pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

ニコランジルのSR&MA(2018)

ニコランジル、在庫してますよね?調剤しますよね?
分3でバンバン処方されますよね?
油断すると欠品しますよね?
一包化連発されると、爪がヤラれますよね?
(小さい錠剤で、PTP包装のシートからプチッと取り出すのがちょっと困難で、大量にプチプチしていると爪が痛くなるのです)

ニコランジルは虚血性心疾患の方に処方されているかと思いますが、その有効性ってどうなんでしょうね?


先月、ニコランジルのSR&MAがでていました。
Nicorandil improves clinical outcomes in patients with stable angina pectoris requiring PCI: a systematic review and meta-analysis of 14 randomized... - PubMed - NCBI
Expert Rev Clin Pharmacol. 2018 Aug 21:1-11.PMID:30079778

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アブストしか読めないので、あくまで参考程度ということで。
この書き方ですと、対象はAMI(急性心筋梗塞)を起こした患者さんってわけではなさそうですね。
狭心症PCIを行った人たちを対象としたRCTを集めた模様。

詳細不明ですが、1つ1つのRCTの規模は100~200名くらいってことですかね。
あと、Control群はなんだったんだろう…。
やっぱSR&MAはフルテキスト読めないとなんともいえないという印象。
介入期間がどれくらいのものだったのかも知りたいところですね。

結語に述べられているとおり、ニコランジルのlong-term clinical effectはどうなんでしょうね~。


あと、過去にはこんなシステマティックレビューがあったようです。
Nicorandil in patients with acute myocardial infarction undergoing primary percutaneous coronary intervention: a systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI
PLoS One. 2013 Oct 22;8(10):e78231.PMID:24167609

パッと見、こちらはAMI(急性心筋梗塞)を起こした人が対象みたいです。

フルテキスト閲覧可能なので、ちらりと覗いてみると、
14RCT、1680名(1試験あたり、27~545名)

545名の試験を個別に読んでみたいところ…。読まないですけど。

7試験は冠動脈内注射、4試験は経口投与
その4試験てのも、メインはIVみたいですね。。。

こりゃあ、ニコランジル経口投与を長期継続する意義に直結するデータといえるのかどうか正直なところちょっとわからない…。

これは、いちばんn数の大きい試験はこの日本の試験J-WIND。参考までに。
Human atrial natriuretic peptide and nicorandil as adjuncts to reperfusion treatment for acute myocardial infarction (J-WIND): two randomised trials. - PubMed - NCBI
Lancet. 2007 Oct 27;370(9597):1483-93.PMID:17964349
研究デザインがちょっと自分が思ってたのとぜんぜん違うし、脱落率などいろいろと注意が必要みたいですね。経口ニコランジルは医師の裁量で、対照群にも入ってるみたいですし…。
なんか、よくわからんなぁ。

パワポで表まで作っておいてなんですが、2018年のSR&MA(PMID30079778)も解析した研究の介入内容をきちんと見ないといけませんね。フルテキスト有料なので見られないですけど。。


パブるといろいろでてきますが、長くなりそうなのでこのへんで。

背景知識がないとぜ~んぜん論文読めないですね。どう解釈したらいいんだぁ!ってなる…。
エビデンスエビデンス!てなるまえに、まずはその分野の基礎知識がないとちょっとついていけない…orz

そもそもこのニコランジルの錠剤って欧米でもつかってるんでしょうか?
アジアの研究ばっかり引っかかってきたのですが…。

さて、今回強く実感したのが、論文を読むときには、その分野の専門家を交えて抄読会したいなって。
自分は、研究デザインだとか試験そのもののチェックはやるので、その解釈は専門的知識のある人の意見を聞いてみたい。

だが、しかし…
薬局には分野ごとにズバ抜けた知識を持っている人がいない。。
そもそも論文に興味のある人がほとんどいない…。
the END

2型糖尿病患者 ミックスナッツvsマフィン (その他、ナッツの論文をいくつか) 

ナッツのRCTです。

スナック菓子をナッツ&味付け海苔に置き換えた自分としては、体重の変化がちょっと気になるので見てみましょう。ナッツはカロリー高いですしね。

Nuts as a replacement for carbohydrates in the diabetic diet: a reanalysis of a randomised controlled trial. - PubMed - NCBI
Diabetologia. 2018 Aug;61(8):1734-1747.PMID:29789878

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ご覧のとおり3群比較です。
RCTシート3群比較版、ここに完成(というほどおおげさなことではない)。

さっそくですが、マフィンってなんですか?
自分はパンとかドーナツとかほとんど食べないので、そもそもマフィンって何?状態。
ググって写真を見てみたら、ああ、こんな感じかぁ…となりました。

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焼き菓子みたいな感じのパンってことでOKですかね。
この渾身の作図を見ていただければ、想像がつくでしょう。
えっ?この図を見ても、なにがなんだかわからない??
そ、そんなはずは…。


まあ、どうでもいい話は置いといて、研究の概要ですが、こんな感じです。

論文に、プライマリアウトカムはHbA1cと書いてありますが、事前登録情報を見てみると、実は複数書いてあります。HbA1cとか、空腹時血糖値とか、空腹時インスリン値とか…。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6061153/table/Tab3/
へぇ~。血糖値は有意差無しですね。

あと、この手の試験は介入の内容はちゃんと見ておきたいところ。
服用中の薬はどうだったのか。。。

During the study, participants were asked not to change their oral glucose-lowering medication use.

