緩和ケアというと、もうがんの治療は手の施しようがなく、あとは鎮痛薬を使って、余生をなるべく穏やかに過ごすだけ、悪い言い方をすれば死を待つのみというイメージがあると思います。
ちょっと古いのですが、2010年8月にそのイメージを覆す論文がNEJMに掲載されています。
Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell l... - PubMed - NCBI
論文の内容をまとめると、
P:転移性非小細胞肺癌患者
E:早期緩和ケアと標準治療
C:標準治療
O:12週目におけるQOLの変化(FACT-Lスコアで評価)
盲検化はされていないランダム化比較試験です。
結果はどうだったかというと、
FACT-Lスコア(0~136点)は緩和ケア群で平均98.0点、標準治療群で91.5点と、緩和ケア群で有意に高かったという結果でした(p=0.03)
生存期間中央値は緩和ケア群で11.6カ月、標準治療群で8.9カ月と、緩和ケアを行った方が生存期間が長い傾向にあったという結果でした。抑うつ症状も、緩和ケア群で有意に低くなっています。
終末期の積極的な治療は、早期緩和ケア群(33%)、標準治療群(54%)ということで、終末期の積極的な治療が逆に予後を悪化させた可能性もあるかもしれません。
生存期間はプライマリアウトカムではないので、早期緩和ケアが寿命を延ばしたと結論づけるのは早計なのかもしれませんが、緩和ケアによるQOL改善が生命予後をも改善させたのではないかと思わせる結果です。
少しでも多くの患者さんがQOL改善のため適切な医療を受けられるよう、緩和ケアの普及活動が行われていますので紹介させていただきます。
オレンジバルーンプロジェクトについて|緩和ケア.net(医療関係者向け)
緩和ケアは、緩和ケア病棟だけでなく、外来や在宅でも可能となっています。がんによる身体的・精神的苦痛を和らげることは患者さんの予後に影響を及ぼすことが示唆されていますので、医療用麻薬は恐いといった誤解を解き、適切な緩和ケアを受けられるよう、このような啓蒙活動が大事だと思います。