pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

【意識調査】腎機能に応じた用量調整(2014年発表の日本の報告)

f:id:ph_minimal:20210607203206p:plain
Awareness and current implementation of drug dosage adjustment by pharmacists in patients with chronic kidney disease in Japan: a web-based survey
BMC Health Serv Res. 2014 Dec 3;14:615. PMID: 25464858

ADDR(adjustment of drug dosage according to renal function):腎機能に応じた薬剤投与量の調整


日本のWEB調査の報告です!

「ADDRを実施している」と答えた割合は薬局薬剤師より病院薬剤師の方が多いという結果。
調査実施期間は2013年の5月ということで8年前のデータですね。
2021年現在だとどうでしょうね。この差は縮まっているのでしょうか?

WEB調査なので、回答してくれた薬剤師はADDRに関心がある傾向にあるかもしれませんので、実際はもっと低いという可能性もあるでしょう。2013年のころの自分はどうだったかな…?と思い返してみたのですが、まったく記憶にございませんでした。昨日、何を食べたのかも覚えていない私が2013年の業務状況を覚えているはずがないのですッ。


ADDR実施にあたっての障壁となる原因として、病院と薬局で大きな違いが見られたのは、「クレアチニン値などの患者の腎機能に関する情報が入手できない」です。たしかに! 
ただ、最近では処方箋に検査値を載せている病院もあり、この問題はゆくゆくは解決するかもしれませんね(先の話になるかもしれないけど)。


腎機能低下例に対する不適切な用量によって副作用を起こした症例を経験している割合は、病院薬剤師の方が圧倒的に多いです。
入院患者さんの方が、副作用を起こしやすい重篤な症例が多いでしょうし、使用する薬剤も外来とは異なるでしょう。注射の抗菌薬など、薬局では扱わないような腎機能に注意が必要な薬の使用が多いことも一因かと思います。
しかし、私はそれだけが理由ではないと思っています。「薬局では副作用を起こしてしまったことを知らないままである」という懸念がありますね。例えば過量投与で別の病院に搬送されたりしたら、フィードバックがない限り、副作用を起こしたことを知らないまま…という可能性があります。

過量投与で副作用に繋がってしまった経験があれば、ADDRを実施する意義がその身に深く刻まれると思います。クレアチニンなどの情報の入手が困難な場合があるのは確かですが、その意義を知っているかどうかで、「患者情報入手困難」といった障壁を乗り越えようと努力するかどうかが変わってきますよね。「この薬を過量投与するとマジでヤバい」ということを認識できているかどうかは重要だと思います。

というわけで失敗例から学ぶ的な意味で、副作用症例をしっかりと情報共有することが大事なのかなと思いました。私も最近ちょくちょく腎関連の研修や勉強会に参加していますが、バラシクロビルの処方箋を見ると、反射的にビビってしまうカラダになってしまいました。自分自身が副作用症例を経験していなくても、教育を受けたことで、過量投与するとヤバイ薬だということが、この身に刻み込まれたのです。この太り始めたカラダに「バラシクロビルは腎機能に要注意!」という紋章が…!

というわけで、やっぱり意義を理解することが一番大事なのかなぁ~というのが個人的な印象です。

本研究は全文フリーの論文であり、ほかにもさまざまなデータが載っていますので、ぜひとも原著論文をご覧くださいm(._.)m

球形吸着炭(クレメジン®)の有効性は? ~EPPIC試験~

f:id:ph_minimal:20210601194717p:plain
Schulman G, Berl T, Beck GJ, Remuzzi G, Ritz E, Arita K, Kato A, Shimizu M. Randomized Placebo-Controlled EPPIC Trials of AST-120 in CKD. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul;26(7):1732-46. PMID: 25349205

突然のビジアブ!
この球形吸着炭(クレメジン®)のビジアブは某症例討論会のスライドに盛り込む予定だったけど、アホだからスライド作りすぎて話が長くなってしまうので削ったスライドなんです。症例の主題は吸着炭ではなかったので、この薬についてはサーッと流したのですが、せっかく作ったので、ここに供養しておきます。

日本の承認用量は1日6gなので、本試験は承認用量よりも多いんですね。が、結果はネガティブであったと…。これを踏まえてCKDガイドライン2018では、「CKD患者への球形吸着炭の投与によるESKD,死亡の抑制効果は明確ではない」と記載されています。

この薬の立ち位置や使いどころって専門家のあいだではどうなっているんでしょうね。
専門外の私からすると、この薬が処方されていたら腎臓が悪い人なんだなと一発でわかるなぁ~って感じです。車のステッカーの「BABY IN CAR」みたいに、お薬手帳にクレメジン®と記載されていたら「アイアム CKD」ってことだなと。
お薬手帳の記載内容だけだとCKDだとわからない症例もありますよね?目立った薬は処方されてないけど、「腎臓内科」って書いてあるので、確認してみたら、GFR30くらいだった!なんてこともあり、CKDシールみたいなのがあればなぁ~と思った記憶があります。

おっと脱線しました。
吸着炭の有効性ってどうなんでしょうね。ハードエンドポイントは微妙そうな感じですが、尿毒症の症状軽減のエビデンスはあるんですかね?(調べてない)


さて、某討論会っていうのが以前このブログで取り上げた、↓こちらでしてね。
ph-minimal.hatenablog.com
自分は主要メンバーではないイチ参加者なのですが、せっかくなので話題提供してみたい!という謎の積極性がふつふつとこみあげて、おそるおそる手をあげたところ、発表の機会をいただきました。
いやぁ~、すごい先生方ばかりの会でお話しするのは超絶ド緊張ですねぇ~。
緊張しましたが、いろんな先生のお話を聞けてとても楽しかったです。
いつかリアルでお会いしたいものですm(__)m

音楽の話をしよう Mathias Kaden - Kawaba (Dj Koze's Remix)

youtu.be

鳥肌必至!!
ベルリンのレーベル「Vakant」からリリースされた日本語ボイスをフィーチャーしたディープな一品。
日本語の声を担当したのは鵜久森智美(ウクモリトモミ)さん。
その美しい声をどう料理したのか…それは聴いてのお楽しみ。
DJ KOZEのセンスに脱帽します。

水仙の咲く頃出会った君は …」
いい意味で鳥肌が立ちます。ヘッドホン必須の曲ですよ!