pharmacist's record

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【サージカルマスク】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防効果は?

Ann intern medから気になる論文が!

この論文の結果(Result)だけが一人歩きしそうだなぁ~と思ったので、取り上げておきます。
結論&感想を先出ししておきますが、このエビデンスによりマスクが無意味だと結論づけるものではないと個人的には思います。ただ、劇的な効果を示せなかったのもまた事実。それはなぜなのか考えてみたいと思います。

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Effectiveness of Adding a Mask Recommendation to Other Public Health Measures to Prevent SARS-CoV-2 Infection in Danish Mask Wearers : A Randomized Controlled Trial
Ann Intern Med. 2020 Nov 18. doi: 10.7326/M20-6817. Epub ahead of print. PMID: 33205991.

場所はデンマーク
ビジアブには載せていませんが、この試験を実施したときのデンマークがどんな感じだったのかというと、
2020年4~5月ごろ、デンマークではマスク着用は推奨されていなくて、病院外でのマスク着用率は5%未満だったとのこと。
推奨されていた公衆衛生対策は、感染者の隔離、ソーシャルディスタンス、頻繁な手指衛生と清掃、受診者数の制限など。

研究の流れと結果はビジアブのとおり
感染率が2%→1%に低下するであろうという見込みは達成されず、有意差なしとなりました。

重要なポイントであろうと思って、アドヒアランスを記載しています。
マスク着用といっても、推奨どおりの着用は半数くらい。


さて…
世の中にはいろんな人がいます
マスクなんてつけるべきではない!という過激派(?)みたいな人たちもいることでしょう。
おそらく、このエビデンスを振りかざして、マスクに効果はない!と声高に主張するんじゃないでしょうか。一般向けのメディアでも、そういう記事がアップされて注目を浴びるかもしれません。

そこで、一足先に医療従事者としてしっかりと見解を述べておきたいと思います。


【私の考察】
では、個人的な見解です(ここから書くのは事実ではなく、単なる私の意見です。事実と意見の違いは明確に)

まず、この当時のデンマークの状況を目で見たわけではないのでなんともいえないのですが、論文に記載されているとおり、当時のデンマークはマスク推奨されておらず、病院外の着用率は5%未満とありました。
介入群の人たちがマスクを着用して外出しても、ほとんどの人たちがマスクをしていないわけです。
周知のとおり、マスクは双方が着用することで効果を発揮するのだと私は認識しています。
この点はちょっと不利だったんじゃないかな~と思いますね。

日本の会食でのクラスター発生の報告(https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/covid19-26.pdf)では、「マスクを着用していても、十分な距離を保てない状況下でマスク着用がない客と会話等密接な関わりをした場合、完全に感染を防ぐことができない可能性がある」と指摘されています(実際に感染例あり)。

この論文の著者も「コミュニティ内でのマスク着用を全員に推奨しても、SARS-CoV-2感染の減少には効果がないと結論付けるべきではない」と考察で述べています。


また、一方では、デンマークの当時の状況はソーシャルディスタンスは実施されていたようです。当時のことをいまいち覚えていないのですが、かなりやばかった時期ですので、ディスタンスは守られていた時期なんじゃないかと。そうなると、マスクが効果を発揮しにくい距離感だった可能性もあります。
カフェやレストランは2020年の5月18日までは閉鎖されていたとのことで、外食をしない時期に実施されたRCTってことですよね。

みんなの気がゆるんで日常が戻ってきて、じわじわと感染が増えてきたころに、このRCTが実施されていたらどうなっていたのかが個人的には気になります。できることなら、クラスターRCTがいいでしょうね。コミュニティ内に介入群と対照群が混在するのではなく、コミュニティごとに分けた方が…。ただ、マスク必須ということが世界的な共通認識として確立しつつあるこの状況でそんなRCTを実施するのは困難な気がします。

マスクの効果が大規模なRCTで実証されなかったのは残念ですが、この結果を見て、マスクをしなくていいという気持ちにはなりませんでしたね。RCTは内的妥当性が高いとされる研究ですが、こういった研究に参加すると、マスク非着用の参加者も手洗いとかソーシャルディスタンスへの意識付けが向上したりというバイアスの可能性もあるかもしれません。
論文のなかで言及されてましたが、マスクをしているから安心って感じで、他がずさんになる可能性も指摘されていました。マスクは数々の感染対策のひとつにすぎないので、さまざまな対策を講じてガードを固めていくしかないのかなぁ~っていう感じですね。

最初はマスクするのが嫌だったんですが、慣れてしまえば別にどうってことないですし(暑い時期はちょっと嫌ですけど)、コロナはただのかぜと違って、ガチでやばいですから、アウトカムの重要度を考えると、やっぱりマスクをしたほうがいいんじゃないかなぁと個人的には思います。

うーん…、どうでしょうか。偏った意見ですかねえ~。
これについてはいろんな意見がでることでしょう。あらゆる意見に耳を傾けることは大事だと思います。

というわけで、長くなってきたのでこのへんで。

今週はなにをトチ狂ったか、月曜日から毎日ビジアブをつくってブログにアップしています。
急にどうしてしまったのだろうか…。謎です…。
別に楽しいことがあったわけでも、急に意欲が沸いてきたわけでもない…。
ただの気まぐれですね。
(講演の予定もなく、原稿がひと段落しているので、ブログを書く余裕があるというだけの話っていう説が濃厚)