pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

頭が痛いので、いろいろパブってみた

ググるって言葉、凄いですよね。自分はGoogleよりYahoo派なので、厳密にはググってはいないのですが、インターネットで検索する、いわゆる「ググる」という言葉はインターネットを使う人みんなに知れ渡った言葉ではないかと思います。

医学論文検索をもっとポピュラーなものにしたいという気持ちもあり、pubmedで論文を検索することを「パブる」と称して、SNSでちょくちょく使っていたのですが、流行る気配はなく、このまま廃れてしまいそうな気がしているので、論文をお読みになる方々、もしよろしかったら使って頂ければと思います。え?ダサい?じゃあ、カッコよく英語でpubるにしましょうか。まあ、どっちでもいいんですけど、論文検索することが当たり前になるための一環として広まればいいな、なんて思ったり。


さて、最近、頭が痛くなることがあります。

3~4年前にもしばしば頭痛に苛まれていたことがあって、気になって医療機関を受診したら、「肩が凝っているねぇ」とチザニジンを処方されました。
直接、Drから言われたわけではないですが、おそらく緊張型頭痛と判断されたのでしょう。
肩凝りとの関連といえば緊張型頭痛ですよね(ちなみに本人としては肩凝りの自覚はまったく無し)。

その後、しばらく調子がよかったのですが、先日、ちょっとキツめの頭痛があったんです。


痛みを自覚したのは夕方16時ごろ。

どんな頭痛か?
→締め付けられるような重~い感じ。拍動性ではない。痛みの波はほとんどなく、強度は2~3/10くらい。業務を続けられないというほどではないが、できれば休憩したい、という程度。

いつから?
→午後から。いつにまにか痛みを感じていた(←突発ではない)。時間の経過に伴う増悪はほとんどなく、夜まで続いた。21時ごろに30分ほど仮眠したあと、痛みが少し軽減した。翌朝には痛みは感じなくなっていた。

痛む場所は?
→両側のこめかみあたりを中心に全体的に痛い。後頭部にはあまり痛みを感じなかった。
(いわゆる孫悟空の頭の輪のあたり)

随伴症状は?
→無し。吐き気も発熱も無く、ただただ家に帰りたいという症状(願望)のみ。


まあざっとこんなところです。
やはり緊張型頭痛ですかねぇ。

特に薬は飲まずに放置したのですが、薬を使うとしたらどんな薬でしょう?


まず前述のチザニジン。
Tizanidine in chronic tension-type headache: a placebo controlled double-blind cross-over study. - PubMed - NCBI
Headache. 1992 Nov;32(10):509-13.
PMID:1468911
研究デザイン:randomized, double-blind and cross-over study
P:chronic tension-type headache 20~59歳の女性37名。頭痛歴7ヶ月~30年(median 5年)
E:チザニジン1日3回 開始6mg/day→治療効果に応じて、18mg/dayまで増量可
C:プラセボ
O:visual analogue scale, verbal rating scale, number of days free of headache, number of analgesics needed, and the dose of trial medication needed.
治療期間6週(wash-out2週間)

プラセボより有効だったとのことですが、アブストにはプライマリの明記がないですし、どの程度有効だったかの記載がありません。
副作用は軽度で、眠気と口渇drowsiness and dry mouth


6週間連日服用ですので、頭が痛いときに頓服的な飲み方をして効果があるのかは不明。
この研究は全員女性ですが、自分は男性。
あとチザニジンの量が国内よりはるかに多いですね。
この論文をもとに、チザニジンを飲もう!という気分にはならないかな…。


こちらも予防的投与。
Chronic daily headache prophylaxis with tizanidine: a double-blind, placebo-controlled, multicenter outcome study. - PubMed - NCBI
Headache. 2002 Jun;42(6):470-82.
PMID:12167135

P:chronic daily headache (chronic migraine, migrainous headache, or tension-type headache).
(↑緊張型頭痛だけでなく、片頭痛も含まれている。片頭痛のほうが多い)
E:チザニジン 漸増にて最大24mgまで(平均18mg 中央値20mg)
C:プラセボ
O:Overall headache index ([headache days x average intensity x duration in hours]/28 days) was the primary end point.
頭痛日数×平均強度×持続時間/28日間

