pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

【ビジアブ】便秘症に対する酸化マグネシウムのランダム化比較試験!

古くから日本で用いられている便秘薬の酸化マグネシウムですが、海外ではあまり使われておらず、実はエビデンスもほとんどないというのは有名ですよね。

しかし、とうとう出ました!
日本発のRCT(ランダム化比較試験)です!
しかも全文フリー!これは必読でしょう!

てことで、久々にビジアブ作りました

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A Randomized Double-blind Placebo-controlled Trial on the Effect of Magnesium Oxide in Patients With Chronic Constipation - PubMed
Mori S, Tomita T, Fujimura K, et al. A Randomized Double-blind Placebo-controlled Trial on the Effect of Magnesium Oxide in Patients With Chronic Constipation. J Neurogastroenterol Motil. 2019;25(4):563–575.
PMID:31587548


機能性便秘症の日本人女性を対象とした試験です。女性オンリーなんですね。
34例ということで小規模の試験です。医療機関に受診して下剤を処方されている方は対象外で、市販の下剤を週に5日以下の頓服で対処していた方々が試験に参加しました。

介入内容は、酸化MG1回量0.5gを1日3回食後内服。
プラセボを対照とし、盲検化されています。

脱落はプラセボ群の1例のみで、これについては解析から除外。

主要評価項目は5点スケールの全般改善度。

1点:大幅に改善
2点:改善
3点:やや改善
4点:不変
5点:悪化

さて結果は…、

ビジアブには4週だけでなく1週目のデータも載せましたが、論文には1〜4週の各週の数値が載っています。1週目から、4週にわたって有意に改善したようです。

全般改善度の平均スコアの比較はビジアブに示した通りですが、何割くらいの人たちが改善したのかも気になるところ。
全般改善度の反応率(4週のうち2週以上、1〜2点を記録した人の割合)は、
酸化マグネシウム群で70.6%、プラセボ群25%(有意差あり)

完全な(=残便感のない)自発的排便(CSBM;complete spontaneous bowel movement)の反応率は有意差なしだったようですが、介入群の1週間あたりのCSBMの回数は、1週→2週と徐々に増加しており、プラセボ群との差が開いていくのがわかります(FIG4B)。有意差がつかなかったのは検出力不足かもしれませんね。

有害事象についてはパッと見、記載がないですね。0件だったのでしょうか。
酸化Mg1.5gってことで下痢した人はいなかったのかが気になるところだったのですが、下痢(diarrhea, diarrhoea)というワードは見当たらず。
便の硬さをみてみましょう。便の硬さについてもブリストルスケール(1~7、1が便秘、7が下痢、4が普通便)で評価されており論文のFIG4Cに載っています。酸化Mg群は1週目からブリストルスケールが2弱から4.5くらいまで変化しています。平均値はほぼ普通便ですが、幅を見ると、6くらいまで変化した人もいるようなので、軟便になった人もいるのだと思われます。


さて、このあたりにしておいて、読者の皆様にはぜひとも原著論文をお読みいただきたいです。
他にも様々な比較データ(グラフ付き)が載っていますよ!!


便秘に悩む人は多いですが、最近新しい便秘薬が続々と発売され、さらに古くからの薬剤である酸化Mgのエビデンスも出ましたので、患者さんの便通コントロールにいかせるといいですね。

個人的にはどの薬を使うか以前に、どんな便秘なのかをはっきりさせることも重要なのではないかと思っています。

便秘の定義は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされていますが、その分類は様々です。

去年の11月に掲載された味村先生の総説に便秘の分類についてまとめられています。
I.慢性便秘症の診断と治療
日本大腸肛門病学会雑誌2019 年 72 巻 10 号 p. 583-599

