頭痛に対する呉茱萸湯TJ-31の有効性についての報告(アブストのみ)
The efficacy of goshuyuto, a typical Kampo (Japanese herbal medicine) formula, in preventing episodes of headache. - PubMed - NCBI
Curr Med Res Opin. 2006 Aug;22(8):1587-97.
研究デザイン:二重盲検ランダム化比較試験(レスポンダー限定)
P:慢性頭痛患者(TJ-31のレスポンダーを抜粋)
E:TJ-31(n=28)
C:プラセボ(n=25)
O:頭痛のエピソードが発生した日数の減少(アブストには明確にプライマリアウトカムとしての表記はない)
<方法>
stage1:91名にTJ-31を4週間投与し、TJ-31のレスポンダーを決定。
stage2:レスポンダーに対して、12週間のDB-RCTを実施
(stage1からstage2まで4週間の休薬期間あり)
<結果>
91名試験登録。60名がレスポンダーとされ、そのうち53名にDB-RCTを実施
TJ-31 | プラセボ | p value | |
---|---|---|---|
頭痛のエピソードが発生した日数の減少(4週間あたり※) | 2.6日/4w(±3.7) | 0.3日/4w(±4.0) | p=0.034 |
頭痛発作のリリーバーの使用頻度の減少 | 2.2(±4.0) | 1.4(±8.2) | p=0.672 |
※アブストには記載がないですが、本文中に4週間あたりの日数として記載あり(4週間あたりの頭痛発作日数は両群ともにベースラインは10日前後)
<感想>
ちょっと変わった研究デザインですね。
漢方ということで証を考慮しての臨床試験を、ということでこのようなレスポンダー限定DB-RCTというデザインを採用したようです。
レスポンダーの4週あたりの頭痛発作日数は10日前後。プラセボはほとんど変化がなく、呉茱萸湯服用群は2~3日発作日数が減ったという結果。
頭痛というアウトカムだとプラセボ効果がそれなりに期待できそうなのですが、プラセボ群はほとんどベースラインと変化がありません。ちょっと意外でした。
プラセボと差があるようなので多少は効くのかな?と思いましたが、そもそもこれはレスポンダー限定試験であり、3人に1人はレスポンダーではないとされ、RCTから除外されているという前提があります。言い方を変えれば3人に1人はほとんど効かないという可能性もあり、その効果は限定的のようです。
慢性頭痛の診療ガイドライン2013においては、漢方薬は推奨グレードB
(呉茱萸湯をはじめ、桂枝人参湯、釣藤散、葛根湯、五苓散の計5漢方が挙げられており、その中でDB-RCTが行われたのは呉茱萸湯のみ)
頭痛というのはとても嫌な症状ですよね。患者さんのQOLを著しく低下させます。頭痛のコントロールがうまくいかない場合は呉茱萸湯を試してみる価値はありそうです。ただ効果がない患者さんもいるので、漫然と長く使わずに、きちんと効果判定をすることが大事だと思います。