との記述有り。
そうは言っても、低血糖があれば減量…的なことは書いてあります。
その事例はナッツフルドーズで1名のみだったとのこと。

そして、摂取総カロリーはどうだったのか?
うーん、見当たらず。どっかにありますかね。Total Energyでワード検索したんですが、見当たらず。ナッツ群では総カロリーのうちの脂質の割合が多くなっていたよ~みたいな記述が見つかります。
まあ、3群にわけてのナッツやマフィンのカロリーは同じ量なので、総カロリーは大きな差はないんでしょうね。

ナッツは脂質含有量が多いわりに体重増加は観察されなかったということですが、期間が短いような気もします。長期的にはどうなるんだろうって。

あっ、でもこんな記述が。

Forty-three per cent of the participants were obese (50/117, BMI>30 kg/m2) and wished to lose weight. They were informed that this was not a weight-loss study but were given advice on portion size and food intake to help them meet their body-weight objectives. All participants were advised to reduce total food intake since the supplements replaced approximately 24% of dietary energy, and to take the supplements with meals or as snacks, with a special emphasis on reducing dietary carbohydrate intake.

体重減少を望んでいた人たちってことですね。
食事制限は基本的にみんながんばったとみて良さそう。総カロリーの24%がナッツやマフィンに置き換えられているものの、全体の食事量は減らすよう指示され、とくに炭水化物を減らすようにしたらしい。


自分としては、ナッツの体重変化が気になってこの論文を読んだのですが、そもそもこの論文は血糖値がどうなるかを評価しているっぽいので、そもそも読む論文を間違えた。
ちなみに、ナッツ群で脂質がむしろ改善傾向だったりして、ナッツ無敵かよって…。まあ3ヶ月の試験なので長期的にどうなのかはまた別の研究結果を見ないと…て感じでしょうか。

まあそもそも、ナッツの体重変化に関しては、以前とりあげたNEJMのやつのとおり、そんなに心配しなくて良さそうですけどね。
ph-minimal.hatenablog.com

なんで、今回、ナッツとマフィンの論文を取り上げたのかっていうと、マフィンの落書きを載せたかっただけって気もしてきました…。
とりあえず、自分はひきつづきおやつとしてナッツは取り入れていこうと思っています。

だって、、、
Nut consumption and risk of cardiovascular disease, total cancer, all-cause and cause-specific mortality: a systematic review and dose-response met... - PubMed - NCBI
BMC Med. 2016 Dec 5;14(1):207.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5137221/table/Tab1/?report=objectonly
こんなことになってるし…
(冠動脈疾患、心血管疾患、がん、死亡…有意にリスク減少)


こんなのもあるし、、
A systematic review and meta-analysis of nut consumption and incident risk of CVD and all-cause mortality. - PubMed - NCBI
Br J Nutr. 2016 Jan 28;115(2):212-25.


NEJMも、、、
Association of nut consumption with total and cause-specific mortality. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2013 Nov 21;369(21):2001-11.
長生きが期待できる食品はやはりナッツなのか!?
3,038,853 person-years of follow-upで、
死亡率のハザード比が、、、
compared with those who did not, were 0.93 (95% confidence interval [CI], 0.90 to 0.96) for the consumption of nuts less than once per week, 0.89 (95% CI, 0.86 to 0.93) for once per week, 0.87 (95% CI, 0.83 to 0.90) for two to four times per week, 0.85 (95% CI, 0.79 to 0.91) for five or six times per week, and 0.80 (95% CI, 0.73 to 0.86) for seven or more times per week (P<0.001 for trend).
すげぇ。ちょっとずつですけど、食べる頻度が多くなるにつれて、リスク減。


NICEのガイドラインも、、
Cardiovascular disease: risk assessment and reduction, including lipid modification | Guidance and guidelines | NICE
やっぱナッツが推奨されてる…
★ただ、無塩のものと注意書きあり。


自分は減量はひと段落して、食事量は増えつつありますが、いまのところリバウンドの徴候はありません。今日もナッツを食べようかな。ちなみに自分のオススメはカシューナッツです。うまいですよねぇ。
NICEのガイドラインは無塩を進めてますが、自分はがっつり塩で味付けされてるやつが好きですね。

↓こういう無塩のものも人気みたいですけどね。ナッツそのものの味を楽しむって感じでしょうか。

うーん、そういうオトナな味わい方は自分には無理。
味の違いとかよくわからないし、コンビニでがっつり塩味がついているのを買っちゃいますね!しょっぱいほうが好き!(←塩分過多…)



追記(翌日)
余談ですが、自信作のマフィンの図が、「めんまの蒸しパン」とのご指摘を頂きました。
なんじゃそら?と思ってググッてみたら…

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のなかで出てきた蒸しパン!
そういえば、ありましたね。めんまの蒸しパン。
うん…、どうみてもめんまの蒸しパンだ…。激似だ…。

ねこ読め 第2話 「DHAで成績は良くなる?」  地域医療ジャーナル2018年9月号 vol.4

ねこでも読める医学論文、通称”ねこ読め"の第2話が公開されました。


今回もねこ薬剤師たちがドッタンバッタン大騒ぎしますので、よろしくお願い致します。


と、こ、ろ、で、
時間ってどっかに売ってないですかね?
時間が欲しい。
休みも欲しい。
お金も欲しい。
ぜんぶ欲しい。

マルチタスクのお忙しい先生方はどうやって時間のマネジメントをしているんだろう。
時間増幅みたいなスタンド能力があるんでしょうか…。


ハッ!
も、もしかして…ゴクリ
自分が仕事が遅いだけ?????

………。

で、ですよね〜〜涙