pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

コラーゲンと褥瘡の件についてpubってみた。

うーむ。また炎上しそうですね(番組、見てないのですが)。

普通に気になったのでpubってみました。

「Collagen」「pressure ulcer」の2つのワードを含む文献をサーチしてみました。ヒットが少なかったので、検索項目を広げて気になる文献をチラ見。

が、コラーゲンの局所療法の文献が多いですね。
それは今回はスルーしましょう。

コラーゲンサプリメントのRCTが1つ見つかりました。
残念ながらアブストしか閲覧できません。
Pressure ulcer healing with a concentrated, fortified, collagen protein hydrolysate supplement: a randomized controlled trial. - PubMed - NCBI
Adv Skin Wound Care. 2006 Mar;19(2):92-6.
研究デザイン:Randomized, prospective, controlled, multicenter trial
セッティング:23 long-term-care facilities in 4 states 
P:89 residents with Stage II, III, or IV pressure ulcers
E:standard care plus a concentrated, fortified, collagen protein hydrolysate supplement (n = 56) コラーゲン加水分解
C:standard care plus placebo (n = 33)
[1日3回 8週間]
O:Change in PUSH tool scores in each group at 8 weeks

PUSHについてはこちらを参照
PUSH Tool | The National Pressure Ulcer Advisory Panel - NPUAP
17点満点で点数が高いほうが重症


89名中71名が試験完了

脱落18名のうち、実薬が何名でプラセボで何名かはアブストに記載なし
脱落例も解析に含まれたのかどうかアブストに記載なし


<結果>
After 8 weeks of treatment, residents who received standard care plus the concentrated, fortified, collagen protein hydrolysate supplement had significantly better PUSH tool scores compared with those who received standard care plus placebo (3.55 +/- 4.66 vs 3.22 +/- 4.11, respectively; P < .05).

えーと、これは…。
PUSHスコアが通常ケア&コラーゲンサプリのほうがベターであったと。
点数は、3.55vs3.22
点数が高いほうが重症のはずなので、ベースラインからの変化ということでしょうか。

通常ケア&コラーゲンのほうが3.55点改善。
通常ケア&プラセボは3.22点改善。

ということでしょうか。

17点満点で0.3点の差?
P値は0.05を切ってるそうですが、どうもピンときませんね。

私、解釈まちがっているのでしょうか…。

結語に「治癒率が約2倍」と書いてあったりして…。

これはちょっとフルテキスト読んでみたいところですね。
プラセボつかってるので患者さんは盲検化されてるのでしょうけど、割り当ての隠蔽化もちゃんとされてるんですかね~。

人数もあまり多くないですし、1:1のランダム化ではないです。
患者背景も見てみたいところ。
通常ケアの内容はどんな感じなんでしょうね。



ちなみに、国内でもプラセボ対照のRCTをやってるみたいです。
Jpn Pharmacol Ther 2015 43(9)1323-8
アブストは閲覧できますが、結果がP値しか記載されていないのでどの程度有効であったかはわかりません。
エンドポイントは前述のPUSHとPressure Score Status Tool(PSST) scoreを用いたそうです。



褥瘡の治療/予防のための栄養療法の介入についてのコクランレビュー
Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 12;(6):CD003216.

とくにコラーゲンについては触れられていませんが、全文読んでみると、さきほどとりあげた文献もピックアップされておりました
フォレストプロットものってます(1RCTのみですが)

risk of biasは自分が感じたのとほぼ同じ評価。
そして、このRCTについて重要なことが記載されています。それはまさにさきほど私が?マークを連発したresutの解釈の謎が解ける内容でした。

あえて、その点についてはここでは書きません。
ぜひ、コクラン全文に目を通してみて頂きたいです。


そして、どうやらこのRCTを根拠としてガイドラインで推奨度C1となっているようです(けして高い推奨度ではないですが。C1とは根拠は限られているが行ってもよいという解釈)。
どの程度有効なのか判断するには原著にあたるのが通例かと思いますが、アブストの記載内容がわかりにくいので、コクランもチェックした上でご判断いただいたほうが良いと思います。