アブストの結果を見ると、プラセボより優れていたとのこと
改善率を見るとまあまあ効いてますね。

有害事象は、これだけの用量を飲んでいるからか、
眠気47%、浮動性めまい24%、口渇23%、asthenia(無力症)19%
しかし、こちら、アブストには介入群とプラセボでの比較データがありません…

ほとんどが片頭痛患者さんですが、筋肉をほぐすチザニジンに予防効果があるんでしょうか…。用量が多いせいか、眠くなって仕事にならなくなりそうな気もします。そもそも自分は片頭痛ではないと思うので、この論文を元にどうこうってのはないですね。

どうも予防的投与はちょっと気が進まない感じです。


やはり頓服として使うなら鎮痛薬でしょうか
アセトアミノフェンのコクランレビューです
Paracetamol (acetaminophen) for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jun 16;(6):CD011889
PMID:27306653

P:緊張型頭痛(急性期)、18歳以上(片頭痛は除外)
E:アセトアミノフェン
C:プラセボor他の治療薬
O:有効性と安全性

アセトアミノフェン1000mg服用2時間後でpain freeのNNTが22(1時間後ではプラセボと有意差なし)
pain-free or mild painをアウトカムとすると服用2時間後のNNTが10

データが限られてるが500mg~650mgではプラセボに対して優越性を示せず(!???)

paracetamol 1000 mg was not different from either ketoprofen 25 mg or ibuprofen 400 mg (low quality evidence).
となってますが、ケトプロフェンの内服なんて日本にありましたっけ?あまり馴染みがないですね。
イブプロフェンは市販薬にもよく配合されていますが、アセトアミノフェン1000mgとイブプロフェン400mgはnot differentとのこと(ちなみに直接比較試験もあり。Nonprescription ibuprofen and acetaminophen in the treatment of tension-type headache. - PubMed - NCBIJ Clin Pharmacol. 1996 Dec;36(12):1120-5.PMID9013368 こちらではイブプロフェンのほうが有効だったとのこと)

頭痛にはアセトアミフェンというイメージがありましたが、そうでもないなぁという印象。500mg飲んでもプラセボとあまり差がないのかもしれません。びっくりですねぇ。


ではアセトアミノフェンと同じくらい国内で有名な薬、イブプロフェンをみてみましょう
Ibuprofen for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 31;(7):CD011474.
こちらも似たような感じですね。片頭痛は除外

イブプロフェン400mg服用2時間後でpain freeのNNTが14(イブプロフェンもやっぱり1時間後では有意差なし)

1回400mgってことで、やはり国内での使用より多めでしょうか。

アセトアミノフェンイブプロフェンも投与1時間後ではプラセボと差がないということで2時間くらいは効果が出るのに時間がかかるとみて良さそうですね。

一応、アスピリンのコクランレビューも貼っておきますが、データ不足でしょうか。スルーしましょう。
Aspirin for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 13;1:CD011888.


服用するならイブプロフェンアセトアミノフェンか…というところですが、2時間後の頭痛消失のNNTは10を超えてます。そこまで痛みが強くないなら飲まなくてもいいかなという気も。
実際、この日、頭が痛いなぁと思って業務のちょっとした合間にパパッとコクランレビューのアブストを見て、飲まなくてもいいか~って思いました。まあ、我慢できる程度の痛みだったとも言えますね。


ただ、このような頭痛が頻発するようだと、嫌ですよね…。
そこで、ふと思ったのが、最初に詳細を述べた頭痛が生じた日は、前日の就寝時間が5時くらいだったので寝不足がいけなかったのかもしれないなと…。仮眠にて少し軽減したわけですし。

案の定、あーだこーだ調べているうちに(このブログは何日かに分けて書いているのです)、また1~2/10くらいの頭痛が発生…。その前日も夜更かし気味でした。


では、頭痛と睡眠の関連を調べてみましょう。

とりあえず緊張型頭痛の総説を探してみますと、AAFPのレビューがありました
Tension-type headache. - PubMed - NCBI
Am Fam Physician. 2002 Sep 1;66(5):797-804.
PMID:12322770
sleepというワードは見つからず…。

