Tricyclic drugs for depression in children and adolescents. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 18;6:CD002317
小児および青年における三環系抗うつ薬の有効性と安全性について評価
14RCT(n=590)のメタ解析
P:DSMもしくはICDの診断基準によって診断された6~18歳のうつ病患者
E:三環系抗うつ薬
C:プラセボ
O:①所定の基準に伴う寛解/応答(ハミルトンうつ病評価尺度:9点減少もしくは49%減少) ②うつ病チェックリストスコアの変化 ③副作用
※ハミルトンうつ病評価尺度Hamilton Rating Scale for Depression score(HDRS,HAM-D)
抑うつの重症度スコア。17項目版と21項目版があるが、一般に17項目版が用いられている。
【抑うつ気分、自責、自殺念慮、入眠障害、熟眠障害、早朝覚醒、仕事と趣味、激越、不安、消化器症状、性欲、体重減少など】
これらの項目ごとに0~2点、もしくは0~4点で評価、点数が高いほど重症。
17項目版において
23点以上:最重症
19~22点:重症
14~18点:中等症
8~13点:軽症
7点以下:正常
以下のような患者は除外(研究間で除外基準に相違あり)
・統合失調症を併発
・自殺リスクの高い患者
・双極性障害
・発達障害
・広汎性発達障害Pervasive Developmental Disorders;PDD (自閉症・アスペルガーなど)
・強迫性障害Obsessive Compulsive Disorder;OCD
・注意欠陥・多動性障害attention deficit hyperactivity disorder;ADHD
など
※ADHDについてはこちら
ADHD治療剤 アトモキセチン(ストラテラ) - pharmacist's record
<結果>
アウトカム | risk ratio/standardised mean difference(95%CI) |
---|---|
治療応答率 | RR 1.07(0.91 to 1.26) |
うつ病症状 | SMD -0.32(CI -0.59 to -0.04) |
青年におけるうつ病症状 | SMD -0.45(-0.83 to -0.007) |
小児におけるうつ病症状 | SMD 0.15(-0.34 to 0.64) |
めまい | RR 2.76(1.73 to 4.43) |
起立性低血圧 | RR 4.86(1.69 to 13.97) |
振戦tremor | RR 5.43 (1.64 to 17.98)] |
口渇 | RR 3.35(1.98 to 5.64) |
疲労 | RR 1.31(0.64 to 2.71) |
睡眠障害 | RR 1.63(0.79 to 3.36) |
頭痛 | RR 1.10(0.80 to 1.50) |
動悸 | RR 1.20(0.18 to 7.73) |
発汗 | RR 1.94(0.40 to 9.42) |
便秘 | RR 1.83(0.73 to 4.60) |
排尿障害 | RR 0.32(0.01 to 7.45) |
試験中止 | RR 1.48(0.94 to 2.31) |
異質性があり、有害事象についてのエビデンスはvery low-quality
自殺念慮についてのデータがないのが残念です。
参考までに各試験における使用薬剤とその投与量について
Bernstein 1990 | 7~17歳 | イミプラミン up to 200 mg/day(アルプラゾラムも使用あり) |
Bernstein 2000 | 12~18歳 | イミプラミン up to 3 mg/kg in 2 divided dos |
Birmaher 1998 | 12~18歳 | アミトリプチリン titrated up to a maximum of 5 mg/kg/day in 3 divided doses |
Geller 1989/1992 | 6~12歳 | ノルトリプチリン plasma levels of 60-100 ng/mL |
Geller 1990 | 12~17歳 | ノルトリプチリン plasmalevelsat60-100 ng/m |
Hughes 1990 | 6~12歳 | イミプラミン 用量記載なし |
Kashani 1984 | 9~12歳 | アミトリプチリン fixed dose 1.5 mg/kg |
Keller 2001 | 12~18歳 | イミプラミン 200-300 mg/day in divided doses |
Klein 1998 | 13~17歳 | デシプラミン titrated to a maximum of 300 mg/day |
Kramer 1981 | 13~17歳 | アミトリプチリン to a maximum of 200 mg/day |
Kutcher 1994 | 15~20歳 | デシプラミン 200 mg/day |
Kye 1996 | 12~17歳 | アミトリプチリン 5 mg/kg/day up to maximum 300 mg/day |
Petti 1982 | 6~12歳 | イミプラミン 5 mg/kg/day |
Puig-Antich 1987 | 平均年齢9歳 | イミプラミン to a maximum of 5 mg/kg/day |
各試験の用量を見てびっくり
日本とはケタ違いの高用量です。
<イミプラミン>
うつ病(成人)初期25~75mg、最大300mg
遺尿症(学童)25~50mg
遺尿症(幼児)25mg
<アミトリプチリン>
うつ病(成人)初期30~75mg、最大300mg
夜尿症10~30mg
(ともにうつに対する小児投与は安全性未確立、近年では、夜尿症で使われるケースも減少している模様)
コクランレビューの結果は、
小児期では症状スコアの減少がみられず、青年においてはやや減少。
気になる点は、
・国内と用量が大きく異なる
・自殺リスクが高い患者は除外されている
プラセボの有効率がどれくらいだったかも気になるところ(各種SSRIの小児への試験ではプラセボの有効率が高かった)
なにはともあれ用量が違いすぎて、国内における外的妥当性が低そうですね