pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

音楽の話をしよう The xx @ 幕張メッセ

ライブに行ってきました。

The xxの単独公演がなんと祝前日の日曜日に開催されると知って、行くしかない!と思ってチケット即購入。
いやあ、オーガナイザーの方々、わかってらっしゃる。平日開催だと厳しいですが、このスケジュールなら行けます!

この英国のバンドThe xxはスリーピースで、ギター、ベース、DJという構成。
DJのジェイミーはJamie XXという名義でRemixなどを発表してて、自分もDJ mixを録るときにJamieの曲を使ったりします。
個人的にはフジロックにThe xxとして来てもらって、深夜のレッドマーキーでJamie XXのDJセットが聴きたい!
そういえば、去年のフジにもThe xx来たんですよね。金曜だったので自分は行ってないですが、野外でのThe xxはさぞ良かったんでしょうね~。

さて、初めてのThe xxだったんですが、思った以上に良かったですね。
ふつうに涙腺決壊してました。

ライティングをうまくつかって、ステージの両サイドの壁に、ベースのオリヴァーとギターのロミーの姿がシルエットとして浮かび上がる演出がかっこよかった!

The xxがどんな音楽をつくっているかについては、言葉での説明なんて意味がないですから公式のPVを。

youtu.be

いいですよねぇ。
ほら、ハンカチで涙を拭いて…。
え?泣かない?マジで…?
おかしいなぁ…(ブツブツ)。


この動画、視聴回数は2千万回くらい。
音楽業界が金銭的に厳しくなっていて、良い曲をつくってくれる人たちにお金がたくさん流れていかないのだとしたらそれは悲しいことですが、インターネットさえ繋がっていれば、こういう素晴らしい海外の名曲をフルで試聴できるというのは素晴らしいことです。
もっとちゃんと管理して、再生回数に応じて、アーティストにもっとお金が入るような仕組みが出来上がればいいんですけどね。
(あっ、もちろん、このライブのあと、2017年発表のI See Youをアマゾンでポチりました)

ネットがなかったころなんて音楽情報を仕入れるのも一苦労だったのではないかと。だってテレビが流す音楽は…(以下略)
タワレコとかHMVとか、そういうところに行くしかなかったんでしょうね。ネット普及後も、一昔前はタワレコとか活気があったので、定期的に通って、試聴コーナーでいろんな音楽を聴くのが楽しみでした。今となってはCDショップで試聴といっても…、地方じゃぜんぜん駄目。渋谷とかなら楽しめそうですけど、自宅でYoutubeで探したほうがいいって思っちゃいますね。

まあ、これはこれで寂しい気もしますが、自宅にいてもさまざまな音楽が聴けるのはすごいです。自分が年老いた頃、どんな世の中になっているのかわかりませんが、簡単に音楽に触れられたらいいなと思います。
病室もしくは介護施設で、若い頃に大好きだった曲を、スマホ(その頃にはもっとすごいものに変わっているかもしれませんが)で聴けたらいいなぁなんて思います。
今回の幕張でのThe xxのライブを思い出しながら、"On Hold"を聴いて涙腺決壊して、「ちょっ…どうしました!?○○さん、痛いんですか?苦しいんですか!?」て看護師さんに声をかけられたりして…。

普段、こんな感じでPubmed使ってます(チアプリドとAgitation)

今回は何の変哲もない日常を切り取ってみたいと思います。

ときどき、新人さんが応援に来てくれて、一緒に勤務したりすることがあります。
まあ、自分は教育とかほとんどしないですし、EBMとはこうだ!!!みたいなアツい話をすることは皆無なのですが、まあそれなりに質問されれば答えてます(←当たり前だろ、ふざけるな)

たとえば、

高齢の方にチアプリド処方(FAX処方箋)
この処方意図は?

認知症の薬(メマンチン※)も処方されてたので、「興奮とか不穏とかでてて、鎮静のためじゃないの〜?そういう目的で処方されることあるよー」と適当に答えたのですが、、

ハッ!なんだ、このひどい対応は!
と反省。

※これも認知症の薬のなかでは、鎮静も期待できる薬という印象(メマンチンと不穏/攻撃性 - pharmacist's record)


まあ、こういう対応って実際よく見られる光景ですよね。
「◯◯(病名や症状)に▲▲(薬名)をつかうことあるよー。■■病院でよく処方されてた」
みたいな…。

まあ、それはそれで使用実績という貴重な情報となるのですが、で、有効性はどうなの?ていうところも新人さんに教えるべきでしょう。


反省した私は、襟を正し、背筋を伸ばし、ネクタイをキュッと締めなおし、ネットが繋がっているPCのキーボードをカタカタと叩きました。

チアプリドはあまり文献数は多くないだろと思って、英語表記でネット検索
(厳密にはPubらずに、検索エンジンで"tiapride +pubmed"で検索)

