pharmacist's record

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SERM;ラロキシフェンによるほてり

骨粗しょう症の治療で用いられるラロキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM;Selective estrogen receptor modulators)で、乳房や子宮では抗エストロゲン作用を、骨に対してはエストロゲン様作用を発揮する[骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015]。

ラロキシフェンの添付文書によると、"ほてり"の頻度は国内の臨床試験で2.9%、特定使用成績調査で0.7%。
ホットフラッシュはエストロゲンの減少により起こるとされている更年期障害の症状のひとつであり、乳房や子宮には抗エストロゲン作用をきたすラロキシフェンによって引き起こされる可能性あり

Characterization of hot flashes reported by healthy postmenopausal women receiving raloxifene or placebo during osteoporosis prevention trials. - PubMed - NCBI
Maturitas. 2000 Jan 15;34(1):65-73.
背景:SERMのラロキシフェンはエストロゲン様骨格を持ち、

研究デザイン:3つの骨粗しょう症予防のDB-RCT(ヨーロッパ・北米)の有害事象の解析(n=876)
P:45~60歳の閉経後の女性(2RCT)or40~60歳の子宮摘出済の女性(1RCT)
E:ラロキシフェン60mg/日
C:プラセボ
O:ホットフラッシュ

<結果>

プラセボ ラロキシフェン P value
ホットフラッシュ
ベースライン 12% 13%
30ヵ月後 21% 28% 0.02

(6ヵ月後の時点で、ホットフラッシュの発生率に有意差あり)

ホットフラッシュによる早期中断:有意差なし(両群3%以下)
中断後、ホットフラッシュが消失するまでの期間:ラロキシフェン205日、プラセボ246日


プラセボより有意に増加しており、ラロキシフェンによりホットフラッシュを誘発する可能性が示唆されています。

承認時の国内臨床試験の結果は、
ほてり:プラセボ1.9%、ラロキシフェン2.9%
多汗:プラセボ0、ラロキシフェン1.6%
(IFより)

同系統のバゼドキシフェンについても同様におこりうるようです。"SERM特有の副作用である静脈血栓塞栓症、ほてりおよび下肢痙攣はラロキシフェンと差異はなかった"( 日本薬理学雑誌 Vol. 138 (2011) No. 2 P 68-78)

ラロキシフェンとバゼドキシフェンの比較についてはこちらも参考になります
Bazedoxifene: the evolving role of third-generation selective estrogen-receptor modulators in the management of postmenopausal osteoporosis. - PubMed - NCBI
Ther Adv Musculoskelet Dis. 2012 Feb;4(1):21-34.
編集支援のための資金提供:ファイザー
table3
試験期間3年のデータ(BZA;bazedoxifene RLX;raloxifene)

BZA20mg(n=1886) BZA40mg(n=1872) RLX60mg(n=1849) プラセボ(n=1885)
心筋梗塞MI 8(0.4) 8(0.4) 6(0.3) 8(0.4)
血管拡張Vasodilatation(ホットフラッシュhot flushes) 238(12.6) 243(13.0) 222(12.0) 118(6.3)
下肢けいれんLeg cramps 205(10.9) 204(10.9) 216(11.7) 155(8.2)
乳がんBreast carcinoma 5(0.3) 4(0.2) 7(0.4) 8(0.4)
乳房痛Breast pain 53(2.8) 45(2.4) 56(3.0) 48(2.5)
子宮内膜癌Endometrial carcinoma 0 2(0.1) 2(0.1) 3(0.2)
子宮内膜増殖症Endometrial hyperplasia 1(0.1) 1(0.1) 1(0.1) 1(0.1)

もとデータによると、平均年齢66歳
Efficacy of bazedoxifene in reducing new vertebral fracture risk in postmenopausal women with osteoporosis: results from a 3-year, randomized, plac... - PubMed - NCBIJ Bone Miner Res. 2008 Dec;23(12):1923-34
Safety of bazedoxifene in a randomized, double-blind, placebo- and active-controlled Phase 3 study of postmenopausal women with osteoporosis. - PubMed - NCBIBMC Musculoskelet Disord. 2010 Jun 22;11:130

最初にとりあげたラロキシフェンの文献のデータと、ホットフラッシュの発生率が異なるのは、平均年齢の違いかなと思いました。

このデータを見る限りだと、閉経後骨粗鬆症に有効な2成分目のSERMとして2010年に発売になったバゼドキシフェンはリスクが少ないかというとそういうわけでもなく、安全性プロファイルはラロキシフェンとほぼ同様のようです。