pharmacist's record

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【ダイエット】○○を食べると体重が増える/減る(NEJM2011)

ふたたび永遠のテーマ「ダイエット」です。

体重を減らそうとしている我が同胞に朗報(かもしれない)!
NEJMから参考になりそうな観察研究が発表されています。5年以上前の文献なので論文の賞味期限は切れているのかもしれませんが、"贅肉"という時代を超越した魔王と戦っている我々にとっては時の流れなど関係ない!賞味期限切れだろうとおなかを下してしまうことなどなく、どんな古い情報をもとりこんで、魔王と戦う武器にするチカラがあるのです!

Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2011 Jun 23;364(25):2392-404. PMID:21696306

3つのコホート(米国)からなる観察研究です
対象者は、「慢性疾患なし」「ベースライン時には肥満なし(うらやましい!)」
総計12万人超

「ライフスタイルの変化」と「体重の変化」を4年間のインターバルで評価・分析しています。

3つのコホートの患者背景は、
2つが平均50歳くらい、1つはもう少し若くて平均37歳
平均BMIは3つとも23くらいです

さて、こまかいところはいい!

結果をみましょう。
「○○の食事量が増えると、体重はどう変化したか」という興味深さたるや海のごとし!そんなデータがTable2に!
PubMed Central, Table 2: N Engl J Med. 2011 Jun 23; 364(25): 2392–2404. doi: 10.1056/NEJMoa1014296
右側が、年齢、ベースライン時のBMI、睡眠時間、身体活動、アルコール、テレビ視聴、喫煙などさまざまな因子を調整したデータとなります。

体重変化の数値がポンド(ld)で記載されているので、ざっくりとkgに直してまとめると、

食品 体重変化
ナッツ類 -0.26kg
果物 -0.22kg
野菜 -0.1kg
低脂肪牛乳、スキムミルク脱脂粉乳 +0.03kg
牛乳 -0.03kg
ヨーグルト -0.37kg
チーズ +0.01kg
バター +0.14kg
ポテトチップス +0.77kg
フライドポテト +1.52kg
ポテト(Boiled, baked, or mashed ) +0.26kg
砂糖入りソフトドリンク +0.45kg
果汁100%のジュース +0.14kg
ダイエットソーダ -0.05kg
スイーツ、デザート +0.19kg
加工肉 +0.42kg
未加工の赤肉 +0.43kg
揚げ物(自宅で) +0.16kg
Whole grains  全粒穀物(精製されてない) -0.17kg
Refined grains 精製された穀物 +0.18kg

(カラーは有意差あり)

ざっとこんな感じです。

ポンドの単位でみると、おおっ!と思いましたが、kgに直して冷静にみてみると、まあ微々たる差ですね。
だが、しかし…、フライドポテトおそるべし!ポテチおそるべし!

まあこれは観察研究なので因果を示すものとは限りません。上記のような食品の摂取量が増えた方々の体重はこうなった、というだけのことです。各食品の摂取量が増えたことにより、他の食事量が変化しているはずなので、果物を貪り食ったからといって痩せるとは限りません。果物を多くとるようになった方々が(おそらく、他の高カロリー食品が減り)痩せている傾向にあったということです。

果物を摂取しても血糖値は上がりにくいというのはホント? - pharmacist's record
↑これを思い出しますね。

一方、果汁100%のジュースを多くとるようになった人は体重が増えてるのがおもしろいですね。贅肉と戦っている我々としては笑い事ではないですが…(なぜ複数形で書いたのか…?贅肉と戦うもの、皆、仲間なり!)。

そして、Whole grainsとかRefined grainsの件。
なんだこの英語はと思って、調べたらGrainsというのは穀物という意味。

これはもしや!と思って、上記URLの記事でとりあげた食事エビデンス本の「究極の食事」をひっぱりだしました。
こ白い炭水化物(精製されてる;Refined)と茶色い炭水化物(精製されてない;Whole)のことですね!
へぇ~、体重変化は間逆の結果になっているということですか~。

あ、あれ!!!?

ていうか、今回、意気揚々ととりあげたこのNEJMの論文、「究極の食事」に載ってるんですけど…。
そうですよね。食事エビデンス本で、この論文を取り扱わないわけがない…。

別件でナッツに関する論文を手当たり次第漁っていてこのNEJMの論文を見つけて、こりゃあおもしろいぜ!と思ったのですが、購入済みの本に載っている論文でしたか…。積ん読を消化しなさいという啓示でしょうか。


この論文は食生活以外の生活習慣との比較も載っているので、そちらもおさえておきましょう。

・睡眠時間は、6時間未満や8時間以上と比べると、6~8時間の方が痩せている傾向にある(-0.15kgくらい)
・テレビ視聴時間が1日あたり1時間増えるごとに、0.15kgくらい太る
・タバコについて
過去も現在も喫煙しない人と比べて、Current smoker, changed to former smoker(禁煙した人)は、2.3kg太っている
過去も現在も喫煙しない人と比べて、Former smoker, changed to current smoker(喫煙を再開した人)は1.3kg痩せている
過去も現在も喫煙しない人と比べて、Never smoked, changed to current smoker(喫煙しはじめた人)は0.15kgくらい太っているが有意差なし

タバコの件、興味深いですが、評価が難しいですね。
タバコを再開した人が痩せていますが、タバコが体重減少にいいと言えるかは微妙。体に悪いと思っていったん禁煙してFormer smokerとなっていた人が、タバコを再開するときって、まあたいていメンタルぶっこわれてるときです。そりゃあ食欲がないときですよ。まあタバコ自体で食欲落ちたりしますが(個人の経験)、生活習慣変更のさらに奥にある背景にも目を向けたほうがよいと思います。


さて、いろいろと書き連ねましたが、みなさまの贅肉との戦いに活用していただければ幸いです!

個人的にやっぱりポテトチップスを絶つのは大事だと思いますね。ベルトの穴3つ分ほど痩せることができた私はアホみたいに食べていたスナック菓子を完全に絶つことで、贅肉という魔王を討伐したわけですから。まあ、それだけが原因ではないと思いますけどね。なんだかんだで総摂取量をがっつり減らしましたから…(我慢せずして勝利はない)。

まあ、自分も魔王を倒したからといって、魔王の残党は生き残っているので、もう少し戦いを続けようと思います!
ああー、そろそろ腹筋とかもちゃんとやらなくちゃ…。