上記文献の表1ですね

器質性としては、
大腸がんなどの狭窄による器質性の便秘、狭窄はないけど直腸瘤(ポケットに便が残る)などによる器質性便排出障害など

機能性としては、
大腸通過遅延による排便回数減少、通過時間正常型の排便回数減少、硬便による排便困難、腹圧低下や骨盤底筋協調運動障害による機能性便排出障害など

ひとことで便秘といってもその病態はさまざまですね

図1の慢性便秘症の初期診療アルゴリズムによると、
警告徴候は
・原因が特定できない体重減少
・血便
・50歳以上で,過去 3 年以内に大腸検査を受けていない
→このような場合は内視鏡などの検査


便秘といえば食物繊維!!という印象がありますが、これは病態によって異なります。
大腸通過時間が正常なのに排便回数・排便量が少ない場合は、食物繊維不足が原因の場合が多いため食物繊維をとることで改善する一方で、大腸通過遅延型や便排出障害の場合には食物繊維を増やすとかえって悪化する場合もあるそうです。
(食物繊維摂取量が少ないために便秘症を呈している大腸通過正常型便秘症の患者は30~40%)

なるほど。勉強になりますね。

各薬剤の使い分けについては、
↓同雑誌の別ページにまとめられており、こちらも全文フリーですので、各薬剤の特徴を学ぶことができます。
II.慢性便秘症の治療 各論(新規薬剤について)
日本大腸肛門病学会雑誌2019 年 72 巻 10 号 p. 600-608


さて…と
便秘の勉強をしていたら、どうもトイレにいきたくなってきました…。
私はどちらかというとお腹が弱いのですッ!
市販で購入した整腸剤ビオ○○ルミンを飲まなくては!
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勉強会でお話ししてきました!

東京で開催された勉強会(株式会社sing主催)で15分だけお時間をいただいて、医療情報の拡大解釈をテーマとしたプチ講演をしてきました!

講演のメイン(フェスでいうところのヘッドライナー)は「薬の使い分け100」の著者である児島先生のご講演!
「ゆるネタ」ってこともあって、いろんなたとえ話を駆使していて、おもしろかったですね。
ところどころ笑いを取り入れてましたが、やっぱりニコラスケイジの擬似相関ネタ(Spurious Correlations)が一番ウケてた気がします。
あれは鉄板ネタですね^^

さて、自分は架空の健康食品の広告(宣伝データ)をネタにしました。
一部モザイクでちょっとだけご紹介。

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※注意! スリムニナールDXは実在しない商品です!万が一、今後同一名の商品が出ても(←ありえないと思うけど)、このスライドはすべて架空のものですッ

パワーポイントでスライドをつくって、スクリーンに映してお話しするっていうのが初めてだったのでいい経験になりました。社外でお話しするのも初めてでしたね。15人くらいの小規模な勉強会でしたが緊張しました汗
いざノートPCが設置された壇上に立つと、はじめてDJブースに立ってノートPCを使ってDJをやったときと似たような緊張感が駆け巡りましたッ(一緒にするなって話ですが)

そもそもスライドを作るのが初めてだったので、パワーポイントに詳しい同僚にいろいろ教わって必死こいてスライドをつくりました。絵や写真で表現できるものは、文字を減らしてビジュアルで見せたほうがいいとアドバイスをもらって、イラストを入れたりしてね。いらすとや最高!

あと、アニメーションっていうのでしょうか。
クリックするとポッと文字が表示されたりする機能も教わったので、新しいことを学んで嬉しくなってしまった子どものごとく調子にのって多用してたら、あとあとクリックする数が多すぎて、無駄に連打するというアホみたいなことに汗
クリックひとつで時間差で表示できるという機能があると児島先生に教わったので、今度つかってみます!

