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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

風邪!!!

呼吸器 感染症 抗菌薬

風邪にかかったことがないという人はいるでしょうか?もちろんいませんね。
風邪とはおそらくすべての病気の中でもっとも有名で身近な疾患だと思います。

その割には、誤解の多い疾患とも言えます。
いまだに風邪の特効薬が抗生剤だと誤解されており、医師が抗生剤は不要だと説明しても患者さんが納得しないという場面も多いのではないでしょうか。

風邪
ウイルスの感染による上気道炎
①鼻汁
咽頭
③咳
この主な上気道の3症状が同程度に起こる。通常7~10日程度で自然軽快(自然軽快しないものは風邪ではないという言い方も出来る)。全身症状として、倦怠感、発熱、頭痛など。


①~③が同程度、そして同時期に起こるとされているが、風邪の一般的な自然経過は、まず咽頭痛、微熱や倦怠感が、ほぼ同時かやや遅れて鼻水・鼻づまり、最後に咳、痰といった流れが多く、病初期では咽頭痛のみというケースも考えられる。
ウイルス(風邪)は小さいのであらゆる部位で増殖・症状を引き起こす(①~③の症状が出現)が、細菌(溶連菌による咽頭炎など)はウイルスより大きいため、さまざまな部位に居座ることができず、ある固定の部位で増殖・症状を引き起こす、とイメージすると理解しやすい。

風邪の診断は原則、除外診断

①鼻汁がメイン→副鼻腔炎アレルギー性鼻炎を考える
咽頭痛がメイン→咽頭炎、扁桃腺炎などを考える(鑑別疾患:急性喉頭蓋炎、伝染性単核球症、急性心筋梗塞、扁桃周囲膿瘍など)
③咳がメイン→気管支炎、肺炎などを考える(鑑別疾患:百日咳、肺塞栓、心不全、肺結核など)
※3症状が同程度に起こり、軽快しかけたところで、二峰性に症状がぶりかえす場合は細菌感染を疑う
抗菌薬の適応となるのは、肺炎、細菌性副鼻腔炎、溶連菌性咽頭炎など。

他の鑑別疾患としては、
・高熱→敗血症(急性腎盂腎炎、急性前立腺炎、急性胆嚢炎など)、インフルエンザ、マラリアなど
・微熱、倦怠感→急性肝炎(ウイルス性、薬剤性)、DKA伝染性単核球症(EBV、CMV、HIV)、慢性疲労症候群膠原病悪性腫瘍甲状腺炎など
・頭痛→髄膜炎

などなど、さまざまな病気が風邪に化けて現れますので、風邪の診断がいかに難しいかがわかると思います。
(★症状別の各論については、別途記事にする予定)

さまざまな鑑別疾患を除外し、風邪と診断がつけば、原則抗生剤の適応はありません。
各種症状を緩和する対症療法が選択されます。


風邪と抗菌薬

Protective effect of antibiotics against serious complications of common respiratory tract infections: retrospective cohort study with the UK Gener... - PubMed - NCBI
BMJ. 2007 Nov
呼吸器感染症の重篤な合併症を抗生剤でどの程度軽減できるかを検討したイギリスの後ろ向きコホート研究
アウトカムは1ヶ月以内の下記の合併症の予防
・上気道炎・肺感染症後→肺炎
咽頭炎→扁桃腺炎
・中耳炎→乳様突起炎

〈結果〉
これらの合併症を予防するのに必要な数 NNTは4000以上

感染症(chest infection)→肺炎の予防
・高齢者(65歳以上)NNT=39
・若年者 NNT=96~119

chest infectionって肺炎とは違うのかな…?と疑問に思って調べてみるとどうやら下気道感染症つまり気管支炎+肺炎を指すようです。
肺炎とは確定してないが気管支炎を起こしてるのは確定的というような状態の高齢者に対しては、肺炎合併を抑えるために抗生剤の投与を考慮する価値はありそうです。