参考まっでに診断に関する記述がありますね。片頭痛との鑑別って感じですが。
A
・At least 10 previous headache episodes fulfilling criteria B through D; number of days with such headaches: less than 180 per year or 15 per month
B
・Headaches lasting from 30 minutes to 7 days
C
・Pressing or tightening (nonpulsating) quality
・Mild to moderate intensity (nonprohibitive)
・Bilateral location
・No aggravation from walking stairs or similar routine activities
D
・No nausea or vomiting
・Photophobia and phonophobia absent, or only one is present
なるほど。自分の頭痛と合致してますね。

はい、脱線しましたので睡眠と頭痛についてパブりましょう。

Stress and sleep duration predict headache severity in chronic headache sufferers. - PubMed - NCBI
Pain. 2012 Dec;153(12):2432-40
PMID:23073072
観察研究の再分析
対象:patients between 18 and 70 years of age who had at least 4 headache days per month and had stable headache characteristics for 1 year or longer
(二次性頭痛は除外。片頭痛は含まれる)

アウトカム:1日4回、頭痛の重症度を0~10点で評価
Four times a day for 28 days, patients recorded headache severity on a 0 to 10 scale (0= no headache, 10=extremely painful) using a provided diary

ストレスと睡眠時間との関連について分析

むむむ。
詳細は省きますが、睡眠不足(4時間未満)が2日つづくと、頭痛の増悪との関連が強いとされています。
毎日、約8時間睡眠では、頭痛の強度は低くなるとのこと。


Sleep deprivation headache. - PubMed - NCBI
Cephalalgia. 1990 Aug;10(4):157-60.
PMID:2245462
こちらはアブストしか閲覧できない(しかも短い)古い文献ですが、
睡眠消失により引き起こされる頭痛があると…。それは心因性の緊張型頭痛であると…。
まさに自分のことじゃないか、と思いました。


こちらはもうタイトルになっちゃってます。sleep-related headacheとそのマネジメント
Sleep-related headache and its management. - PubMed - NCBI
Curr Treat Options Neurol. 2013 Dec;15(6):704-22
PMID:24132786
こちらは片頭痛についても述べられており、片頭痛は睡眠不足も睡眠過多もトリガーになると。

あとはobstructive sleep apnea(閉塞性睡眠時無呼吸。syndromeを最後につけて、OSASとか略されたりします)について述べられています。
ただ、この場合は朝の頭痛ですよねえ。自分の場合は朝に頭が痛くなることはほぼないですね。いつも午後~夕方からです。
そして、OSASってことでCPAPの話題もでてきました。巷で話題のPPAPとは別物です。

Sleep and headache. - PubMed - NCBI
Curr Treat Options Neurol. 2010 Jan;12(1):1-15.
PMID:20842485
OSASの場合、CPAPによる治療で、頭痛が改善。とのこと
慢性緊張型頭痛においては、睡眠の管理を、みたいなことが書かれています。


ふむ。
やはり、自分の頭痛は、睡眠不足がトリガーになっている可能性がありそうな気がしてきました!

自分なりにいろいろとパブってみた結果、
鎮痛薬やチザニジンの服用はちょっと置いといて、まずは睡眠時間の確保がベストな対策だという結論に至りました。


そういえば!!
ふと思ったのですが、夜更かしをした日って何をしていたかというと、たいていブログを書いているような…(もしくは論文を読んだり)。
これはもう本末転倒ですね。
はやく寝ましょう~。

関連記事
睡眠をとっているのに、日中眠い? 睡眠時無呼吸症候群 - pharmacist's record

感動の涙を流すことでストレスが解消されますか? 地域医療ジャーナル 2017年1月号 vol.3

みなさま、仕事納めましたか?

