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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

下剤の連用で便秘が悪化? 大腸メラノーシスについて

 便秘に悩まされている人はかなり多いと思います。疫学調査では、人口1,000人につき男性は25人程度、女性は50人程度です。10代後半~中年では男性より女性で多いですが、男女ともに加齢(60代くらい)とともに増加し、同程度の割合となります。

 食生活や運動で改善できれば良いですが、改善されない場合は、下剤の適用となります。さまざまな下剤がありますので、まとめてみたいと思います。

 

浸透圧下剤

便を軟らかくする。

浸透圧(腸管内が高浸透圧)により水分が腸管内へ移行・保持。硬い便が水分を吸収し、膨張・軟化。腸管運動が促進されて排便を促す。

〈塩類下剤〉

酸化マグネシウム:吸収されない塩類が腸にたまり浸透圧が上昇し、水分が腸内へ移動。作用は弱いが習慣性はない。腎障害があると、排泄が低下し長期連用により高マグネシウム血症をきたすことあり。

CKD、マグネシウム製剤による高マグネシウム血症 - pharmacist's record

<糖類下剤>

 Dソルビトール:ほとんど吸収されない糖アルコールで味は甘い。浸透圧性の緩下作用あり。下剤としての適応はバリウム投与時のみ。透析患者の便秘に用いられることがあるが適応外(1回5g 分3~4)。作用発現は数時間程度。服用開始時にガス発生が増えてお腹がゴロゴロしやすいが、連用1週間程度で解消されることが多い。

ラクツロース:腸内細菌により分解され、有機酸を生じ、浸透圧作用を示す。下剤としての適応は小児と産婦人科領域の術後のみ。有機酸によりpHを低下させることで腸内細菌によるアンモニアの発生を抑制、アンモニアの腸管吸収抑制により肝硬変患者などの高アンモニア血症に用いられる。

 

 

膨張性下剤

カルメロース(バルコーゼ):食物繊維と同じような作用機序で、腸管で水分を吸収し、便のカサを増やして物理的刺激により大腸を刺激し、蠕動運動を亢進。自然な排便を促し、安全で高齢者に用いられる。排便時に痛みが少なく、痔疾患にも有用。充分な水分補給(服用時、コップ一杯以上)が必要で、効果発現に日数がかかる(最大効果発現に2~3日程度) 

 

浸潤性下剤

カサンスラノール・ジオクチルソジウムスルホサクシネート配合薬(ベンコール、ビーマスなど):界面活性剤で腸から吸収されず、便の表面張力が低下。硬い便に水分を浸透させて軟化・浸潤させて排便を促す。習慣性はないとされているが作用は弱い。 

 

Clチャネル賦活薬

ルビプロストン(アミティーザ):小腸のCl(クロライド)チャネルを活性化し、腸管内へClイオンが移動、受動的にNaや水分も腸管内へ移動。4~5人に1人の割合で悪心あり。食直後服用により軽減。

 

刺激性下剤

腸の粘膜を刺激して腸の蠕動運動を亢進。直腸性の弛緩性便秘に有効。

<アントラキノン系>

ダイオウ、センナ、アロエプルゼニドアローゼン、大黄甘草湯など)

大腸の蠕動運動を亢進させ、排便を促す。作用は強力。濫用により習慣性が生じることあり。腸の粘膜にメラニン様色素が沈着し大腸メラノーシスが発生し、二次的に弛緩性便秘をきたすことあり

 

<ジフェノール系>

ピコスルファート(ラキソベロン):腸内細菌がつくるジフェニルメタンが大腸粘膜を刺激して、蠕動運動亢進。大腸の水分吸収抑制作用もあり。液体は微調整が可能で、乳児にも適応あり(6ヶ月以下:2滴、7~12ヶ月:3滴)。ラキソベロン1錠=ラキソベロン液5滴。ラキソベロン液1本=150滴。ラキソベロン液と、お茶、オレンジジュース、牛乳などの各種嗜好飲料との配合変化試験では、明らかな配合変化無し。

ビサコジル:蠕動運動亢進と、水分吸収抑制作用。乳幼児は2mg坐剤、成人は10mg坐剤。効果発現は5~60分

 

<その他>

新レシカルボン坐剤:腸内で炭酸ガスを発生し、蠕動運動を亢進。数分~30分程度で効果発現。 習慣性あり。

 

 

アントラキノン系の下剤は作用が強力で良く用いられますが、大腸メラノーシスの懸念があります。 

大腸メラノーシス(大腸黒皮症)

大腸の粘膜に豹柄状の黒い色素が沈着し、腸の働きが低下し便秘さらに悪化する可能性あり。原因薬剤の中止により1年程度で消失すると言われている。

統計データによると、大腸がんとの因果関係は否定的。

原因薬剤はセンナ、アロエ、ダイオウなどのアントラキノン系の下剤(ジフェノール系のピコスルファートは原因とならないとされている)。

 

 ダイオウは便秘に用いられる漢方に配合されています。漢方だから、クセにならないとか、安全であるとは限りません。刺激性の下剤の使用はなるべく最小限にとどめて、食物繊維・水分摂取や運動療法により、なるべく下剤に頼らずに排便できるように心がけると良いと思います。