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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

乳腺炎に葛根湯?

漢方 婦人科

葛根湯といえば風邪の引き始めに、というイメージですが、乳腺炎の適応もあります。

葛根湯(TJ-1)の風邪に対する適応としては、

  • 比較的体力がある(実証~中間証)
  • 汗をかいていない状態、皮膚はサラサラしている
  • 発熱(微熱~高熱)、悪寒、頭痛
  • 肩~首(頂背部)の痛みやこわばり
  • 喉の痛み、鼻汁

といったところです。

体力が弱めで、熱は微熱程度、自然発汗があれば桂枝湯(TJ-45)、

頂背部よりも、関節痛、筋肉痛など全身の痛みが強ければ麻黄湯(TJ-27)

が、推奨されます。

麻黄湯はインフルエンザウイルスに効果があるというよりは、インフルエンザ様症状に適した漢方といえます。

 

乳腺炎 

産後6週以内に起こりやすいが、授乳中であれば起こりうる。授乳婦の発生率は研究により異なるが、数%~30%程度とされる。

うっ滞性乳腺炎:乳房の痛み(圧痛)、腫脹、発赤、乳汁うっ滞に伴う硬結

化膿性乳腺炎:上記症状に加えて、発熱、全身倦怠感、白血球・CRP上昇などの全身症状を伴う。化膿性乳腺炎が進行すると乳腺膿瘍を形成する(化膿性乳腺炎の約10%)

 

<治療>

①乳汁のうっ滞を取り除く

  • 乳房のマッサージ
  • アイスノンなどで冷やす(炎症がない場合や、授乳直前は温めたタオルなどで温めるのは有効だが、痛みを感じるレベルの乳腺炎の場合は、原則冷やす)。
  • 授乳、搾乳を行う。

②痛みの除去

  • アセトアミノフェン:乳汁への移行は極少量で授乳中も投与可能。またアセトアミノフェンは生後3ヶ月以上の乳児にも適応あり。
  • イブプロフェン:乳汁への移行は極少量で授乳中も投与可能。抗炎症効果はアセトアミノフェンよりも強い
  • 葛根湯:乳汁分泌を促す作用により乳汁うっ滞改善
  • 桂枝茯苓丸:葛根湯に併用投与することあり。トウニンとボタンピでうっ血を取り除き、ブクリョウは水分代謝を改善

③化膿性乳腺炎に対する抗菌薬

起因菌は黄色ブドウ球菌が多い。ペニシリン系やセフェム系を用いる。投与期間は10~14日間とされている。

④膿瘍のドレナージ

穿刺や切開によりドレナージを行う。ドレーンチューブを留置しておき、排液が少なくなったら抜去する。

 

乳腺炎の予防>

  • 授乳を制限しない
  • 授乳後も乳房が張っていれば手で搾乳する
  • 乳房うっ滞がないかチェック、うっ滞があれば、授乳回数を増やす、授乳前に乳房を温める、しこっているところをマッサージする
  • 疲労をためないように充分に休息をとる

 

 葛根湯にそんな効果があるとは、という感じですが、添付文書にも載っています。消炎鎮痛薬の補助的治療として有用かもしれません。

 授乳中に風邪などで薬が処方される場合がありますが、医師が授乳中であることをきちんと考慮した処方を出したにもかかわらず薬剤師の説明不足により患者さんが授乳を中止してしまうと乳腺炎のリスクになりうるということは肝に銘じておく必要があるかと思います。