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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

モーツァルトvsビートルズ!

Mozart, but not the Beatles, reduces systolic blood pressure in patients with myocardial infarction. - PubMed - NCBI
Acta Cardiol. 2015 Dec;70(6):703-6.
背景:音楽はさまざまな臨床的状況でSBP/DBP(収縮期/拡張期血圧)、HR(心拍数)を減少させるが、梗塞後の患者でも有効かどうか不明
(論文本文より;音楽はCAD(冠動脈疾患)における、心臓手術の術後や、wating for a scheduled cardiac catherization(心臓カテーテルの待機時?)などにおける患者の痛みや不安を軽減することで、QOLを改善し、血圧を低下させるように思われる。)

研究デザイン:RCT(本文に記載あり)、ITT解析
P:ERに入院した心筋梗塞(AMI;acute myocardial infarction)患者
E/C:①Mozart ②Beatles ③ラジオニュース
O:SBPの減少

<選定基準>
心筋酵素(トロポニンT、CK-MB)の上昇 or 心電図におけるST上昇

<除外基準>
難聴(hearing loss)の患者、房室ブロック(artioventricular block)、重篤な低血圧、ショックなど

<サンプルサイズ>
P=0.05、Power90%で6mmHgの差を検出するサンプルサイズは60名と見積もり
3群20名ずつ選出されている

<患者特性>
平均年齢:約60歳
喫煙率:55~70%
男性:55~85%
DM:25~40%
高血圧:65~95%
STEMI(ST-elevation myocardial infarction):35~45%
(↑P値が0.05を下回っていないとしても、そこそこ差があるような印象。ただ、ランダム化されている場合は、ベースラインの群間差(p value)は無視していいと聞いたことがあります)

<結果>

Mozalt Beatles News
SBP(mmHg) 111.6→104.4(-7.2) 116.0→114.7(-1.3) 113.5→114.1(+0.6)
DBP(mmHg) 67.9→65.1(-2.8) 67.3→66.9(-0.4) 63.1→63.2(+0.1)
HR(bpm) 71.4→69.8(-1.6) 64.2→61.9(-2.2) 65.5→65.3(-0.2)

統計的に群間差があったのはSBPのみ。

<結論>
MI患者において、モーツァルトを聴くと、ビートルズやラジオニュースと比べて、血圧を低下させる


<感想>
ディスカッションにて、検出力不足の可能性を挙げています(たしかに症例数が少ないかな)。
血圧という代用のアウトカムのベネフィットを示しただけで、音楽療法による再梗塞や死亡の増加の可能性を除外できないといったLimitationも言及されています。

おもしろい研究ですね。
論文の本文にはビートルズの曲名まで載ってます。モーツァルトビートルズもほとんど知らないのですがLet it beは好きです(ベタですみません)。ビートルズの選曲は必ずしもバラードばかりというわけではないようですね。ただ、個人的にはビートルズの音はどちらかというと“落ち着く音”かな…?という印象。ガチャガチャしてないというか…。うまく説明できませんが。

音楽の好き/嫌いとは別に、落ち着く音/落ち着かない音というのがあるように思います。
よく目覚ましとして、音楽をセットするのですが、落ち着く音楽をセットするとゆっくりと覚醒できる(最悪、そのまま起きれずに寝坊してしまい遅刻する)、落ち着かない音をセットすると飛び起きます(もしくは、うるせぇ!と電源を引っこ抜いて二度寝して遅刻する)。

落ち着かない音をうまく説明できないのですが、良くも悪くも耳障りな感じというか…。
Rage Against Machineみたいなラウドなロックはもちろん、きれいなDeepHouseでもなんか落ち着かない音だなと思うことがあります(あ、もちろん好きな曲でもです。嫌いな曲=落ち着かない音ではありません)。

個人的にはManuel Göttschingの「E2-E4」でモーツァルトに挑んでみたいところ。
この1984年の歴史的名盤はいまだに絶大な支持を得ていて、2006年に日本からのラブコールによりE2-E4のライブがメタモルフォーゼという野外フェスで世界初披露されたという経緯があります。
ミニマルな展開ながらも次々に色彩をかえていく音色にリラックスかつハイになります笑
麻酔みたいな効果があるような気がするんですけどねぇ。

あとこの研究で気になったのが、対照群のラジオニュース。
人がしゃべる声ということですが、おそらくニュースということでアナウンサーのような声質/しゃべり方だったと推察されますが、人の声というのも絶大な癒し効果があると思うんですよね。
kahimi karieさんみたいな声だったらモーツァルトに負けないだろうなぁなんて思います。

音楽の話になると埒が明かなくなってしまいますが、「音」が人に与える効果はまだまだ未知の可能性があるのではないでしょうか。
今後も音楽にまつわる論文があれば読んでみたいと思います。