※乳様突起炎についてはこちら↓
中耳炎の合併症:乳様突起炎 - pharmacist's record



Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study. - PubMed - NCBI
Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr
急性呼吸器感染症への抗生剤のリスクとベネフィットについて調べたイギリスのコホート研究
イギリスのプライマリケアデータベースに登録された呼吸器感染症の成人1,531,019名のうち65%で抗生剤投与
プライマリアウトカムは以下の理由による15日以内の入院
・市中肺炎
・重篤な有害事象(過敏症、下痢、腎不全、肝不全不整脈、けいれん発作)

10万人あたりの調整リスク差は、
〈市中肺炎による入院〉
調整リスク差 -8.16 (95%CI -13.24 to -3.08 P = .002) NNT:12255

<有害事象による入院>
抗生剤全般 -1.07 (95%CI -4.52 to 2.38 P = .54)
各種抗生剤の内訳(table4)
βラクタム -1.62 (95%CI −5.19 to 1.96 P = .37)
マクロライド 2.40 (95%CI −3.26 to 8.07 P = .40)
フルオロキノロン 1.06 (95%CI −17.02 to 19.14 P = .91)

有害事象の内訳(table3)
過敏症44、下痢18、肝障害13、腎障害21、不整脈6、けいれん発作23(抗生剤非投与も含む)

有害事象有意差はなく、抗生剤投与で15日以内の肺炎合併入院を減少させるという結果ですが、NNT12255です。
観察研究なので交絡因子もあるかもしれません。抗生剤を投与されなかった患者はそもそも肺炎リスクが低かったんじゃないかなとも思うのですが、そのあたりは調整されているのでしょうか?
なにはともあれNNT12255…。この文献は去年知ったのですが、自分がEBMを重要視するようになったきっかけともいえる驚きの結果でした。


Antibiotics for the common cold and acute purulent rhinitis. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun
〈メタ解析の選択基準〉
7日以内の風邪症状・10日以内の化膿性鼻炎に対する抗生剤とプラセボを比較したRCT

①風邪 6RCT、1047名

アウトカム リスク比RR(95%CI)
治癒までの期間or症状の緩和 RR0.95(0.59-1.51)
有害事象 RR1.8(1.01-3.21)
有害事象(成人) RR2.62(1.32-5.18)
有害事象(小児) RR0.91(0.51-1.63)

②化膿性鼻炎 4RCT、723名

アウトカム リスク比RR(95%CI)
鼻炎の持続 RR0.73(95%CI(0.47-1.13)
有害事象 RR 1.46(95%CI(1.10-1.94)

抗生剤の優位性は示せなかったという結果です。
化膿性鼻炎に対しては統計的有意差はないですが、有効な傾向にはあるようです。


これらの結果から、風邪に対する抗生剤の投与は全例必須とは思えません。
患者さんの全身状態などを考慮し、気管支炎や肺炎など抗生剤の適応となるかの検討が大事だと思います。


風邪の対症療法
<鼻水>
WITHDRAWN: Antihistamines for the common cold. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2009 Oct
ヒスタミン薬は風邪に効果があるか?
成人と子供の風邪に対する抗ヒスタミン薬の効果を検討したRCT(研究デザインや介入方法はさまざま)のメタ解析
アウトカム:風邪の症状緩和(鼻塞、鼻漏、くしゃみ)、罹病期間の短縮、有害事象

ヒスタミン薬単独療法 成人・小児ともに臨床的に有効な結果は得られず
第一世代の抗ヒスタミン薬(鎮静性) 「くしゃみ、鼻漏」に多少だが効果あり、ただし鎮静の副作用あり
ヒスタミン薬・充血除去薬の併用 小さな子供には有効性は示せず、年長児~成人では鼻症状に効果あり(臨床的に有意かは明らかではない)

ヒスタミン薬単独では効果はいまいちという結果。充血除去薬(プソイドエフェドリンPSEなど)と併用すれば効果があるようですが副作用はどうでしょうか。


WITHDRAWN: Nasal decongestants for the common cold. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2009 Apr
風邪による鼻症状に対する経口or点鼻用充血除去薬の効果を検討したRCTのメタ解析(成人のRCTのみ。小児は該当なし)
単回投与にて、鼻症状が6%減少(主に鼻づまりに有効)
有害事象は比較的少ないが、不眠症のリスクがやや増加。