12月は忙しかったですね~(とくに後半)。
私は正月休みに突入しましたが、燃え尽きて抜け殻と化し、脱皮する気配もなく、絶賛冬眠中です。

やりたいことはいろいろあるのですが、抜け殻ですからね。なにもできないのです。
脱皮するのは来年の2月くらいかなぁ。

さて、地域医療ジャーナルが発行されました。
今月は豪華ですね。
なんと、名郷先生登場です。

cmj.publishers.fm

名郷先生「日本の専門医制度は死んだ」

タイトルがすごいです。

専門医制度のことは自分にはよくわからないのですが、薬剤師にとっては“認定薬剤師”という制度に対してさまざまな意見がありそうですね。まあ、それは置いといて…汗

まず自分がなにを連想したかというと、
セックスピストルズ/PILのジョン・ライドンの「ロックは死んだ」という発言です。

また音楽の話かよ、と呆れられてしまうかもしれませんが、
○○は死んだという言い回しについて自分が感じるのは、
本当に○○のことが嫌いでどうなっても知ったことか!と思っていたら「○○は死んだ」という表現は使わないんじゃないかなと。

ジョンはロックが好きで自分自身もピストルズで有名になり、だけど当時の状況が気に入らなくてそう発言したんだと思います。好きだったものがなんかつまらなくなってる、と。もっとおもしろくしたい。だから過激な言葉をメディアに放ったのです。

わかったようなことを言うな、と怒られるかもしれませんが、
名郷先生も日本の医療を変えたいという強い想いをお持ちだからこそ、変えられない/変わらないものに対して“死んだ”という過激な表現をお使いになったのかなと思いました。


「変える/Change」とは
オバマ大統領がよく用いた言葉だったかもしれませんが、Changeと聞いて真っ先に思い浮かぶのは去年亡くなったDavid Bowieですね。曲のタイトルでもChangeという曲がありましたが、確立したスタイルを壊して自らを変貌させていく生き様は凄いなぁと。

あっ。また脱線しました。
音楽不足で禁断症状が出ているのかもしれません。

話を戻すと、
日本の医療は"変わって"いるんでしょうか?

若輩者の自分にはよくわからないのですが、ディオバン事件のようなターニングポイントといえそうな出来事を経ても、あまり"変わった"ようには思えません。

ここ2年ほどで論文を読んだりするようになって、自分自身は変わったように思っているのですが、そんなわずかな変化がまわりに影響を与えているかというとまったくもって影響ゼロ。まあそんなものです。
来年はどうでしょう。
この小波のような自分の内面に起こったわずかな変化がまわりに伝わるでしょうか?
今年やったことを繰り返してもなにも変わらないでしょうね。
さて、来年はどうしましょうか…。

あ、そうそう。
自分の記事について紹介するのを忘れていました。
今回は趣向を変えて、涙について"論活"(※)しました。
「泣く」てなんなんでしょうね。泣くことでスカッとしたりすることもありませんか?
自分はその傾向にあるので、泣くことで癒しが得られるのかどうか、科学的根拠をもとに論考してみました。
コーヒーブレイク的な感じでお読みいただければと思います。
では、よいお年を。

(※詳細は本文をご覧ください)

各種NOACの出血リスクって結局どうなってんの?

本日12月18日は薬ゼミの薬剤師生涯学習講座「みんなで考えるポリファーマシー」が行われ、大盛況だったようですね。
東京で行われたようなのですが、Live配信にて全国各地で開催され、活発な議論が繰り広げられたようです。

さて、自分は何をしていたかというと、美女がサメに襲われる映画を観ながら、ウトウトと惰眠を貪っておりました!
ただいま、夕方16時、ようやく、おはようございまーす!という感じで、身体活動を開始しました。

いやあ、サメって怖いですよねぇ。
自分は通算100回以上サメに襲われています。
「夢の中で」ですが…。

夢というのは、なぜこうも悪い夢ばかりなのでしょう。
ゾンビに襲われたり、サメに喰われたり、Drに怒られたり(←これがダントツで怖い!)


ふむ…
最近、どうも文章を打とうとしてもすぐに脱線してしまい真面目なことが書けなくなってきました。
性根が真面目ではないので自然な経過とも言えます。
背伸びしたところでバレるわけです。


さて本題です。

(さきほどの映画)サメに襲われ、脚を噛まれて鮮血が流れていました(本題って、結局サメかい!)

