pharmacist's record

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LVFX点眼液は何歳から使える?

「LVFX点眼液は何歳(何ヶ月)から使える?」
同僚からCQ頂きました。

添付文書の嫌いなワード、ベスト3に「○○への安全性未確立」が挙がる自分としては、「小児等への投与」についてはどうも苦手です。

たとえば、
エピナスチン製剤のアレジオン®は、ドライシロップは用法用量の項目に3歳以上と記載されており、乳児は安全性未確立という記載ですが、一方で、エピナスチンの点眼液は新生児~幼児が安全性未確立という表記。
(※H30.8追記 ドライシロップの添付文書ややこしい…。じゃあ2歳はどうなんだっていう…。1歳以上は安全性未確立ではないから保険は通るのか!??筆者の県では保険切られたという話は聞いたことないけど、このあたり県によって違うのかも…。各自ご確認を! ちなみに自分の店舗では処方なし)

3歳以上の幼児は、内服は正式に適応が通っているのに外用の目薬は安全性が確立してないということだそうです。もちろん局所への刺激といった有害事象については不明なのかもしれませんが、内服が可能なのに外用は安全かわからないよといったスタンスに添付文書を投げ捨てたくなります。
市販後調査はどうなっているのかと検索したら、
エピナスチン塩酸塩(アレジオン®)点眼液0.05%使用成績調査中間報告 第2報-副作用・効果・患者満足度 等-:医薬ジャーナル社, Iyaku(Medicine and Drug)Journal Co., Ltd.
中間報告は発表されてますが、全文読めないし…。
せめて発売後の使用実績(とくに乳児~小児)とか、添付文書改訂で載せてよ!と。あるいはオープンアクセスで簡単に検索して読めるようにして欲しい!

えー、取り乱しましたが、LVFX点眼液です。
よく処方される目薬ですよね。
眼科のDrも小さいお子さんに使用しているんじゃないかなと思うのですが、改めて問われるといろいろ調べたくなります。
添付文書を見てみると、「小児等への投与」についての記載がまったく無し。
使用実績が充分でメーカーさんも安全だと評価しているということでしょうか。
でも、RCTはやってないですよねぇ。とりあえず使用実績くらいは調べたいところです。

どうやって調べればいいんだろうなと思いながら(なぜかメーカーさんに電話するというごく普通の流れを失念してました…)、いつものノリでPUBMED開いて検索すると、なんと日本の市販後調査(Post-marketing surveillance)の文献が引っかかりました。
Post-marketing surveillance of levofloxacin 0.5% ophthalmic solution for external ocular infections. - PubMed - NCBI
Drugs R D. 2012 Dec 1;12(4):177-85
背景:LVFX点眼液0.5%は2000年に日本で承認販売となった抗菌点眼剤。
目的:LVFX点眼液0.5%の有効性と安全性の調査
<結果>
感染症(ocular infections)の治療のためLVFX点眼液0.5%の治療を受けた6760名の情報を収集。
6686名中42名(0.63%)に薬物有害反応(ADRs;adverse drug reactions)あり。重篤なADRsは報告なし。
高頻度だったのは、眼瞼炎(blepharitis)、眼の刺激感(eye irritation)、点状角膜炎(punctate keratitis)など。
ADRsは男性(0.36%)より、女性(0.82%)に多かった。年齢による発生率の違いは認められなかった。
応答率は、keratitis(97.4%)、涙嚢炎dacryocystitis(88.3%)

table3に年齢別のADRsのデータあり。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3586049/figure/Tab3/
乳児の使用例は約200例でADRなし

これで安全性が保障されたとは言えないかもしれませんが、参考になるデータですよね。

ちなみにRCTもありましたが、対象年齢は1歳以上でした。
Efficacy and safety of 0.5% levofloxacin ophthalmic solution for the treatment of bacterial conjunctivitis in pediatric patients. - PubMed - NCBI
J AAPOS. 2003 Oct;7(5):317-24.
LVFX点眼0.5%はOFLX点眼0.3%やプラセボより除菌率(microbial eradication rates)が高いという結果。

除菌率は代用のアウトカムかと思います。臨床的意義がいまいちよくわからないですが、そこそこ使用実績はあるようです。

ちなみに海外は?
Akorn - Levofloxacin Ophthalmic Solution
1歳未満には安全性と有効性が確立されていない。
キノロンの経口投与は、未成熟動物への関節症を引き起こすが、LVFX点眼投与により体重を支える関節に影響を与えるというエビデンスはない。とのこと


自分は眼科領域の知識が決定的に不足しているのですが、LVFX点眼液を使わないと治らない乳幼児の眼科疾患ってあるんですかね。
目やにがでるということで抗菌目薬が処方されることも多いかと思いますが、臨床的意義がどれだけあるのかというと自分にはわからないです。機会があれば抗菌目薬のRCTについて調べてみたいと思います。