3~5日間程度の定期使用で効果的、ただ小児のデータが少ないため12歳未満の小児には推奨しないと記載されています。国内で承認されているPSEとフェキソフェナジンの合剤の適応も12歳以上となっています。
それにしても6%減少って…。有用性が高いとは言えない感じです。


Effect of oral pseudoephedrine on blood pressure and heart rate: a meta-analysis. - PubMed - NCBI
Arch Intern Med. 2005 Aug
経口PSEの血圧・心拍数への影響を検討したRCTのメタ解析

収縮期血圧SBP +0.99mmHg(95%CI 0.08 to 1.90)
拡張期血圧DBP +0.63mmHg(95%CI -0.10 to 1.35)
心拍数 +2.83bpm(95%CI 2.0 to 3.6)

コントロールされた高血圧患者では

収縮期血圧SBP +1.20mmHg(95%CI 0.56 to 1.84)

高用量や非徐放製剤では、より有意な血圧上昇が見られた(用量依存的)。
女性では影響が少なかった。
短期間投与で、影響がより大きかった。

代用のアウトカムであり、なんらかの合併症に繋がるかどうかは不明です。さほど顕著な上昇は見られなかったようなので、急に体調悪化に繋がる可能性は低いかなと思いましたが、次の文献では注意喚起がなされています。

Benefits, limits and danger of ephedrine and pseudoephedrine as nasal decongestants. - PubMed - NCBI
Eur Ann Otorhinolaryngol Head Neck Dis. 2015 Feb
エフェドリンPSEについて
予測できない心血管リスクのため、
・15歳未満には使用すべきではない
・一般的な風邪に使用すべきではない
アレルギー性鼻炎には耳鼻科医がリスクとベネフィットを考慮して使用すべき

2011年フランスの耳鼻科のガイドラインが引き合いに出されています。


エフェドリン含有製剤は覚せい剤の原料となるという観点からも各国で販売規制が行われており、国内では一般用医薬品としても購入が可能でしたが、以下のとおり規制
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000037186.pdf
一包装単位での販売に規制するといっても、ドラッグストアを渡り歩けばいいわけなので、規制の効果はほとんどないと思います。
個人的には処方せん薬とすべき薬剤ではないかと思っています。


風邪の対症療法
<咳>
Over-the-counter medications for acute cough in children and adults in ambulatory settings. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2004 Oct
急性の咳を発症した成人と子供に対する経口OTC鎮咳薬の効果を検討したRCTのレビュー
<結果>
成人

vsプラセボ 効果
コデイン 無効(6trial)
デキストロメトルファン 有効(2trial)、無効(1trial)
グアイフェネシン 有効(2trial)
ヒスタミン 無効(3trial)
ヒスタミン薬+充血除去薬 有効(1trial)、無効(1trial)

小児

vsプラセボ 効果
鎮咳薬 無効(1trial)
鎮咳薬(咳止めシロップ2種) それぞれ有効“満足のいく応答”(46%,56%vsプラセボ21%)
去痰薬 該当なし
粘液溶解薬 有効?(1trial)
ヒスタミン 無効(1trial)
ヒスタミン薬+充血除去薬 無効(2trial)


小児へのコデインについては↓
Codeine for acute cough in children. - PubMed - NCBI
小児の急性咳嗽にコデインは推奨されず。


Effect of dextromethorphan, diphenhydramine, and placebo on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. - PubMed - NCBI
Pediatrics. 2004 Jul
上気道感染の100人の小児の夜間咳嗽の重症度・頻度、小児とその親の夜間の睡眠の質を評価
デキストロメトルファンジフェンヒドラミンプラセボすべて2日目の夜に改善
プラセボと比較して優位性はなかった。
デキストロメトルファンで不眠あり、ジフェンヒドラミンで眠気あり


Assessment and Management of Chronic Cough - PubMed - NCBI
Rockville (MD): Agency for Healthcare Research and Quality (US); 2013 Jan
慢性咳嗽(14歳未満の小児で4週以上、15歳以上の青年~成人で8週以上)のレビュー