抗インフルエンザ薬の併用は有用? 地域医療ジャーナル 2017年3月号 vol.3

地域医療ジャーナル3月号です。

cmj.publishers.fm

インフルエンザについて取り上げました。

この記事が掲載されるころには、インフルエンザなんて下火になっていて、なにをいまさら…という感じになるかと思いきや、まだまだ猛威をふるっております。
はやく終わって欲しいですね…。



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昨日、休憩中に朦朧とした意識の中、ブログを書いていたら、上記の中途半端なところでアップしてました…。

よって、ちょっとだけ書き足し。

今回びっくりしたのは、こちらですね。

cmj.publishers.fm

発熱・咳嗽・喀痰などの症状のある患者さんに水分摂取をすすめてますが…、

水分摂取をすすめることの効果はいかほどなものか?
結果は、上記記事をご参考ください。

まさか…と思いました。

かぜの研究って奥深いですねぇ。
まだまだわからないことばかり。


ところで、風邪をこじらせないよう病院へ!という方も多いでしょう。
二次感染予防のためにも抗菌薬~という声も。
(NNT12255ていう観察研究が有名ですね PMID:23508604)

ただ、この流行期に受診するのって、他の感染症をもらってしまうという二次感染リスクのほうが高いんじゃないかなぁという印象があります。
(風邪薬ひいたあとに今度は胃腸炎になったりとか。)

P:かぜやインフルエンザの流行期に呼吸器感染症症状を呈した健康成人が、
E:受診して抗菌薬や対症療法薬を処方してもらう
C:受診せず自宅療養
O:症状持続期間、別の感染症の発症

こんな研究ってすでにありますかね。
自宅療養が勝ってしまうような気がするのですが。

ただ、自宅療養ではまずいっ!受診したほうがいい!ていう見極めが大事なんでしょうね。
そのラインを徹底的に解明して、風邪や胃腸炎の受診すべきか否かクライテリアみたいなのをつくって、なるべく自宅療養ですませられればみんなハッピーなんじゃないかなーと思います。
風邪や胃腸炎で受診するのって単純にしんどいのでなるべく家で寝ていたいですよね。

もちろん医師の診察を受けて、「大丈夫、ただの風邪だよ」という一言の安心感は絶大なものがあるので、一概には言えないですけど。

風邪や胃腸炎で受診して、薬局にくる患者さんには、対症療法の薬と一緒に安心感を与えたいものですね。

ラメルテオンで血糖コントロールが改善する?

話題にのっかってみました。
タイトルで「そっちかい!」と思われたかもしれませんが、あえてのラメルテオンです。

スボレキサントはマウスの研究しか見つからないですし…
Timed Inhibition of Orexin System by Suvorexant Improved Sleep and Glucose Metabolism in Type 2 Diabetic db/db Mice. - PubMed - NCBI
10~50mg/kgのスボレキサントをマウスに投与したみたいですね。
(ちなみにヒトでの用法用量は、1日1回20mgです。高齢者は15mg。)
睡眠時間を増やすと肝臓での糖代謝が改善とのことです

基礎研究の論文はほとんど読んだことがないのでよくわかりませんが、マウスで結果が得られたから、ヒトでも同じようになるとは限らないと思います。

もし某番組のように、スボレキサントで、血糖コントロールが改善すると主張したいなら、血糖コントロールをアウトカムにして、RCTをやってみればいいのでは?と思います。

まあ、血糖コントロールが改善されたからといって心血管イベントが減るとは限らないという点も忘れてはいけませんが…。


さて、ラメルテオンです。
The Effects of Ramelteon on Glucose Metabolism and Sleep Quality in Type 2 Diabetic Patients With Insomnia: A Pilot Prospective Randomized Controll... - PubMed - NCBI
J Clin Med Res. 2016 Dec;8(12):878-887.

