ph-minimal.hatenablog.com
以前、DOACの相互作用に関するネタを取り上げました。
これについてはなにがなにやらサッパリわけがわからん結果となっていましたが、個人的にちょっと気になっていたベラパミルとの併用について調べた観察研究の論文を循環器科領域に詳しい先生から教えてもらったのでビジアブ化しました。
Association of Oral Anticoagulants and Verapamil or Diltiazem With Adverse Bleeding Events in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation and Normal Kidney Function
JAMA Netw Open. 2020 Apr 1;3(4):e203593. PMID: 32329770
バイアスを減らすため、腎機能正常でDOACの用量をフルドーズ(海外なので日本と用量が違うところもある)で服用した患者のみ選定しています。エドキサバンは調査対象外みたい。
静脈血栓塞栓症(VTE)は対象外で、非弁膜性心房細動(AF)が対象です。
腎機能低下のない患者ということで、非高齢者の割合が過半数。
大出血から軽度の出血までさまざまなアウトカムが載っているのですが、overall bleeding rateのみ抜粋しました。
アピキサバンとリバーロキサバンは出血イベント増加はみられず
ダビガトランが有意に増加という結果
以下、ディスカッションより抜粋
ベラパミル、ジルチアゼムは中等度~強度のP糖タンパク(P-gp)阻害薬(CYP3A4の阻害薬でもある)
FDAによると、ベラパミルはダビガトランと同時併用で143%AUC増加、2時間間隔をあけて併用で18%増加
RE-LY試験では、P-gp 阻害により大出血イベント発生率がやや増加傾向(150 mg 投与では 4.12% vs 2.96%、110 mg 投与では 3.99% vs 2.38%)
ダビガトランのP-gp阻害薬併用時のFDAの推奨は
・腎機能正常→減量推奨なし
・Ccr30~50→75mg×2回
・Ccr30未満→併用は非推奨
欧州では、ベラパミル併用時は、腎機能に関係なく減量推奨
もうちょっと詳しくDOACの違いを調べたいところ。
【ダビガトラン】
・バイアベイラビリティが低い(10%未満)
・排泄:腎80%(代謝はグルクロン酸抱合で、CYPの関与はなし)
・P-gpの基質
・酸性下で吸収/溶解、制酸剤で吸収低下。臨床上は影響ない?(AHAのレビューでは投与量調整不要、consider spacing regiments by 2 h [5])
・各種薬剤との併用におけるAUC変化リスト[2]のFigを見ると、ベラパミルの影響はそれほど激増していないようにも見えるけど…1.7倍くらい?(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7403169/figure/Fig4/)
【リバーロキサバン】
・バイオアベイラビリティよい(80%以上)
・(10mgを超える投与量の場合)空腹時投与だと吸収が落ちる
・腎からの排泄30~40%(腎からの排泄は糸球体ろ過は6%のみ、P-gpとBCRPによる活性分泌が主なメカニズム[2])
・P-gpの基質
・CYP3A4/5, CYP2J2の基質
・各種薬剤との併用におけるAUC変化リスト[2] Fig6 ベラパミル1.5倍くらい?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7403169/figure/Fig6/
【アピキサバン】
・BAは50%くらい
・CYP3A4の基質(20%くらい)
・腎排泄20~30%
・排泄のバランスがよいとの指摘あり[2]
direct secretion into fecesってことで糞便中への排泄(動物実験データより)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=7403169_40262_2020_879_Fig1_HTML.jpg
・各種薬剤との併用におけるAUC変化リスト[2] Fig2 ベラパミルのデータはないけど、ジルチアゼム1.3倍くらい
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7403169/figure/Fig2/
【エドキサバン】(本研究では検証されてないけど、ついでに)
・BA50~60%
・腎排泄50%[2][3](35%?[1]) (ろ過されるだけでなく、P-gpも関与[2])
・CYP3A4の基質(10%未満)
・各種薬剤との併用におけるAUC変化リスト[2] Fig5
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7403169/figure/Fig5/
AUC変化リスト[2]がアツい!!!
で、これをみると、ダビガトランがベラパミル(orジルチアゼム)の影響が大きいけど、ほかも影響を受けているので、ダビだけAUC激増しているわけではない…
しかし、出血イベント有意増加は3剤のうちダビのみ。まあ観察研究なのでいろんな要素がこんがらがってそうな気もしますが。
DOACの薬物動態に関しては引用[2]が勉強になりますが、複雑すぎて頭の中からプスンと空気が抜けるような音がしました。ほんっとに複雑。
引用[5]がAHAのPractical Guideなので、実用的かなぁ。
腎機能ベース、あるいは体重ベースでのフローチャート(Fig1、Fig3)があってアツい。
Table3,4もいいですね。肝機能低下時の対応。Child Pughベースで各薬剤の対応がまとめられてます。
DOAC沼…、ややこしすぎる。
みなさん、どうしてんの?
こりゃ、1日でまとめられるような内容ではないですね。もうお手上げだ。
パパッとピックアップしたのが下記の5文献ですが、もっともっとチェックすべきレビュー文献はたくさんあるのでしょう。DOACムズすぎぃ~!!
疲れたのでもう休みます。。。
[リファレンス](a.k.a あとで詳しく読むリスト)
[1]
直接経口抗凝固薬(DOAC)の特徴と使い分け 日医大医会誌 2018; 14(3)
https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/014030113.pdf
[2]
Drug-Drug Interactions with Direct Oral Anticoagulants
Clin Pharmacokinet. 2020 Aug;59(8):967-980.PMID: 32157630
(Drug-Drug Interactions With Direct Oral Anticoagulants - American College of Cardiology)
[3]
Select Drug-Drug Interactions With Direct Oral Anticoagulants: JACC Review Topic of the Week
J Am Coll Cardiol. 2020 Mar 24;75(11):1341-1350.PMID:32192661
https://www.jacc.org/doi/full/10.1016/j.jacc.2019.12.068?_ga=2.92626333.1052011269.1605688169-1018733787.1605688169&
[4]
Drug-drug interactions with direct oral anticoagulants associated with adverse events in the real world: A systematic review
Thromb Res. 2020 Oct; 194: 240–245.PMC7417902
[5]
Direct Oral Anticoagulant Use: A Practical Guide to Common Clinical Challenges
J Am Heart Assoc. 2020 Jul 7;9(13):e017559.PMID: 32538234.