pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

過敏性腸症候群の新薬は有効ですか? 地域医療ジャーナル 2017年4月号 vol.3

地域医療ジャーナル4月号が出ました!

cmj.publishers.fm

私は過敏性腸症候群(IBS)についてとりあげました。…が、内容を詰め込みすぎてパンクしてしまい、記事を2つに分けさせていただきました(汗)

IBS関連の薬をいくつかレビューしてみたのですが、いい訓練になりました。私にとっては何度も投げ出したくなるくらい大変だったのですが、執筆のお仕事をしている医師薬剤師の方々はこういったレビューをサラッと書き上げてしまうのでしょうね。
今回のように類似薬をまとめてレビューするのはトレーニングとしてなかなか良いなぁと思った次第ですので、機会があればまたやってみたいと思っています。


それはさておき、今月号のタイトルは、「変質しつづける学びのカタチ 」です。

ふむ。
学び方は変わってきているのでしょうか。

そもそも私は大学を出てから、ひゃっほーいと遊び呆けてしまい、「学び」から完全に脱落した経緯がありますので、学び方そのものを忘れてしまっておりました。

今はどうでしょう。このようなブログを開設し、まさか自分から発信することになるなんて思ってもいませんでしたが、学んでいるという感覚はあまりないですね。
学びたいという気持ちも皆無です。
“研修”と聞くと、うわぁ~嫌だなぁ…と思いますし、“勉強会”と聞くと、うへぇ、はやく帰りたい!って思います。

これは紛れもない本心です。

じゃあ、なんで文献漁ったり外部研修に参加したりするようになったのか…?

それは簡単です。

知りたい

この一言に尽きます。
この欲求が、めんどくさいとか勉強は嫌だとか、そういう負の気持ちを吹っ飛ばす勢いがあるから論文を読み続けているのでしょう(というほどあまり読めてはいませんが汗)。

知りたいという気持ちがなくなったら、いっさい論文を読むのをやめるでしょうね。知的欲求がすべてです。

みなさんはどうでしょう?まったく違いますかね?

もちろん患者さんのために調べ物をすることもありますが、それだけでは自分の行動に説明がつかないですね。患者さんのために、だけではなく、一番深い根っこのところに探究心というか、そういったシンプルな欲求があるんじゃないかなぁと思うのですが…。


まあ、今後も好きなように好きなことを調べて、気が向いたらブログにアップしていこうと思います。

そして時間に余裕があればもっと遊びたいし、もっと眠りたいし、もっと遊びたいですね!
いや~、時間がいくらあっても足りないですね!

不眠症と2型糖尿病の関連

なんか見た!という感じのタイトルですが、20年フォローのコホート研究が発表されているみたいなので取り上げてみます。

Insomnia symptoms as a cause of type 2 diabetes Incidence: a 20 year cohort study. - PubMed - NCBI
BMC Psychiatry. 2017 Mar 16;17(1):94.

不眠症症状の累積暴露と2型糖尿病発生に因果関係があるかどうか評価した研究です。

ベースライン時に糖尿病のない方を対象にした20年フォローのコホート研究。
人数は1000名程度。
アウトカムの糖尿用発生は血液検査、(HbA1c ≥ 6.5% or 48 mmol/mol)と定義

調整した交絡因子は、喫煙、食事、肥満、飲酒、職業などなど。


結果は、OR1.34 (95% CI: 1.06-1.70)

あれ!やっぱ関係あるの!?と思ったら、未調整のオッズでした。

交絡を紐解いていくと、
OR1.08 (95% CI: 0.85-1.37)

結局、不眠症は糖尿病のリスクとなるという説は交絡によるものなんでしょうか…?

そうなると糖尿病を予防するために睡眠薬を、というのはますます許容しがたくなります。


このテーマに関して、他の文献も調べたわけではないのでなんともいえませんが、因果関係があるという観察研究もあるんですかね?もし、因果関係あり、とする観察研究が発表されているのであれば、交絡はどこまで補正されているのでしょうか。


観察研究の結果を見る上では、交絡という問題はつねに頭の片隅にいれておかないといけないですね。
ありとあらゆる交絡がありそうで、因果関係を暴くのは難しいような気がします。

うーん、観察研究の評価って本当に難しいですね。
という今日この頃。

インターネットで収集した医療情報の質は検索エンジンによって異なる?

例のテレビ番組はまた炎上しそうな雰囲気ですが、テレビだけでなくインターネットでの情報収集も危ういですよね。

過去にSNSで「日本語で検索vs英語で検索」てな感じのやりとりをさせていただいた記憶がありますが、個人的には「医療情報を収集するなら英語で検索したほうがよい」と思っています。日本語で検索すると、あやしい広告サイトが上位にヒットするのはみなさん経験されていることかと思います(過去にこのブログで同じようなことを書いたかもしれません)

なんと、インターネットの情報の質について取り上げた論文がありました。国立がんセンターの先生の論文です

Differences in the quality of information on the internet about lung cancer between the United States and Japan. - PubMed - NCBI
J Thorac Oncol. 2009 Jul;4(7):829-33.

使用した検索エンジンは以下の3つ
Google Japan (Google-J), Google United States (Google-U), and Yahoo Japan (Yahoo-J).

検索ワードは、
"lung cancer" in Japanese and English

上位にヒットした50サイトを評価しています

おもしろい比較研究ですね。
たしかに“がん”に関してはさまざまな情報が錯綜している印象があります。

結果はどうでしょう?


米国のgoogleでヒットしたうちの80%が適切な治療法について記述しているのに対して、日本のgoogleとYahooは50%以下で、10%以上が代替療法を宣伝している。
日本のgoogleとyahooは10%以上が広告サイト

だそうです…。

この論文は2009年発表です。
今は2017年。この格差はどう変化したのでしょうね。ひどくなっているのかな…?

ためしに私がよく利用しているYahooで「肺がん」で検索してみると、

がんセンターのサイトも上位にあがってくる一方で、免疫療法の紹介をしている医療機関のサイトなどもあり、ネットで情報を得ようとした人たちは混乱するでしょうね。
広告はあやしいのばかり。

医療情報リテラシーの向上のため、このような広告は一掃するぜ!と方向転換したら、その検索エンジンが好きになっちゃいそうですが、広告で収入を得ているのでしょうし(常識に疎いので見当違いだったらすみません)、悩ましいところなのでしょうか。

昔だったらスマホで海外の医学論文を読めるなんて考えられなかったことだと思いますし、ITの世界は格段に進歩しているのですが、ネットの情報を活用する上では細心の注意を払わないと、おかしな情報を取り込んでしまったりする危険性を孕んでいるのはあいかわらずという感じがしますね。

テレビもあいかわらずですし、週刊誌どころか新聞だってありえない広告が普通に載ってたりしますよね。
この状況はいつまで続くのでしょうか…。

私は地道に一次資料を基に情報を発信していこうと思ってますが、メディアの影響力の凄まじさには圧倒されるばかり。
少しでも正しい情報が世間のみなさんに伝わるように微力ながら発信を続けていこうかなと思っています。
(そんなこと言いながら、非医療従事者にはわかりにくい記述ばかりの医療者向けの内容になってしまっていますが…)