ここで「NOACとか飲んでたら止血しにくいんだろうなぁ…」とか思ってしまい、映画から現実に引きずりおろされてしまい…
流血を見て、違う意味で嫌な気分になりました。

というわけでNOACによる出血リスクです(本当の主題はこれ!)。

今年はNOAC関連の論文が続々と発表されたように思います。


まずは、こちら。6月発表
Effectiveness and Safety of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban Versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
J Am Heart Assoc. 2016 Jun 13;5(6).
米国の保険データベースを使用した後ろ向きコホート
P:NVAF
E:NOAC(apixaban, dabigatran, rivaroxaban)
C:ワーファリン
O:有効性(脳卒中や全身性塞栓症)と安全性(大出血)

apixaban versus warfarin (n=15 390)
・stroke or systemic embolism:HR 0.67, 95% CI 0.46-0.98, P=0.04
・major bleeding:HR 0.45, 95% CI 0.34-0.59, P<0.001

dabigatran versus warfarin (n=28 614)
・stroke or systemic embolism:HR 0.98, 95% CI 0.76-1.26, P=0.98
・major bleeding:HR0.79, 95% CI 0.67-0.94, P<0.01

rivaroxaban versus warfarin (n=32 350).
・stroke or systemic embolism:HR 0.93, 95% CI 0.72-1.19, P=0.56
・major bleeding:HR 1.04, 95% CI 0.90-1.20, P=0.60


パッと見、ワーファリン不利な感じに見えますが、ワーファリン群のTTRが低い気もします
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4937291/table/jah31563-tbl-0011/
治療域を超えてしまっている例もあり、そのようなケースで大出血が起きたのかもしれません。

リアルワールドではINRのコントロールが難しくてコントロール不良による出血事例があるのだからやはりNOACのほうがいいのだ!という説につながるのかもしれません。
逆に言えば、ずっと良好にコントロールできているなら、無理してNOACに変えなくてもいいのでは?という気もしてしまいますが。。



次、8月
Real-world comparison of major bleeding risk among non-valvular atrial fibrillation patients initiated on apixaban, dabigatran, rivaroxaban, or war... - PubMed - NCBI
Thromb Haemost. 2016 Oct 28;116(5):975-986.
アメリカのThe MarketScan®のデータを用いた後ろ向きコホート
P:NVAF patients aged ≥18 years newly prescribed an oral anticoagulant
E:NOAC[7,438 (16.4 %) initiated apixaban, 17,801 (39.2 %) initiated rivaroxaban, and 4,661 (10.3 %) initiated dabigatran]
C:ワルファリン[15,461 (34.1 %)]
O:Major bleeding was defined as bleeding requiring hospitalisation.

<結果>
vsワーファリン
apixaban (HR: 0.53; 95 % CI: 0.39-0.71)
dabigatran (HR: 0.69; 95 % CI: 0.50-0.96)
rivaroxaban (HR: 0.98; 95 % CI: 0.83-1.17)

注意点として、apixaban 5 mg BID,rivaroxaban 20 mg QD, or dabigatran 150 mg BID
アメリカではリバーロキサバンは1日20mgです。

タイトルにリアルワールドとありますが、日本とは異なるリアルワールドのデータなのでその点は注意。

ちなみに資金提供はBristol-Myers Squibb and Pfizer。アピキサバンのメーカーですね。


次、11月、JAMA Intern Medより
Stroke, Bleeding, and Mortality Risks in Elderly Medicare Beneficiaries Treated With Dabigatran or Rivaroxaban for Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
JAMA Intern Med. 2016 Nov 1;176(11):1662-1671.
後ろ向きコホート
P:118 891 patients with nonvalvular AF who were 65 years or older
E:リバーロキサバン20mgを1日1回
C:ダビガトラン150mgを1日2回(with dabigatran as reference)
O:thromboembolic stroke脳血栓塞栓症, intracranial hemorrhage (ICH頭蓋内出血), major extracranial bleeding頭蓋外出血 including major gastrointestinal bleeding消化管出血, and mortality

出血リスクはリバーロキサバンのほうが高いという結果

なんかリバーロ不利な文献が続きますね…。
COIはどうだったんでしょう?オープンアクセスじゃないのでわかりませんが。


12月、CHESTより
Direct Comparison of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban for Effectiveness and Safety in Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
Chest. 2016 Dec;150(6):1302-1312
こちらも後ろ向きの研究

P:NVAF非弁膜性心房細動
E/C:各種NOAC(アピキサバン、リバーロキサバン、ダビガトラン)
O:stroke and systemic embolism (effectiveness) and major bleeding (safety)

