pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

【ビジアブ】便秘症に対する酸化マグネシウムのランダム化比較試験!

古くから日本で用いられている便秘薬の酸化マグネシウムですが、海外ではあまり使われておらず、実はエビデンスもほとんどないというのは有名ですよね。

しかし、とうとう出ました!
日本発のRCT(ランダム化比較試験)です!
しかも全文フリー!これは必読でしょう!

てことで、久々にビジアブ作りました

f:id:ph_minimal:20200220201522p:plain
A Randomized Double-blind Placebo-controlled Trial on the Effect of Magnesium Oxide in Patients With Chronic Constipation - PubMed
Mori S, Tomita T, Fujimura K, et al. A Randomized Double-blind Placebo-controlled Trial on the Effect of Magnesium Oxide in Patients With Chronic Constipation. J Neurogastroenterol Motil. 2019;25(4):563–575.
PMID:31587548


機能性便秘症の日本人女性を対象とした試験です。女性オンリーなんですね。
34例ということで小規模の試験です。医療機関に受診して下剤を処方されている方は対象外で、市販の下剤を週に5日以下の頓服で対処していた方々が試験に参加しました。

介入内容は、酸化MG1回量0.5gを1日3回食後内服。
プラセボを対照とし、盲検化されています。

脱落はプラセボ群の1例のみで、これについては解析から除外。

主要評価項目は5点スケールの全般改善度。

1点:大幅に改善
2点:改善
3点:やや改善
4点:不変
5点:悪化

さて結果は…、

ビジアブには4週だけでなく1週目のデータも載せましたが、論文には1〜4週の各週の数値が載っています。1週目から、4週にわたって有意に改善したようです。

全般改善度の平均スコアの比較はビジアブに示した通りですが、何割くらいの人たちが改善したのかも気になるところ。
全般改善度の反応率(4週のうち2週以上、1〜2点を記録した人の割合)は、
酸化マグネシウム群で70.6%、プラセボ群25%(有意差あり)

完全な(=残便感のない)自発的排便(CSBM;complete spontaneous bowel movement)の反応率は有意差なしだったようですが、介入群の1週間あたりのCSBMの回数は、1週→2週と徐々に増加しており、プラセボ群との差が開いていくのがわかります(FIG4B)。有意差がつかなかったのは検出力不足かもしれませんね。

有害事象についてはパッと見、記載がないですね。0件だったのでしょうか。
酸化Mg1.5gってことで下痢した人はいなかったのかが気になるところだったのですが、下痢(diarrhea, diarrhoea)というワードは見当たらず。
便の硬さをみてみましょう。便の硬さについてもブリストルスケール(1~7、1が便秘、7が下痢、4が普通便)で評価されており論文のFIG4Cに載っています。酸化Mg群は1週目からブリストルスケールが2弱から4.5くらいまで変化しています。平均値はほぼ普通便ですが、幅を見ると、6くらいまで変化した人もいるようなので、軟便になった人もいるのだと思われます。


さて、このあたりにしておいて、読者の皆様にはぜひとも原著論文をお読みいただきたいです。
他にも様々な比較データ(グラフ付き)が載っていますよ!!


便秘に悩む人は多いですが、最近新しい便秘薬が続々と発売され、さらに古くからの薬剤である酸化Mgのエビデンスも出ましたので、患者さんの便通コントロールにいかせるといいですね。

個人的にはどの薬を使うか以前に、どんな便秘なのかをはっきりさせることも重要なのではないかと思っています。

便秘の定義は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされていますが、その分類は様々です。

去年の11月に掲載された味村先生の総説に便秘の分類についてまとめられています。
I.慢性便秘症の診断と治療
日本大腸肛門病学会雑誌2019 年 72 巻 10 号 p. 583-599

上記文献の表1ですね

器質性としては、
大腸がんなどの狭窄による器質性の便秘、狭窄はないけど直腸瘤(ポケットに便が残る)などによる器質性便排出障害など

機能性としては、
大腸通過遅延による排便回数減少、通過時間正常型の排便回数減少、硬便による排便困難、腹圧低下や骨盤底筋協調運動障害による機能性便排出障害など

ひとことで便秘といってもその病態はさまざまですね

図1の慢性便秘症の初期診療アルゴリズムによると、
警告徴候は
・原因が特定できない体重減少
・血便
・50歳以上で,過去 3 年以内に大腸検査を受けていない
→このような場合は内視鏡などの検査


便秘といえば食物繊維!!という印象がありますが、これは病態によって異なります。
大腸通過時間が正常なのに排便回数・排便量が少ない場合は、食物繊維不足が原因の場合が多いため食物繊維をとることで改善する一方で、大腸通過遅延型や便排出障害の場合には食物繊維を増やすとかえって悪化する場合もあるそうです。
(食物繊維摂取量が少ないために便秘症を呈している大腸通過正常型便秘症の患者は30~40%)

なるほど。勉強になりますね。

各薬剤の使い分けについては、
↓同雑誌の別ページにまとめられており、こちらも全文フリーですので、各薬剤の特徴を学ぶことができます。
II.慢性便秘症の治療 各論(新規薬剤について)
日本大腸肛門病学会雑誌2019 年 72 巻 10 号 p. 600-608


さて…と
便秘の勉強をしていたら、どうもトイレにいきたくなってきました…。
私はどちらかというとお腹が弱いのですッ!
市販で購入した整腸剤ビオ○○ルミンを飲まなくては!
f:id:ph_minimal:20200220220549j:plain