する。葉酸の補充はこれらの副作用を軽減することができる。
研究デザイン:DB-RCTのメタアナリシス
P:18歳以上のRA患者
E:MTX(≦25mg/week)、葉酸orフォリン酸(≦7mg/week)
C:MTX(≦25mg/week)、プラセボ
O:消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛abdominal pain)、口腔潰瘍(口内炎Stomatitis)、肝臓毒性(トランスアミナーゼ上昇)、血液障害(貧血、血球減少)、MTX中断
<結果>
outcome | 被験者数 | プラセボ | 葉酸orフォリン酸 | 相対効果 | 絶対リスク | 相対リスク | NNT |
---|---|---|---|---|---|---|---|
胃腸症状(吐き気、嘔吐、腹痛) | 644(6RCT) | 346/1000 | 256/1000 | RR0.74(0.59-0.92) | -9% | -26% | NNT11 |
口内炎、口内の痛み | 575(4RCT) | 223/1000 | 161/1000 | RR0.72(0.49-1.06) | -6.2% | -27.8% | 有意差無し |
肝臓毒性(肝数値上昇) | 551(4RCT) | 208/1000 | 48/1000 | RR0.23 | -16% | -76.9% | NNT6 |
血液障害(好中球減少など) | 443(2RCT) | <10/1000000 | - | RR1.55(0.4-5.91) | - | - | - |
脱落、服用中断 | 640(6RCT) | 250/1000 | 98/1000 | RR0.39(0.28-0.53) | -15.2% | -60.8% | NNT7 |
腫脹関節(swollen joints)の数 | 142(4RCT) | 18.24/患者1人 | 18.47/患者1人 | - | +4.82%(-27to36.6) | +26.4%(-148to201) | 有意差無し |
圧痛関節(tender joints)の数 | 122(3RCT) | 15.23/患者1人 | 16.05/患者1人 | - | +4.55%(-13.7to22.8) | +29.88%(-90to149) | 有意差無し |
血液障害については極めてまれな有害事象であり、パワー不足であったとされています。
葉酸補充による有害事象の減少が一目瞭然ですが、リウマチへの効果そのものが減少したら元も子もないので、関節の評価もしています。微増傾向ではありますが、統計的には有意差がないという結果。信頼区間の幅がすごいですね笑。
国内のガイドライン(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版)においては、
・MTX 8mg/週以上投与例、副作用リスクが高い場合に葉酸投与が推奨
・葉酸5mg/週以内、MTX最終投与後24~48時間後に投与
・通常はフォリアミン®、重篤な副作用発現時はロイコボリン®を使用
となっています。
ガイドライン上の推奨法を知ることも重要ですが、どの程度効果がみられるのか、定量的に把握しておくことも大事です。
肝臓毒性のリスク減少の度合いには驚きました。激減してますね。
服用中断のNNTも7ということで、脱落を減らす効果もすごいです。
日本の上限は16mg/週ですが、コクランレビューにおけるMTXの投与量が≦25mg/週ということで、国内よりも投与量が多く設定されていると考えられますので、副作用リスクそのものが高いのではないかという点は差し引いて考える必要はあるかもしれません。
添付文書に記載されている再審査の報告では、肝機能障害7.2%、口内炎2.2%、吐き気1.1%(葉酸が併用されている可能性もあるので何とも言えませんが)。