上から3番目がこれ
Clinical management of agitation in the elderly with tiapride. - PubMed - NCBI
Eur Psychiatry. 2001 Jan;16 Suppl 1:42s-47s.
PMID:11520478

そして、Pubmedサーフィン(PubmedのSimilar articlesをめぐること)でこれ
Double blind study of tiapride versus haloperidol and placebo in agitation and aggressiveness in elderly patients with cognitive impairment. - PubMed - NCBI
Psychopharmacology (Berl). 2000 Mar;148(4):361-6.
PMID:10928308

2番目のがいいかなということで、内容チェック
(フルテキストは見れません)

興奮、攻撃性、不穏などの症状のある認知機能障害の高齢者306名を対象に、
チアプリド(100〜300mg)と、ハロペリドール(2〜6mg)、プラセボを投与した3群比較のRCTですね
投与期間は21日

Resultが長ぇ!と一瞬、読む気が失せましたが、そばに新人さんがいるので、「ふむふむ」なんつって、ざっくりと研究デザイン~PECO~Resultを流し見。

チアプリドもハロペリドールも、プラセボより有効で、チアプリドとハロペリドールは差がない
EPSはチアプリドのほうが少ない
(詳細は原著のアブストをご参照ください)


というのをお話ししました。
批判的吟味はしなくていいのか!!!?と怒られそうですが、フルテキスト読めないですし、調剤の合間にそんな時間はありませんので…。
なんとなくチアプリド推しの内容で、COIとかどうなのかわからないけど、一応こういうエビデンスがあるよってことをお伝え。
この試験は用量が多いので、少量投与(実際の処方はもっと少なかった)でどの程度鎮静かけれるかは微妙なところだね。でも過鎮静になってもあれだし、とりあえず少なめに開始ってことで妥当じゃないかなと。


と、まあそんなやりとりをして、ここまでで計5分くらいでしょうか。もっと短かったかも。業務の合間ですから、こんなもんですよね。
(今回はスムーズに文献が見つかったから速かった!!!普段はもっとトロかったりします涙)
エビデンスベースドとか言っちゃったりしますが、実際の現場での活用は添付文書を見るのとそんなに変わらない気がします。

該当論文をきちんと吟味しなくてはというのもありますし、もうちょっと網羅的にRCTを探してネガティブだったRCTもあるのでは?と論文を漁ったほうがベターなのは間違いないですが、日常業務のなかでいかに迅速にその場の疑問の答えになる情報を抜き取るか…となるとこんな感じになるのではないでしょうか。

名郷先生の書籍『ステップアップEBM実践ワークブック』という本に「その場の1分、その日の5分」という言葉がありましたね。
ああ、こういうことなのかなぁと思ったりした今日この頃でした。

…にしても「その場の1分」は高速すぎるでしょ!と思いますが汗

何を信じるか

前回(当ブログの取扱説明書 - pharmacist's record)からの続きになりますが、ここからが本題です。

つい先日、著名な某先生とのやりとりで、「ブログからの情報収集において、発信者のバイアスの可能性を考慮し、自分自身で出典にあたることの重要性」について意気投合したのですが、個人的には、こんな感じで捉えております。

原著論文:料理
論文抄読ブログ:食レポ

メーカーさん主催の講演会も公開食レポみたいなものですね。


実際のデータをどう解釈したか、必ずしも満場一致とは限りません。
賛否が分かれることもしばしばみられます。
そうなると、試食せずに食レポを見るだけの人にとっては、結局どの食レポを信じるか、ということになります。味見をしないでいいのかな…と思ってしまうのですが、味見をしない人はけっこう多いです。


ちょっともやもやする一例を挙げさせていただきます。

メーカーさん主催の勉強会の内容を鵜呑みにする人たちを非難する一方で、論文要約ブログやSNSで偉人クラスのEBMマスター(私のようなひよっこではない)のコメントを見て、原著をろくに読まずにその内容を自分の意見とばかりに主張する…。

