近年、BPSDや終末期のせん妄などにも応用され、使用量が増えている抗精神病薬ですが、アカシジアなどのEPSを引き起こすことがあります。
薬剤(ドパミン受容体遮断薬)によって引き起こされる錐体外路症状(EPS)の一種。開始・増量から4週間以内に発症する急性アカシジアと3カ月以上経って発症する遅発性アカシジアとに分類
第2世代の抗精神病薬はEPSを起こしにくいが、SDA(リスペリドンなど)は比較的生じやすい。リスペリドンは高用量となると生じやすくなる。
アリピプラゾールはEPSは起こしにくいが、アカシジアは起こしやすい(アリピプラゾール8.9%、他の非定型抗精神病薬の2.3%)
国内の長期試験の結果では、
リスペリドン(リスパダール):22.9%
ペロスピロン(ルーラン):40%
クエチアピン(セロクエル):5.2%
オランザピン(ジプレキサ):17.6%
厚生労働省の重篤副作用マニュアルでは上記のとおり記載されていますが、文献によって数値は異なるので注意が必要。
Extrapyramidal side-effects of antipsychotics in a randomised trial. - PubMed - NCBI
第一世代のペルフェナジン(ピーゼットシー)と、第二世代のリスペリドン、クエシチアピン、オランザピンなどの1年以内のアカシジア発症率がtable2に記載あり。
25~35%くらいの間で有意な差はないようですが、ペルフェナジンとリスペリドンがやや頻度が高い印象です。
鉄欠乏や糖尿病がアカシジアのリスク因子として指摘されていると重篤副作用マニュアルに記載あり。
Serum iron levels in schizophrenic patients with or without akathisia. - PubMed - NCBI
Eur Neuropsychopharmacol. 2003 Mar;13
アカシジアのある統合失調症、アカシジアのない統合失調症、健常者で検査値を比較
血清鉄 アカシジア<非アカシジア<健常者
フェリチン アカシジア<非アカシジア<健常者
鉄欠乏がアカシジアに関連しているとの結論。
ただし、これには反論もあるようで、アカシジア予防のために鉄剤を投与することは推奨されてはいないようです(鉄剤投与でアカシジアを抑えられるというエビデンスはない)。
<アカシジアの症状>
足がむずむずする、ジッとしていられない、体がソワソワしたりイライラしたりする
貧乏揺すり、理由なく歩き回る
<Barnes Akathisia Rating Scale (BAS)>
アカシジアの評価スケール。アカシジアの客観的症状(0~3点)、主観的症状(0~3点)、精神的苦痛(0~3点)、総合評価(0~5点)の計4項目で構成。詳細は重篤副作用マニュアル参照
<他疾患との鑑別>
①精神症状の増悪(不安、焦燥など):アカシジアの場合は動き回ることによって症状減
②むずむず脚症候群(RLS:restless legs syndrome):脚がむずむずする、虫が這うような感覚、チクチクする、掻き毟りたくなる、などの脚の不快感、脚を動かしたくなるといった症状がみられる(脚を動かすと不快感は軽減)。アカシジアは日中も症状があるのに対して、RLSでは夕方~夜間にかけて強く睡眠障害との関連が強い。RLSはプラミペキソール(ビ・シフロール)などのドパミンアゴニストや、GABA誘導体のガパペンチンエナカルビル(レグナイト)、適応外だがBZ系のクロナゼパム(リボトリール)などが有効。
↓RLSについて
レストレスレッグスに鉄剤が有効? - pharmacist's record
<アカシジアの治療>
①原因薬剤の中止・減量または他剤への変更
②β遮断薬(プロプラノロール、メトプロロールなど)
③BZ系(クロナゼパム、ロラゼパムなど)
④中枢性抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジルなど)→急性期に使うことはあるが、予防的投与は推奨されていない
⑤抗ヒスタミン薬(シプロヘプタジンなど)
など
以下、アカシジアに関する文献をピックアップ。
Managing antipsychotic-induced acute and chronic akathisia. - PubMed - NCBI
Drug Saf. 2000 Jan;22
この文献では、プロプラノロールなどの中枢性(脂溶性)β遮断薬を推奨、第2選択としてBZ系を検討となっています。
Akathisia: problem of history or concern of today. - PubMed - NCBI
CNS Spectr. 2007 Sep;12
こちらでも第一選択として推奨されるのはβ遮断薬、BZ系となっています。
Hillside J Clin Psychiatry. 1989;11
凄く古い文献です。プラセボを用いて二重盲検。プロプラノロール120mgがプラセボより有効。
記載が少なすぎて、患者背景や有効性の程度がまったくわからず…。20年以上前から経験的に使われてきたんだなということで取り上げました。
Propranolol as a primary treatment of neuroleptic-induced akathisia. - PubMed - NCBI
Hillside J Clin Psychiatry. 1988;10
これも古いですが…。
11名の統合失調症における薬剤性アカシジアに対するプロプラノロールの有効性を検討したDB-RCTです。症例数が少ないです…。プラセボより有意に改善と記載されていますが、どの程度かが不明。