コデインやデキストロメトルファンなどの鎮咳薬は咳の重症度と頻度を改善

咳の重症度 咳の頻度
デキストロメトルファン 0.54(95%CI 0.27-0.80 p=0.0008) 0.40(95% CI 0.18-0.85 p=0.0248)
オピオイド鎮咳薬(opiates) 0.63 (95%CI 0.40-0.86 p<0.0001) -
コデイン - 0.57(95%CI 0.36-0.91 p=0.0260)

風邪の急性咳嗽には有効性はいまいちな鎮咳薬ですが、慢性咳嗽には効果が期待できるようです。
ただし、慢性咳嗽の場合、別の原因を探ることが最優先だと思います。
長引く咳について - pharmacist's record
実は胃が悪かったなんてこともあるので要注意です。


風邪の対症療法
咽頭痛>
Non-steroidal anti-inflammatory drugs for the common cold. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun
風邪の症状に対するNSAIDsの有効性を検討したRCTのメタ解析

風邪の総症状スコア SMD -0.40(95%CI -1.03 to 0.24)
罹病期間 MD -0.23(95%CI -1.75 to 1.29)
呼吸器症状 SMD -0.05(95%CI -0.66 to 0.56)
くしゃみスコア SMD -0.44(95%CI -0.75 to -0.12)
頭痛、耳痛、筋肉痛、関節痛 有効(数値データの表記なし)
有害事象 RR 2.94(95%CI 0.51 to 17.03)

意外にもNSAIDsでくしゃみが軽減されてます。痛みにどれくらい効いたのかが知りたいところですが記載がありません。

↓一方で罹病期間が長くなるかもという指摘もあります。

Influence of loxoprofen use on recovery from naturally acquired upper respiratory tract infections: a randomized controlled trial. - PubMed - NCBI
Intern Med. 2007 日本の23の外来施設で行われたDB-RCT
P:上気道感染症18~65歳(平均年齢:約30歳)
E:ロキソプロフェン(n=88→解析n=84)
C:プラセボ(n=101→解析n=90)
O:罹病期間
※ITT解析されている

<結果>

ロキソプロフェン プラセボ
罹病期間 8.94日±3.2 8.39日±3.39
頭痛headache 2.65日 2.77日
鼻漏rhinorrhea 6.73日 6.78日
鼻づまりnasal congestion 5.71日 5.89日
くしゃみsneezing 3.37日 2.56日
喉の痛みsore throat 5.46日 5.00日
咳cough 5.61日 4.99日
痰phlegm 4.80日 4.02日
関節痛/筋肉痛 arthralgia/myalgia 1.76日 1.97日
悪寒chilliness 2.12日 2.4日
発熱feverishness 2.92日 2.96日
全身倦怠感general malaise 3.58日 3.56日
有害事象 9.5%(眠気3件、喉の渇き2件) 1.1%(眠気1件)


風邪に対するNSAIDsとしてはイブプロフェンを推奨する書籍が多いように思います。
↓検索で見つかった文献がこちら
The therapeutic effectiveness of ibuprofen on the symptoms of naturally acquired common colds. - PubMed - NCBI
Am J Rhinol. 2001 Jul-Aug
P:一般的な風邪患者 成人80名
E:イブプロフェン1.2g/日、分3(国内の常用量の約2倍)
C:プラセボ
O:風邪症状
<結果>
頭痛(p=0.008),耳痛(p=0.01),筋肉痛/関節痛(p=0.045),発熱(p=0.02).

肝心の喉の痛みについて記載がありません。


こちらはアセトアミノフェンとの比較
A Comparison of the Efficacy and Safety of Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs versus Acetaminophen in Symptom Relief for the Common Cold: A Meta... - PubMed - NCBI
Korean J Fam Med. 2013 Jul
風邪の症状緩和に対するNSAIDs(E)とアセトアミノフェン(C)の効果を比較したRCTのメタ解析

相対利益relative benefit
疼痛緩和 1.0(95%CI 0.96 to 1.05)
鼻漏 1.02(95%CI 0.77 to 1.35)
相対リスク
有害事象 1.14(95%CI 0.93 to 1.40)