これ、やってることはまったく同じですよね。結局他人の言葉を鵜呑みにしているだけですから…。

うーん、残念な一例ですね、これは。

はい、この一例、過去の私です

EBMに触れたばかりの人に多い印象なのですが、気のせいでしょうか…。

食レポを一切見ずに(論文を読んだ人たちの批判的吟味の内容を知らずに)、自分で試食をして本当に同じ結論に至るのかな…?と思ってしまいますよね。
EBMマスターたちが不味い不味いって言ってるから、不味いように感じているだけで、本当はその料理の味なんて何もわかっていないのでは?と。
(これ、ほんと私の後頭部にブーメランとなって突き刺さりまくりです)

もちろん食レポなんて見るなというわけではありません。とても勉強になります。「おぉ!その視点は見落としていたぁ!」と感銘をうけるレポも多々あります。いろんな見方があるので新しい価値観などを与えくれます。自分自身の味覚そのものに影響するくらい考え方が引っくり返ることもあるでしょう。とくに尊敬している人の食レポには感化されやすいことかと思います。

ただ、ここがまた問題だと思っていて…
自分は尊敬している人の主張こそじっくり吟味するようにしています。
憧れの先生が言うことなんだから正しいに決まっている、という感情はバイアスとなりえますので、憧れや尊敬は情報の吟味においては邪魔だと感じます。尊敬している人だからこそ、あれ?と思ったら、自分が納得のいくまで安易に同調してはいけないと。
ちょっと共感できないな、という場合は、自分の解釈がおかしいのかもしれないという気持ちも持ちつつ、だからといって自分の考えを棄却せずに保留にしておくようにしています。納得のいくまでは保留です。
もちろん、意見交換できれば最高でしょうね。論文抄読会というのはいろんな価値観に触れるという意味で勉強になるんだろうな、と思います。


ただ、たまにワークショップとかに行くと、「ムムム、これは…」と思うことも。
ある薬に関する論文がテーマだったんですが、主催する先生方はみんな否定的なんですね。はっきりと口にせずとも、そういう空気感はヒシヒシと伝わってきました。もうそういう方向に持っていこうとしているのがみえみえで、参加者も全員その考え方に傾倒していくのがまるで目に見えるかのようで…。
もちろん主催者側の先生方は原著を読んで吟味して、その薬の評価に対して意義あり!との考えをお持ちなのですから、正しい論文の読み方・評価の仕方を広く伝えようとしてそのような空気感になってしまうのでしょう。そして、そのような試みは大変すばらしいことなのですが、もうちょっとフラットにしないと、意見の押し付けになっちゃうのでは?という気もしてしまい、メーカーさんの講演会と類似した空気(ベクトルは逆ですが)を感じ取ってしまいました。

これを解消するためには、「とにかくどんな意見でもカモン!」という空気をつくらないと駄目ですよね。私の知る限りではJJ CLIPのジャーナルクラブはとてもフラットな意見交換の場となっているように感じています。あの空気感はすごいですね。反対意見もカモン!という空気ができあがっています。

えーと、JJ CLIPから話を戻しまして…。
偏った空気感に晒されることについてでしたね。
そうなると、結局は誰を(何を)信じるか、ということになってしまうのでは?という懸念があります。
環境にも大きく左右されるでしょう。どちらの意見の先生方に囲まれているか、によって考え方が変わってきてしまう可能性もあります。

なかにはメーカーさん主催の講演会などには参加するな、とまでおっしゃる先生方もいらっしゃいますね。
個人的には、これは反対で、ありとあらゆる食レポを見た上で、自分の舌できちんと味見できるようにならないといけないと思っています(大変ですけど)。

メーカーさん主催で発信される情報だってきちんとした研究結果などを基にしていますからね。勉強になると思いますよ。売り上げに繋がるような情報だけをつまんできたり、重視するポイントがズレている可能性はありますが、それこそきちんと教えてあげればいいだけです。

ケンカしてたら、双方から話を聞きますよね。片方だけから話を聞いたら偏ります。バイアスですね。
情報の解釈だって、主張がぶつかってるなら、すべての主張を見ておいたほうが公平に考えることができます。そして吟味する上で必須なのが味見(原著のチェック)だと思っています。

とにかくいろんな考え方に触れさせること、そして疑問点があればきちんとエビデンスベースで議論をする。
これが大事なのではないでしょうか。


というわけで、このブログはちっぽけな食レポのひとつにすぎません。異論もあって当然です。
このブログの中に、調べ物と類似のテーマがあったとしても、きちんと味見をしてから臨床現場に活かしていただけると幸いです。

そのうち機会があれば、知り合いのブロガーさんたちと、ひとつの料理(論文)をテーマに、「いっせーのせ!」で食レポ(論文抄読記事)を一斉アップするってのも面白そうだなと思ってます。ええ、まあやりませんけどね。私以外のみなさんでやってくれないかなぁ。。