さて、社外でお話しさせていただくにあたって、課題が浮き彫りになりました。
それは時間配分です。
15分を目処に考えていたのですが、勉強会に向かう電車の中でシミュレーションをしていたら、何度やっても17~18分になってしまって汗汗
(あっ、もちろん声には出してませんよ。電車の中でしゃべりだしたらヤバい奴ですからね。)

パワーポイントは発表者ツールだと時間のカウントも出るって話だったので、それを参考に巻いて話そうと思ったのですが、一度しゃべりだしたら、時間を見ている余裕はなく、ひたすらしゃべりつづけてしまいました。
ふと気づけばPCの画面はほとんど見ないで、受講者の方々の表情を見ていましたね。
「うおっ、みんな俺を見ているぞ!」とビビりながら…。
DJをやっていたせいか、お客さんが食いついているかどうかが気になってしまうのでしょうね。
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百戦錬磨の薬剤師さんたちが学会とかでネタスライドをぶちこんで、SNSでウケたとかスベったとか話してるのにちょっと憧れていた自分としては自分も笑いをとりたいなぁ~と思っていたのですがどうだったのでしょうか。。。
ウケていたかスベっていたか参加者の方々に聞きたいところですが、自分の名誉のためにも聞かないほうがいい気もするのでやめておきましょう。

賛否あるかもしれませんが、同じ内容を伝えるなら笑いを交えてお話しした方が刺さるんじゃないかなぁ~と以前から思っていました。
別にふざければいいってわけじゃなくて、退屈させずに気持ちをグッと惹きつけて、いかに話に集中させるかっていう意味では軽く笑いを取り入れて興味を持ってもらうっていうのも大事なのかなと。そういう意味では自分も芸人さんみたいな話術が欲しいですね。芸人さんのプレゼン能力って圧倒的に高いなと思っています。自分ももっと場数を踏んで、人前でしゃべる訓練をしなくては(コミュ障の自分としては荷が重い…)。


さて、児島先生の株式会社singでは今後も定期的に勉強会を開催するそうです。
次回もお時間をいただいて、お話しする予定ですので、機会がありましたらご参加くださいませ~。

塩素系空間除菌製剤の安全性について

表題の件について、ちょっと気になったので自分用メモとしてまとめ。
(有効性については過去にも取り上げたかと思うので、蒸し返しません。その後もいろいろ報告は上がっているので取り上げるまでもないかと)


まずJ Stageで検索
→副作用報告は見つからず


自分のエバーノートを探索

No. 40 ウイルス除去と称されている製品による中毒 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0040.pdf
1歳児の誤飲事故によるメトヘモグロビン血症
誤飲→嘔吐あり→呼吸数24回/分→酸素投与後のSpO2は85~88%→気管挿管→PICU入室


公的機関の情報をチェック

2018年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000193024_00003.html
二酸化塩素除菌剤(設置タイプ)
50代女性:悪心、嘔吐、頭痛、眼の違和感


2017年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000193024_00002.html
二酸化塩素除菌剤(設置タイプ)
40代女性:咳込み、息苦しさ、悪心、倦怠感


2016年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000193024.html
二酸化塩素除菌剤(設置タイプ)
40代女性:喉の発赤、鼻づまり
5歳児:悪心、嘔吐


3年分の報告を見ましたが、ここの事例は一部で報告件数はもっと多いです


国民生活センターの資料はこちら
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20101111_1.pdf


日本医事新報社 No.4959 (2019年05月11日発行) P.57
市販の二酸化塩素製剤の殺菌効果と人体への安全性は? |Web医事新報|日本医事新報社
「長期間低濃度雰囲気での曝露に関する安全性の検証(毒性試験)は不安定で反応性の高いガスであるため,塩素ガスより毒性が高いとされて,世界的にみても安全性は確立されていません。曝露限界に関する基準も存在しません。」
だそうです。
首から下げる携帯型による化学火傷についても言及されていますね

それについては、こちら
消費者庁 平成25年2月18日
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/130218kouhyou_1.pdf


寝ぼけ眼で30~40分ほど調べましたが、眠くなってきたのでこれにて終了
安全性が確立されているとは言い難い印象ですね。
他にも副作用報告があがっているようでしたら教えてほしいです。

やはり誤飲がめちゃくちゃ怖いですね。
乳幼児がいるご家庭では使用を控えた方がいいのではないかと思いました。
(最近の製品は誤飲しないように容器が改善されているのかもしれませんが、気になる方は各自お調べくださいませ。もう…もう眠くて眠くて…zzz)