BPSDに抑肝散が効く? - pharmacist's record
以前こんな記事を書いたのですが、新しいエビデンスが出たので再び抑肝散をピックアップ
まず、2013年にはRCTのメタアナリシスが出ていました。
Yokukansan in the treatment of behavioral and psychological symptoms of dementia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled tr... - PubMed - NCBI
Hum Psychopharmacol. 2013 Jan;28(1):80-6.
認知症のBPSDに対する抑肝散の有効性は、通常ケアと比べて、NPIスコアの加重平均差weighted mean difference;-7.2、異質性I2=0%(n=236)ということで、抑肝散は有効で忍容性も良いとなっています。
とくに妄想delusions、幻覚hallucinations、興奮・不穏/攻撃性agitation/aggressionを改善した、ということでした。
NPIは120点満点ですから、-7点だと、劇的な効果とはいえなそうです。
ただ興奮、妄想の強い場合に著効するならありがたいですよね。
おそらく、このメタアナリシスに含まれるRCTはすべて二重盲検ではないと思います。
漢方はプラセボをつくるのが難しいとされていますが、とうとう抑肝散のプセラボを使った二重盲検のRCTが発表されたようです!
アブストにも初めてのDB-RCTと記載されています。
Randomized double-blind placebo-controlled multicenter trial of Yokukansan for neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease. - PubMed - NCBI
Geriatr Gerontol Int. 2015 Dec 29
抑肝散は伝統的な漢方薬であり、認知症の行動心理症状(BPSD)に用いられる。アルツハイマー病(AD)におけるBPSDに対する抑肝散の有効性と安全性を検討するためDB-RCTを行った。
研究デザイン:多施設、二重盲検、ランダム化プラセボ対照比較試験
(クリニック、病院、介護施設など22施設)
P:アルツハイマー病患者145名
E:抑肝散7.5g/日(n=75)
C:プラセボ(n=70)
O:BPSDの評価方法として、NPI-Qスコアの4週間の変化
(セカンダリ:12週間のNPI-Qスコア変化、MMSEスコアの変化)
<結果>
4週間のNPI-Qの変化:有意差なし
12週間のNPI-Qの変化:有意差なし
12週間のMMSEスコアの変化:有意差なし
ベースラインのMMSEが20未満のサブグループにおいては、
agitation/aggressionスコアが有意に減少(p=0.007)
重篤な有害事象は認められなかった。
まあ、予想通りといえば予想通りの結果ですね。
興奮気味であったり攻撃的であったりする場合には、抑肝散の投与が有効かもしれませんが、BPSDがあっても興奮や攻撃性のない認知症患者さんに対してはむやみに投与するものではないなという印象です。
BPSD患者さん向けの鎮静剤という立ち位置でしょうか。
鎮静剤といえばBZ系がありますが、高齢者においてはせん妄リスクや転倒リスクなどの問題があるため、BPSD患者さんにとって抑肝散の必要性は十分残されているのではないかと思います。
H30.9追記
ちょこっとだけ補足します。
DB-RCTの件ですが、これはフルテキストをご参照いただいたほうがよろしいかと思います。
…と、だけ申し上げておきます。
補足になってませんが、、、、
NPI-Qの各項目のスコア変化も載ってますので、そちらをご確認いただければと。