便秘薬として汎用されている酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について2008年に厚生労働省より注意喚起がありました(医薬品・医療機器等安全性情報 No.252)。
[Influence of impaired renal function and magnesium oxide administration on serum magnesium levels in elderly inpatients]. - PubMed - NCBI
日本老年医学会雑誌2011年
高齢入院患者を対象とした腎機能障害と酸化マグネシウム投与のマグネシウム(Mg)値への影響についての研究です。
酸化マグネシウムの投与量が多いほど、また腎機能が低い(とくにeGFR30ml/min/1.73㎡未満)ほど、血清Mgは高値となるという結果でした。
血清Mgは腸管からの吸収と、腎臓からの排出のバランスによって変動。
Mg吸収増加:Mg含有製剤投与、便秘持続による腸閉塞や腸管運動機能低下(→高Mg血症を防ぐには便秘を持続させないことも大事)
Mg排出低下:腎機能低下
血清Mgの基準値:1.7~2.6mg/dL
4.8mg/dLを超えると副作用症状発現(もっと低い値で出ることもある)
副作用症状 | 血清Mg値(mg/dL) |
---|---|
血圧低下 | 3.6~6mg/dL(6mg/dL以上でほぼ必発) |
徐脈 | 3.6~11mg/dL |
吐気・嘔吐 | 3.6~11mg/dL |
皮膚紅潮 | 3.6~11mg/dL |
傾眠 | 4.8~8.4mg/dL |
QT延長、QRS延長 | 6~8mg/dL |
房室ブロック | 10mg/dL以上 |
嚥下障害 | 10mg/dL以上 |
呼吸抑制 | 12mg/dL以上(16.8mg/dL以上でほぼ必発) |
昏睡 | 13.5~17mg/dL |
呼吸筋麻痺 | 18~20mg/dL |
心停止 | 18~19.2mg/dL(19.2mg/dL以上ではほぼ必発) |
※マグネシウムが過剰になると、神経伝達を妨げ、筋肉の麻痺が起こる。
呼吸筋麻痺による呼吸不全や、心臓の刺激伝導系が遅延により房室ブロックや心停止をきたす。
酸化マグネシウムは安全性が高い薬剤ではありますが、腎不全患者においては高マグネシウム血症をきたす可能性があります。高齢者は腎機能が低下していることが多いので、腎機能もチェックし、必要に応じてマグネシウム値のモニタリングが必要です。