<結果>
rivaroxaban vs dabigatran
stroke or systemic embolism:HR1.00(95% CI, 0.75-1.32)
major bleeding:HR1.30(95% CI, 1.10-1.53)
intracranial bleeding:HR1.79(95% CI, 1.12-2.86)

apixaban vs dabigatran
stroke or systemic embolism:HR0.82(95% CI, 0.51-1.31)
major bleeding:HR0.50(95% CI, 0.36-0.70)

apixaban vs rivaroxaban
stroke or systemic embolism:HR1.05(95% CI, 0.64-1.72)
major bleeding:HR0.39(95% CI, 0.28-0.54)

有効性にあまり差は無いが、出血リスクはアピキサバンが優れているという内容。
これもアメリカのデータなのでリバーロキサバンは20mgかと思われます。



最後にネットワークメタ!
Systematic review and network meta-analysis of stroke prevention treatments in patients with atrial fibrillation. - PubMed - NCBI
Clin Pharmacol. 2016 Aug 11;8:93-107
RCTのネットワークメタアナリシス
P:AF patients(any age)
E/C:placebo, aspirin, aspirin and clopidogrel combination therapy, adjusted-dose warfarin (target international normalized ratio 2.0–3.0), dabigatran, rivaroxaban, apixaban, and edoxaban
O:all stroke, ischemic stroke, myocardial infarction, overall mortality, major bleeding, and intracranial hemorrhage
COI:なし

言語制限は?:英語のみ
未出版の文献は?:専門家にコンサルトしている
ダブった研究は?:除外している
検索ワードは?:atrial fibrillation, warfarin, phenprocoumon, acenocoumarol, aspirin, apixaban, rivaroxaban, dabigatran, clopidogrel, edoxaban
詳細はサプリメンタリに。
評価はバイアスは?:スクリーニングは一人、再評価は二人、意見の不一致があればディスカッションと資料のレビューで解決
元論文バイアスは?:コクランのツールを使用。sequence generation, allocation concealment, blinding, incomplete outcome data, and selective reportingで評価

<結果>
Fig3がわかりやすいですね。
https://www.dovepress.com/cr_data/article_fulltext/s105000/105165/img/CPAA_105165_F003.jpg
ランキングされてます。
両方のグラフが1に近いほうが有効性安全性ともに優れている、ということになります。



さて、ダーーーッ!と流し読みしましたが(誤字脱字誤訳などご勘弁ください)、なんとなくアピキサバンが攻守ともに優れているような印象はありますね。
今後、エドキサバンのデータも揃ってきたら4種比較の論文も増えてくるかもしれません。

なんかこう世の中、NOAC,NOAC,NOAC,NOAC!!!!という感じで、ワーファリン肩身狭いですね。
腎機能低下例など特殊な患者さんにおいては、INRでモニタリングできるのは有用なんじゃないかなぁという気もしますが、実際のところどうなんでしょうねぇ。

個人的には、ワーファリンの強みとしてもうひとつ。

NOACは飲むのをサボってもバレないが、ワーファリンは飲むのをサボればINRでバレる
(ワーファリンも次回受診前の一定期間だけちゃんと飲む、みたいなことをされたらお手上げかもしれませんが…)

この患者さん、ちゃんと薬を飲んでくれるか怪しいぞ、という場合は、服薬状況のモニタリングができるワーファリンをチョイスするほうがいいかもしれません。
ちゃんと飲んでくれないとワーファリンのコントロールがめちゃくちゃになってしまうのでそれはそれで危険ではあるのですがちゃんと飲んでくれないとダメなのはNOACも同じですよね。

ただ、理解力不足で大量に飲んでしまう恐れがあるような患者さんには、ワーファリンは危険かもしれませんね。
そういえばNOACはどうなんでしょうね。
NOACの過量投与の症例報告とかあるんでしょうか。
ちょっと文献を探してみたいと思います(気が向けば…)

今日はもう疲れたのでこのへんで終わりにします。
そして、貴重な繁忙期の休日にもかかわらず、薬ゼミに参加された先生方、お疲れ様でした!
その無尽蔵の向上心…見習わないといけませんね!