pharmacist's record

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ラタノプロスト 1日1回vs1日4回

ラタノプロストの添付文書には「頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと」と記載があります。投与回数の違いによる効果を検討した文献を探してみました。

The effect on intraocular pressure of latanoprost once or four times daily. - PubMed - NCBI
Br J Ophthalmol. 2001 Oct;85(10):1163-6.
ラタノプロストの眼圧(IOP;intraocular pressure)に対する効果を1日1回と1日4回で比較し、1日1回で効果が持続するかどうか検討

研究デザイン:二重盲検ランダム化比較試験(double masked randomised study)
試験期間:52日間

対象:健康なボランティア28名(男性15名、女性13名。年齢中央値28歳(range19-48))
被験者は避妊薬以外の薬の服用やコンタクト着用は不可。
眼圧測定は点眼前の朝8時。3回測定し、中央値を記録。

<介入方法>
days 0–1:0日目治療せず、0日目と1日目の点眼前にベースラインの眼圧を測定。

days 2–14:ラタノプロスト50μg/ml ランダム化した片方の目に1日4回(8am/noon/4pm/8pm)、もう一方の目に1日1回(8pm)点眼。1日1回点眼の目には、8am/noon/4pmはプラセボを点眼。眼圧測定はdays2–5 and day8

days 15–28:ラタノプロスト両目ともに1日1回8pmのみ点眼。眼圧測定はdays 15, 18, and 22.

days 29–49:治療なし。眼圧測定はday 29, 32, 36, and 43

days 50–51:50日目にラタノプロストを1日1回8pmに点眼。両日、眼圧測定。

(30分以上のスケジュールのズレは許可されない)

<結果>
26名が試験完遂(1日4回点眼した方の眼の羞明により2名脱落、治療中断後、羞明は数日以内に改善)

有害事象(table1)
Symptoms and signs of inflammation in 14 of 28 eyes treated with latanoprost four times daily
羞明(photophobia):重度3名、中等度2名、軽度7名
刺激感?(flare):軽度7名
羞明により2名脱落、その他は治療継続したが1週間以内に自然に軽快した


<感想>
眼は2つあるということを利用して、2つの眼をランダム化して介入群と対照群を分けるという方法がおもしろいな!と思いました。

ラタノプロスト1日4回投与は最初の2~3日のみ有意に眼圧が低下しましたが、その後は1日1回とほとんど同じ。
添付文書の「頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと」については確認できませんでした。もっと長期でフォローしたら1日4回のほうが効果が現弱するんですかね。添付文書のこの記載が何を根拠にしているのかわからないのでなんともすっきりしない感じ。
とりあえず頻回投与のほうが眼圧が下がるということはないようです。

脱落理由として、1日4回点眼の眼に羞明が認められています。28名中2名が脱落で、軽度な羞明を含めると12名/28名ですから、かなり高頻度といえるのではないでしょうか。
ラタノプロストの添付文書によると、
承認前の調査402例中、結膜充血71件(17.7%)、眼刺激症状15件(3.73%)、そう痒感14件(3.48%)など
市販後調査3022例中、結膜充血191件(6.32%)、点状表層角膜炎145件(4.80%)、眼瞼色素沈着101件(3.34%)など
羞明については、頻度不明として記載されています。1日1回点眼なら稀でも点眼回数を増やすと起こりやすくなるのかもしれません。

というわけで有効性と安全性の観点からラタノプロストは1日1回点眼で妥当といえるでしょう(1日2回、1日3回は検討されていませんが^^;)