以上、風邪の喉の痛みに対してはアセトアミノフェンイブプロフェンが一般的に推奨されていますが、使うならこのあたりの薬剤かなと思います。個人的にはトラネキサム酸を良く服用していたのですが、PubMed検索で文献を見つけられませんでした。
NSAIDsは咽頭痛にはけっこう効くんじゃないかと思っていましたが、ロキソプロフェンのRCTを見る限りだと微妙な感じです。自分は薬剤師になってから風邪を引いたときにNSAIDsを飲んだことがないので、今度、風邪を引いたときにロキソニンの市販薬を飲んで試してみようかなと思いました。


風邪とサプリメント

Zinc for the treatment of the common cold: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. - PubMed - NCBI
CMAJ. 2012 Jul
風邪に対する亜鉛の有効性をプラセボと検討したRCTのメタ解析(17RCT、2121名)
<結果>

風邪の症状持続時間
全体 平均差 -1.65日(95%CI -2.50 to -0.81) (不均一性高。有意差が出ていないRCTもある。)
成人(18歳以上) 平均差 -2.63(95% CI -3.69 to -1.58)
小児(18歳未満) 平均差 -0.26(95% CI -0.78 to 0.25)

figure3によると、亜鉛高用量(75mg/日以上)のほうが症状持続期間が短い傾向(※高用量の亜鉛投与は銅の欠乏を招くので注意。過剰摂取も良くない。風邪予防では10~15mg/日程度で試験が行われている。)

有害事象 RR 1.24(95% CI 1.05 to 1.46)
味が悪い(bad taste) RR 1.65(95% CI 1.27 to 2.16)
吐き気 RR 1.64, 95% CI 1.19 to 2.27)

サプリメントの有効性をあまり信じていない自分としては、それなりに有効性が示唆されているようで驚きました。味が悪いということは二重盲検ではないということでしょうか?だとするとちょっと微妙な気もします(それともbad tasteというのは味覚障害のことを指しているのでしょうか…。)
あと吐き気はちょっと嫌ですね。


↓風邪の予防に関する文献を探してたら、風邪の治療と予防に関するエビデンスがまとまっている文献を見つけました(今までピックアップしてきた文献と重複するかもしれませんが)。
Prevention and treatment of the common cold: making sense of the evidence. - PubMed - NCBI
CMAJ. 2014 Feb
風邪の予防と治療に関するエビデンスの総説
<風邪の治療>

介入 アウトカム 有害事象
ヒスタミン単剤 全体的な症状、鼻づまりは改善されず。鼻漏とくしゃみがやや改善 第一世代でOR 1.25(95% CI 1.04–1.50)主に鎮静
ヒスタミン+充血除去剤 NNT=5 for global symptoms 不眠や口渇
充血除去剤(経口フェニレフリン、局所鼻充血除去薬) 鼻づまりにやや有効。子供のデータなし 不眠がわずかに増加。心拍数や血圧に一貫した影響はみられず
点鼻イプラトロピウム42~168μg(1–2 sprays 3–4 times/day) 鼻漏に有効。鼻詰まりに無効 鼻出血増加、鼻や口の乾燥
OTC鎮咳薬 子供には無効、成人でやや有効かもしれない(デキストロメトルファンなどを併用で)※1 (報告が不十分な可能性あり)
NSAIDs 風邪の罹病期間、全身症状、呼吸器症状の改善なし。耳痛・筋肉痛・頭痛を改善(咽頭痛は改善せず) RR2.94(95%CI 0.51 to 17.03)
アセトアミノフェン(成人1000mg 4times daily、小児15mg/kg) 解熱効果と穏やかな鎮痛効果あり。小児ではイブプロフェンより有意に解熱 発汗などの軽度~中等度の有害事象(25% v. 5%, p < 0.001)
抗生剤 症状軽減の効果無しRR0.95(95% CI 0.59-1.51) RR1.8(95%CI 1.01-3.21)
はちみつ 就寝時2.5–10mg プラセボやデキストロメトルファンより有効 有害事象無し
亜鉛(一般的なレジメンは2時間毎に1回23mgのグルコン酸亜鉛だが、1回4.5~23mg、1日2~10回と研究によりさまざま) 罹病期間:−1.65日(95%CI −2.5 to −0.8) bad taste、吐気
亜鉛の点鼻 3つのRCTで効果なし 鼻が焼けるような痛烈な刺激、嗅覚損失の懸念
鼻洗浄(生理食塩水) 鼻症状のスコア差無し、非一貫性あり 鼻の刺激(13%)や乾燥(30%)
加湿(42°C–47°Cの温水を気化) 症状持続を軽減OR0.31(95%CI 0.16-0.60)、ただし非一貫性が高い(I2=89%) マスクの不快感、鼻づまり
エキナセア 非一貫性あり。6つの研究のうち1のみ症状の持続と重症度を改善 有害性のエビデンスなし
ビタミンC(1.5–4 g for 1–5 d) 7つのRCTにて症状短縮に効果なし 有害性のエビデンスなし

