レストレスレッグス症候群(RLS)
むずむず脚症候群とも呼ばれ、睡眠障害の原因にもなる知覚異常を起こす疾患。日本の有病率は2~5%、男性より女性に多く(1.5倍程度)、加齢により多くなる。
<RLSの症状>
脚がむずむずする、虫が這うような感覚、脚がチクチクする、脚がピクッとでたらめに動く、掻き毟りたくなるといった脚の不快感があらわれ、脚を動かしたい衝動が夕方~夜間にかけて強く現れ、睡眠障害の一因となる。進行すると下肢だけでなく上肢に症状が出ることもある。
他覚的症状として、貧乏揺すり、足踏みをする、脚をさする等。
安静時でも何かに熱中していたり、身体を動かしたりすると症状は軽減。
特徴は、
- 安静時に悪化
- 動くと楽になる
- 夕方~夜間に悪化
<リスク因子>
カフェイン、アルコール、ニコチンなど
<評価スケール>
IRLS(International Restless Legs Syndrome Rating Scale)
10の質問を0~4点で計40点。10点ごとに重症度が4つに分類(軽症、中等症、重症、最重症)
質問内容は、
- 脚の不快感
- 動き回りたい欲求
- 睡眠障害
- 日中眠気
- 症状の頻度
など。
鉄不足がRLSの一因とも言われています。
Iron and the restless legs syndrome. - PubMed - NCBI
Sleep. 1998 Jun 15
介入試験ではありません。29~81歳の男性9名、女性18名の患者のフェリチンとRLS重症度を比較。
血清フェリチン低値(50ng/ml以下)ではRLS症状がより重症であったという相関あり。
鉄の補給療法についてはコクランレビューで論じられています。
Iron for restless legs syndrome. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2012 May 16
4つの試験の鉄補給の効果(プラセボと比較した変化)
IRLS:-3.79(95% CI: -7.68 to 0.10, p = 0.06 )
figure2を見ると、プラセボがけっこう効いてる試験もあって、それが足を引っ張って統計的に有意差が出なかったのかな、とも思いますが、40点満点で-3~4点。この効き目をRLS治療薬と比較してみたいと思います。
Efficacy and safety of pramipexole in restless legs syndrome. - PubMed - NCBI
Neurology. 2006 Sep 26
RLSへのプラミペキソールの安全性と有効性を検討したDB-RCT
P:中等度RLS344名
E:プラミヘキソール(0.25mg,0.5mg,0.75mg/日)
C:プラセボ
O:IRLS、CGI-I
①IRLSの結果
プラミヘキソール
0.25 mg/day: -12.8 ( p < 0.01)
0.50 mg/day:-13.8 ( p < 0.01)
0.75 mg/day:-14.0 ( p < 0.01)
プラセボ:-9.3
②CGI-Iスケール(※)
7段階中上位2段階のvery much improved と much improvedの割合
プラミヘキソール
0.25 mg/day:74.7%
0.50 mg/day:67.9%
0.75 mg/day:72.9%
プラセボ:51.2%
③有害事象
吐気:19.0%(E) vs 4.7%(C)
眠気:10.1%(E) vs 4.7%(C)
※CGI-I(clinical global impressions)
1 very much improved
2 much improved
3 minimally improved
4 no change
5 minimally worse
6 much worse
7 very much worse
高用量での長期投与(6ヶ月以上)は耐性や症状の増強が問題となり、0.25mg/日をできるだけ維持し、増量しても0.5mg/日程度までというエキスパートオピニオンもあります。実際、上記の結果をみても、そんなに増量する必要はないように見受けられます。
プラミペキソールのRCTはプラセボがとても効いており、その真価をどう評価すればいいのか難しい印象です。こうしてみると、鉄の補給も悪くないのでは?とも思えてきます。フェリチン50ng/mLを下回っている場合はまず鉄の補給を試みるのは良い選択ではないでしょうか。