研究デザイン:multicenter, prospective, randomized, and observational pilot study

P:Type 2 diabetic patients with untreated chronic insomnia
→全患者にramelteon 8mgを3ヶ月投与[第1期]
→下記2群にランダム化
E:ラメルテオン継続 3ヶ月
C:ラメルテオン中断 3ヶ月 [第2期]
O:change in glycated hemoglobin (HbA1c) level

盲検化はされていませんね。
プライマリは明確に規定されてます。

<除外基準>
HbA1c ≥ 8.0%
3ヶ月以内にHbA1c0.5%以上の変化
肝不全
うつ病治療中
20歳未満
眠剤の服用歴
シフトワーカー
睡眠時無呼吸症候群の治療


前例のない研究のためサンプルサイズ算出できず。
不眠症の糖尿病患者のほとんどはすでに眠剤を服用しており、目標のサンプルサイズは50名を予定。


42名登録
→第1期完遂が32名
→第2期完遂が31名

<患者背景>
平均年齢68歳
糖尿病歴9.8年
HbA1c:6.7% ± 0.4

<結果>
まず、
第1期(全員ラメルテオン投与 3ヶ月)
HbA1c:6.7%(±0.4)→6.7%(±0.5)
PSQI(0-18):8.1(±4.1)→7.2(±2.8)

第2期
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5087628/table/T3/

継続群
HbA1c:6.8(±0.6)→6.8(±0.5)
PSQI(0-18):7.5(±3.4)→7.2(±4.0)

中止群
HbA1c:6.7(±0.5)→6.9(±0.6)
PSQI(0-18):7.2(±2.3)→6.5(±3.2)


ほとんど差はみられないですね。
中止後のわずかな上昇…。
パッと見の印象はどうでしょう?患者さんの立場になって考えて見ましょう。ラメルテオンを飲みたいって思いますかね…?自分だったらあまり気が進まないかなぁ。
代用のアウトカムのほんのわずかな差ですし…(といってもラメルテオン服用開始後3ヶ月でHbA1cの変化はなく、中止群においてわずかに上昇しただけ)

散歩したり間食を控えたりしたほうがよほど効果的なのではないかという気がします(もちろん食事療法・運動療法は大変なんだぞ!ていうのはよくわかります。自分だったらすぐに怠けてしまうでしょう。大変ですよね。摂生するのは…)

この研究は平均で7%未満ってことで比較的コントロールできている患者さんたちなので、もうちょっとコントロール不良の患者さんも含めたほうが良かったのではないかという印象です。すでに眠剤を服用している人が多かったみたいで、あまり症例数が集まらなかったようですし、その点は残念でしたね。


ちなみにこちらはプラセボを用いたメラトニンのクロスオーバー試験
Efficacy and safety of prolonged-release melatonin in insomnia patients with diabetes: a randomized, double-blind, crossover study. - PubMed - NCBI
Diabetes Metab Syndr Obes. 2011;4:307-13
こちらのほうが血糖コントロール不良の患者層ですね。
うーん、HbA1c改善するのでしょうか…

そもそも私自身が眠くなってきて、頭が回らなくなってきました。もう考えられません。
ああ、そろそろ5時。もう朝になってしまいます!ああ、寝不足により私の糖代謝が崩れてしまう~~!(←そんなことより焼肉ばかり食べるのをやめなさい!と私に対する説教がどこからともなく聞こえてまいりました。もちろん寝不足も良くないですが汗)

さて、どうでしょう。睡眠と血糖値。
おもしろいテーマではありますし、もっと研究を進めてみて欲しいなぁとは思いますが、現段階で、この手の薬を糖尿病患者さんにすすめるような内容を放送するのはちょっと意味がわかりませんね。ラメルテオンなら比較的安全性高いといえるかもしれませんが、スボレキサントはいろいろありますしね。

ph-minimal.hatenablog.com

上記のスボレキサントの過去記事を見ていただければ、不眠症でもないのにわざわざ服用するような薬でないということがわかるのではないかと。
10人に投与すれば1人になんらかの副作用が出るという計算です。
100人に投与すれば1人は異常な夢を見るそうです。まあ、私は薬を飲まなくても仕事にまつわる悪夢をよく見ますが。。。
悪夢を見るのは嫌ですけど、いいかげん寝ることにします。明日は寝坊しないよう目覚まし10個かけます。明日、起きれるかなぁ。。