pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

各種NOACの出血リスクって結局どうなってんの?

本日12月18日は薬ゼミの薬剤師生涯学習講座「みんなで考えるポリファーマシー」が行われ、大盛況だったようですね。
東京で行われたようなのですが、Live配信にて全国各地で開催され、活発な議論が繰り広げられたようです。

さて、自分は何をしていたかというと、美女がサメに襲われる映画を観ながら、ウトウトと惰眠を貪っておりました!
ただいま、夕方16時、ようやく、おはようございまーす!という感じで、身体活動を開始しました。

いやあ、サメって怖いですよねぇ。
自分は通算100回以上サメに襲われています。
「夢の中で」ですが…。

夢というのは、なぜこうも悪い夢ばかりなのでしょう。
ゾンビに襲われたり、サメに喰われたり、Drに怒られたり(←これがダントツで怖い!)


ふむ…
最近、どうも文章を打とうとしてもすぐに脱線してしまい真面目なことが書けなくなってきました。
性根が真面目ではないので自然な経過とも言えます。
背伸びしたところでバレるわけです。


さて本題です。

(さきほどの映画)サメに襲われ、脚を噛まれて鮮血が流れていました(本題って、結局サメかい!)

ここで「NOACとか飲んでたら止血しにくいんだろうなぁ…」とか思ってしまい、映画から現実に引きずりおろされてしまい…
流血を見て、違う意味で嫌な気分になりました。

というわけでNOACによる出血リスクです(本当の主題はこれ!)。

今年はNOAC関連の論文が続々と発表されたように思います。


まずは、こちら。6月発表
Effectiveness and Safety of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban Versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
J Am Heart Assoc. 2016 Jun 13;5(6).
米国の保険データベースを使用した後ろ向きコホート
P:NVAF
E:NOAC(apixaban, dabigatran, rivaroxaban)
C:ワーファリン
O:有効性(脳卒中や全身性塞栓症)と安全性(大出血)

apixaban versus warfarin (n=15 390)
・stroke or systemic embolism:HR 0.67, 95% CI 0.46-0.98, P=0.04
・major bleeding:HR 0.45, 95% CI 0.34-0.59, P<0.001

dabigatran versus warfarin (n=28 614)
・stroke or systemic embolism:HR 0.98, 95% CI 0.76-1.26, P=0.98
・major bleeding:HR0.79, 95% CI 0.67-0.94, P<0.01

rivaroxaban versus warfarin (n=32 350).
・stroke or systemic embolism:HR 0.93, 95% CI 0.72-1.19, P=0.56
・major bleeding:HR 1.04, 95% CI 0.90-1.20, P=0.60


パッと見、ワーファリン不利な感じに見えますが、ワーファリン群のTTRが低い気もします
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4937291/table/jah31563-tbl-0011/
治療域を超えてしまっている例もあり、そのようなケースで大出血が起きたのかもしれません。

リアルワールドではINRのコントロールが難しくてコントロール不良による出血事例があるのだからやはりNOACのほうがいいのだ!という説につながるのかもしれません。
逆に言えば、ずっと良好にコントロールできているなら、無理してNOACに変えなくてもいいのでは?という気もしてしまいますが。。



次、8月
Real-world comparison of major bleeding risk among non-valvular atrial fibrillation patients initiated on apixaban, dabigatran, rivaroxaban, or war... - PubMed - NCBI
Thromb Haemost. 2016 Oct 28;116(5):975-986.
アメリカのThe MarketScan®のデータを用いた後ろ向きコホート
P:NVAF patients aged ≥18 years newly prescribed an oral anticoagulant
E:NOAC[7,438 (16.4 %) initiated apixaban, 17,801 (39.2 %) initiated rivaroxaban, and 4,661 (10.3 %) initiated dabigatran]
C:ワルファリン[15,461 (34.1 %)]
O:Major bleeding was defined as bleeding requiring hospitalisation.

<結果>
vsワーファリン
apixaban (HR: 0.53; 95 % CI: 0.39-0.71)
dabigatran (HR: 0.69; 95 % CI: 0.50-0.96)
rivaroxaban (HR: 0.98; 95 % CI: 0.83-1.17)

注意点として、apixaban 5 mg BID,rivaroxaban 20 mg QD, or dabigatran 150 mg BID
アメリカではリバーロキサバンは1日20mgです。

タイトルにリアルワールドとありますが、日本とは異なるリアルワールドのデータなのでその点は注意。

ちなみに資金提供はBristol-Myers Squibb and Pfizer。アピキサバンのメーカーですね。


次、11月、JAMA Intern Medより
Stroke, Bleeding, and Mortality Risks in Elderly Medicare Beneficiaries Treated With Dabigatran or Rivaroxaban for Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
JAMA Intern Med. 2016 Nov 1;176(11):1662-1671.
後ろ向きコホート
P:118 891 patients with nonvalvular AF who were 65 years or older
E:リバーロキサバン20mgを1日1回
C:ダビガトラン150mgを1日2回(with dabigatran as reference)
O:thromboembolic stroke脳血栓塞栓症, intracranial hemorrhage (ICH頭蓋内出血), major extracranial bleeding頭蓋外出血 including major gastrointestinal bleeding消化管出血, and mortality