※1コデインは子供の急性咳嗽に有益ではない。成人へのコデインと抗ヒスタミン薬の併用は咳に効果がない。

<風邪の予防>

介入 アウトカム 有害事象
物理的介入(手洗い、アルコール消毒、マスク、手袋など) バイアスリスクが高いが、感染リスク減が示唆 N95マスクは通常のサージカルマスクより肌の不快、イライラが強い
亜鉛亜鉛硫酸塩錠 10mg、15mg) 風邪の減少 RR0.64(95%CI 0.47-0.88)。バイアスリスク高 小児で軽度の胃腸の不快感
うがい(水、ポビドンヨード7% 1日3回うがい(15秒) 呼吸器感染症リスクは、水うがいRR0.64(95%CI 0.42-0.99)、ヨードうがいRR 0.87(95%CI 0.58-1.34) 報告なし
運動(中等度の運動1日45分 週5日) 自己申告の風邪の罹患回数は減少。上気道感染は有意差なし 報告なし
ニンニク(アリシン粉末180mgのカプセル 12週DB-RCT) 風邪が減少ニンニク24/73、プラセボ65/73。風邪症状の期間が短縮 ※2 げっぷしたときに臭い
ビタミンC 0.2–3g/d (1g/d most common) 29RCTのメタ解析 風邪の減少はないRR0.97(95%CI 0.94 to 1.00)、サブ解析:寒さや身体的ストレスに晒されている参加者(スキー選手、マラソン選手、兵士など)は風邪が減少RR0.48(95%CI 0.35-0.64)。風邪の罹病期間は短縮[成人:8%(95%CI 3%to13%)小児:13.6%(95%CI 5%to22%)] 報告なし

※2 元文献は↓こちら。
Preventing the common cold with a garlic supplement: a double-blind, placebo-controlled survey. - PubMed - NCBI
参加者は日記のように風邪、風邪症状を記録(5点尺度で)。評価方法がいまいちはっきりしない印象。



 病院にかかって薬をもらえば風邪が早く治ると信じている方もいるかもしれませんが、風邪薬のエビデンスは微妙なところです。もちろん風邪で受診することを否定しているわけではありません。受診する意義はただの風邪かどうか、医師に見極めてもらうことだと思います。
 今後、研究によりあきらかにすべきなのは、風邪患者全般に対する風邪薬の有効性ではなく、どの程度の症状があれば薬の投与が推奨されるか(風邪と他疾患の簡易な鑑別方法など)。さらには、どのような症状があれば受診すべきか・どれくらい症状が持続したら受診すべきかといった患者さんにとっての指標ではないでしょうか。それこそ医療費の削減にも繋がるのではないかとも思います(1人1人にかかる医療費は微々たるものですが)。

 風邪を引いても、病院にかかって、あるいはドラッグストアに行って、薬をもらって早く治して休まずに働くぞ!というのが頑張ってるなと思われがちな昨今ですが、風邪を引いて体調が優れなかったら、仕事を休んで、きちんと休養をとることが最善の治療法なのではないかと思います(そんなエビデンスがあるかは知りませんが)。風邪で体調を崩したら、休みをとれる優しい社会になればいいですね。


※今回、多くの文献をピックアップしましたので記載ミスがあるかもしれません。間違いがありましたらご指摘頂けると助かります。文献の詳細は原著を確認して頂けるようお願い致します。