pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止するときの漸減の目安は? 地域医療ジャーナル 2017年7月号 vol.3

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地域医療ジャーナル7月号です。

私はベンゾジアゼピン(BZD)に焦点を当てました。
依存症に関するPMDAの通知が記憶に新しいことかと思います。
NEJMのレビューも出たことですし、タイムリーですよね。

BZDは突然中止するのではなく漸減するのが望ましいとされていますが漸減の目安はあるのでしょうか?

このような素朴な疑問について調べてみましたので、ご興味がある方はぜひご覧ください。


今回も勉強になる記事がたくさんありますが、先日東京で行われたワークショップのご報告も。

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"みんなで愉しく"ってところが素敵ですね。

私は仕事なので参加できずでしたが当日はとても盛り上がったようです!

論文を読むようなワークショップは一度しか行ったことがないのですが、みんなで議論することで、より理解が深まるのでしょうね。

個人的にはワークショップというより、身近なところでゆる~いノリの論文抄読会をやってみたいところです(堅苦しいのはイヤ!!)。
移動に時間をかけるのはもったいないので(体力ももたない…)、近場でそういう場があるといいですね。

抗菌薬の臓器移行性って?

NEJMのカナグリフロジンが話題になっていますね。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1611925

2つのRCTを統合したその意図とはなんでしょうね?まあなんとなくお察しするところではありますが…。

個人的にはやっぱ性器感染症は増える傾向にあるな~と思いました。その一方で尿路感染症は増えていない。
EMPA-REGもそうだったので、この傾向はSGLT阻害薬に共通のものと認識して良さそうだなと思いました。

例の下肢切断については…、うーん、どうでしょうね。
NNH計算すると、そこそこのインパクト。。。
国内は足病変は欧米と比べて少ない気もしますが、切断ってめちゃくちゃ強烈なアウトカムですよね。


さて、SGLTはこのあたりにしておいて、個人的に「へぇ~」と思った抗菌薬の話を取り上げてみたいと思います。
(あくまで個人的に、です。感染症詳しい先生方にとっては常識なのでスルーしてくださいね!)

抗菌薬の選択においては、原因微生物の感受性だけでなく、感染臓器への薬の移行性も大事ですよね。

ちょっと前立腺炎について取り上げてみましょう。

前立腺への移行性はどうでしょうか?

Penetration of antimicrobial agents into the prostate. - PubMed - NCBI
Chemotherapy. 2003 Dec;49(6):269-79.

「βラクタムは前立腺への移行性が悪い。」
「テトラサイクリン、マクロライドキノロンなどは前立腺への移行性が良い。」

とのことです。


では、βラクタムを前立腺炎に使用することはないのかというとそういうわけでもないようです。

Treatment of bacterial prostatitis. - PubMed - NCBI
Clin Infect Dis. 2010 Jun 15;50(12):1641-52.

急性細菌性前立腺炎の抗菌療法の項目

「急性の炎症を起こしている前立腺には、ほとんどの抗菌薬が移行する。」とのこと。


サンフォードを見てみると、急性前立腺炎の治療薬としてセファロスポリンの薬の名が挙がっている一方で、慢性前立腺炎ではセファロスポリンの名はありません。
おお、やはり炎症の急性期ならβラクタムも有効なんですね。炎症があると移行性がよくなるのは、血管透過性の違いなどによるものでしょうか?


今日、学んだこと
「同じ臓器でも炎症の有無によって抗菌薬の移行性が異なる」


どうも久しぶりにブログを書くと、ノリが掴みにくいですね。いつもこんな感じだったかなぁ?
今後はなるべく更新頻度を増やそうかなと思ってますが、なるべく短い内容でゆる~く続けて生きたい今日このごろ。
がっつりとしたレビューは地域医療ジャーナルのほうをご覧ください~。

のどの痛みを軽減する治療法はありますか? 地域医療ジャーナル 2017年6月号 vol.3

cmj.publishers.fm

地域医療ジャーナル6月号が出ました!

今回はテーマをがらりとかえて、咽頭痛についてレビューしました。

何を取り上げたかというと、

・NSAIDs/アセトアミノフェン
・トラネキサム酸
・アズレンスルホン酸ナトリウム
・デカリニウム塩化物トローチ
・桔梗湯
・Throat Coat®
亜鉛
ステロイド

です!

またまた長くなってしまい前編と後編に分けました。

トローチやうがい薬のような、日頃から当たり前のように取り扱っている薬をあらためて調べてみるのも面白いですね。

薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとして、抗微生物薬適正使用の手引き 第一版が公表され、かぜに抗菌薬を処方するのはどうなの!?という声はかなり活発になってきていますが、かぜにデカリニウムトローチはいかがなものか!?という声はあまり聞かないように思います。トローチなんて別にどっちでもいいよという感じなのかもしれませんが、薬理作用から考えれば、デカリニウムは抗菌作用ですからね。ウイルスに対しては…。

と、まあそんな感じでいろいろ調べたことや考えたことを書き連ねさせて頂きましたのでご興味があれば、リンク先からどうぞ~。
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