出血リスクはリバーロキサバンのほうが高いという結果

なんかリバーロ不利な文献が続きますね…。
COIはどうだったんでしょう?オープンアクセスじゃないのでわかりませんが。


12月、CHESTより
Direct Comparison of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban for Effectiveness and Safety in Nonvalvular Atrial Fibrillation. - PubMed - NCBI
Chest. 2016 Dec;150(6):1302-1312
こちらも後ろ向きの研究

P:NVAF非弁膜性心房細動
E/C:各種NOAC(アピキサバン、リバーロキサバン、ダビガトラン)
O:stroke and systemic embolism (effectiveness) and major bleeding (safety)

<結果>
rivaroxaban vs dabigatran
stroke or systemic embolism:HR1.00(95% CI, 0.75-1.32)
major bleeding:HR1.30(95% CI, 1.10-1.53)
intracranial bleeding:HR1.79(95% CI, 1.12-2.86)

apixaban vs dabigatran
stroke or systemic embolism:HR0.82(95% CI, 0.51-1.31)
major bleeding:HR0.50(95% CI, 0.36-0.70)

apixaban vs rivaroxaban
stroke or systemic embolism:HR1.05(95% CI, 0.64-1.72)
major bleeding:HR0.39(95% CI, 0.28-0.54)

有効性にあまり差は無いが、出血リスクはアピキサバンが優れているという内容。
これもアメリカのデータなのでリバーロキサバンは20mgかと思われます。



最後にネットワークメタ!
Systematic review and network meta-analysis of stroke prevention treatments in patients with atrial fibrillation. - PubMed - NCBI
Clin Pharmacol. 2016 Aug 11;8:93-107
RCTのネットワークメタアナリシス
P:AF patients(any age)
E/C:placebo, aspirin, aspirin and clopidogrel combination therapy, adjusted-dose warfarin (target international normalized ratio 2.0–3.0), dabigatran, rivaroxaban, apixaban, and edoxaban
O:all stroke, ischemic stroke, myocardial infarction, overall mortality, major bleeding, and intracranial hemorrhage
COI:なし

言語制限は?:英語のみ
未出版の文献は?:専門家にコンサルトしている
ダブった研究は?:除外している
検索ワードは?:atrial fibrillation, warfarin, phenprocoumon, acenocoumarol, aspirin, apixaban, rivaroxaban, dabigatran, clopidogrel, edoxaban
詳細はサプリメンタリに。
評価はバイアスは?:スクリーニングは一人、再評価は二人、意見の不一致があればディスカッションと資料のレビューで解決
元論文バイアスは?:コクランのツールを使用。sequence generation, allocation concealment, blinding, incomplete outcome data, and selective reportingで評価

<結果>
Fig3がわかりやすいですね。
https://www.dovepress.com/cr_data/article_fulltext/s105000/105165/img/CPAA_105165_F003.jpg
ランキングされてます。
両方のグラフが1に近いほうが有効性安全性ともに優れている、ということになります。



さて、ダーーーッ!と流し読みしましたが(誤字脱字誤訳などご勘弁ください)、なんとなくアピキサバンが攻守ともに優れているような印象はありますね。
今後、エドキサバンのデータも揃ってきたら4種比較の論文も増えてくるかもしれません。

なんかこう世の中、NOAC,NOAC,NOAC,NOAC!!!!という感じで、ワーファリン肩身狭いですね。
腎機能低下例など特殊な患者さんにおいては、INRでモニタリングできるのは有用なんじゃないかなぁという気もしますが、実際のところどうなんでしょうねぇ。

個人的には、ワーファリンの強みとしてもうひとつ。

NOACは飲むのをサボってもバレないが、ワーファリンは飲むのをサボればINRでバレる
(ワーファリンも次回受診前の一定期間だけちゃんと飲む、みたいなことをされたらお手上げかもしれませんが…)

この患者さん、ちゃんと薬を飲んでくれるか怪しいぞ、という場合は、服薬状況のモニタリングができるワーファリンをチョイスするほうがいいかもしれません。
ちゃんと飲んでくれないとワーファリンのコントロールがめちゃくちゃになってしまうのでそれはそれで危険ではあるのですがちゃんと飲んでくれないとダメなのはNOACも同じですよね。

ただ、理解力不足で大量に飲んでしまう恐れがあるような患者さんには、ワーファリンは危険かもしれませんね。
そういえばNOACはどうなんでしょうね。
NOACの過量投与の症例報告とかあるんでしょうか。
ちょっと文献を探してみたいと思います(気が向けば…)

今日はもう疲れたのでこのへんで終わりにします。
そして、貴重な繁忙期の休日にもかかわらず、薬ゼミに参加された先生方、お疲れ様でした!
その無尽蔵の向上心…見習わないといけませんね!