Central action beta-blockers versus placebo for neuroleptic-induced acute akathisia. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2004 Oct 18
薬剤性の急性アカシジアに対する中枢性β遮断薬の有効性を検討したRCTのシステマティックレビュー。3つのRCTの患者背景はどのRCTも30~40代くらいまでとなっており、高齢者は含まれてないようです。高齢者のアカシジアに対する安全性は評価できないと思いました。
どのRCTも症例数が少ないこともあってか、薬の評価に厳しい印象のあるコクランにデータ不十分とばっさり切られてます。
Benzodiazepines for neuroleptic-induced acute akathisia. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2002
薬剤性の急性アカシジアに対するBZ系の有効性を検討したRCTのシステマテックレビュー。これも小規模RCTでn=26
クロナゼパム vs プラセボ RR 0.09(CI 0.01 to 0.6)、NNT 1.2(CI 0.9 to 1.5)
これだけ見ると凄いな!と思いますが、n=26ですのでどうでしょうか…。
Clin Neuropharmacol. 1994 Jun;17
クロナゼパムの有効性を検討したn=12のDB-RCTです。1個上のコクラン(フルテキスト確認できず)で取り上げられたRCTはもしかしたらこの文献かな?なんて気もしますが。
クロナゼパム(0.5-2.5 mg/day)2週間投与でプラセボと比較して有意にアカシジアスコアを減少。1週間後に薬を中止すると、症状の再発も見られたようです。
アカシジアについて調べてみようと思ったきっかけは『高齢者(とくに終末期)の不眠症にBZ系を使用して引き起こされたせん妄に抗精神病薬を用いて、アカシジアが出てしまった場合にどうするか?』だったのですが、結局、すっきりしませんでした。やはり原因薬剤を中止して他剤に切り替えたり、減量して様子を見るのが妥当なのかなと。
高齢者だとプロプラノロールを使うのは低血圧や徐脈などが恐いですし、中枢性抗コリン薬やBZ系はせん妄のリスクとなり本末転倒。ただBZ系は実際使用されているように思います。クロナゼパムなどBZ系を少量入れて、D2遮断作用が弱い抗精神病薬(クエチアピンなど)を併用し、コントロールするという方法も場合によっては有効かもしれません。
最後に意外なところから新しい治療薬が参入してきましたのでご紹介。
Biol Psychiatry. 2006 Jun 1
ミルタザピン15mg(n=30)、プロプラノロール80mg(n=30)、プラセボ(n=30)の3群に分けて、DSM-IV の基準を満たす薬剤性アカシジアの患者を7日間治療したDB-RCT。
プライマリアウトカム:①BAS ②レスポンダーの割合(BAS2点以上の減少)
26%の患者が中途終了(ミルタザピン=7、プロプラノロール=8、プラセボ=9)。
プロプラノロール5名が徐脈や低血圧などの有害事象のため脱落。他19名は効果不十分で脱落。
結果①BASの減少率
- ミルタザピン -34%
- プロプラノロール -29%
- プラセボ -11%
結果②レスポンダーの割合
- ミルタザピン 13名(43.3%)
- プロプラノロール 9名(30.0%)
- プラセボ 2名(6.7%)
プロプラノロールは副作用による脱落がありながらも効果は発揮しています。が、それ以上にミルタザピンが効いています。SSRI、SNRI、三環系などの抗うつ薬はアカシジアを引き起こす薬剤であると言われていますが、抗うつ薬のミルタザピンはアカシジアを抑制したという個人的には驚きの結果でした。
ミルタザピン(レメロン/リフレックス)
NaSSA(ノルアドレナリン・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)と呼ばれ、モノアミンやセロトニンなどの再取り込みを阻害する他の抗うつ薬と違って、前シナプスのα2自己受容体/α2ヘテロ受容体を遮断することにより、ノルアドレナリンやセロトニンの遊離が促進、シナプス間隙での濃度が上昇し、抗うつ作用発揮。抗ヒスタミン作用による鎮静作用、5-HT2・5-HT3遮断(→性機能障害・吐気が少ない)による相対的5-HT1A活性化による抗不安作用・抗うつ作用あり。不眠症やせん妄にも効果が期待できる。再取り込み阻害薬と比べ、効果発現が早いとも言われている。
(前シナプスのα2自己受容体遮断によりノルアドレナリンを遊離し抗うつ作用を発揮するミアンセリンと似ている。ミアンセリンもせん妄や不眠症に応用される。ともに抗コリン作用が少ない)
BZ系でせん妄が出てしまう患者さんに対する不眠症治療薬として、トラゾドン、ミアンセリンと並んでミルタザピンも選択肢の一つとなりますが、アカシジアのリスクとなる抗精神病薬と併用するにはミルタザピンが有用かも…?不眠症でBZ系→せん妄→抗精神病薬→アカシジアといった経過を辿るケースがあるとすれば、不眠に有効で、せん妄にも効果が期待でき(どちらかというと低活動性のせん妄)、かつアカシジアにも抑制的なミルタザピン。今後、出番が増えるかもしれません。
薬局が在宅に参入するなら、この分野の薬物療法はとても大事なので、しっかりと勉強しないといけないなと思いました。