pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

若年者の胸痛 Precordial catch syndrome

ある症例を紹介いたします。

主訴:胸痛

痛みの部位は、ちょうど心臓のあたり、指先で指し示すことができるくらい限局的。指でぎゅっとつままれているような鋭い痛み。

持続時間は正確に測定したことはなく、数分程度と思われるが、10分以上に感じられることもある。深呼吸をすると増悪するので、浅い呼吸となるが息苦しいわけではない。体位を変えると痛みが増すように感じることがある。冷や汗や動悸、頭痛、放散痛、呼吸器症状などの随伴症状なし。

初発は中学生~高校生の頃、頻度は年間10回くらい。20歳を過ぎて、年齢とともに頻度は減少。何度も胸痛発作がおきているが、じっとしていると自然と治まるので受診したことはない。

 

受診したことがない患者の症例をなぜご紹介できるのかというと、これは自分自身の体験です。健康診断で心臓の異常を指摘されたことはないですし、たまに起こるだけで放っておけば治まるので、放置していました。薬科大でもこんな病態は習った覚えがなく、長い間、謎だったのですが、ようやく判明しました。

 

Precordial catch syndrome(プレコーディアル・キャッチ)

小児の胸痛の8~9割はPrecordial catchといわれているほど頻度が高いようです。

特徴は、

  • 健康な若年層に多い
  • 持続時間は30秒~3分
  • 発作の誘因はなく、安静時に突然に起こる
  • 痛みは深呼吸で増悪
  • 痛みの性状は、鋭く、刺すような痛み

 

 ほぼすべて合致します。3分以上持続していたような気もしますが、正確な時間は測ってないので、案外短かったのかもしれません。最近、症状がないというのは、若年層から外れつつあるのでしょうか(涙)

 大学の頃に真っ先に思い浮かんだのが狭心症でした。狭心症は持続時間が数分で締め付けられるような痛みとされており、指でつねられるようなこの痛みは、締め付けられるような痛みともとれるなと本気で心配したこともありましたが、 合わない点が多々あります。狭心症は痛みの部位が限局的ではないことが多いですし、深呼吸で増悪するというのも合わないと思います。そもそも10代では稀ですし、加齢とともに胸痛発作の頻度が減るというのもおかしいです。

 薬剤師向けの教科書は、疾患の症状は載ってますが、疾患ごとにどのような違いがあるか記載されてないことが多いです。診断のプロを目指した教育ではないためだと思いますが、今後、在宅医療に足を踏み出すには初歩的な診断学は勉強しておかなくてはならないと感じています。