pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

ゾピクロンとエスゾピクロンの苦味の件

まずは、こちら

pharmacymanga.blog.fc2.com

2015年11月 るるーちゅ先生のブログ記事です

「目糞鼻糞の違いについて語れる薬剤師よりも、目糞鼻糞程度の差しかないのでどっちでもいいと言える薬剤師に個人的にはなりたいと思っています。」
という名言が痺れるこの記事からもう2年弱になるんですね。
月日が流れるのははやいものです。

さて、ゾピクロンに続いて近年発売開始となったエスゾピクロンは、光学異性体がどうのこうの…ていう触れ込みで売り出されましたが、処方頻度は伸びてるのでしょうか。現職場ではほとんど処方されてないですね。

ゾピクロンといえば苦味ですが、エスゾピクロンはその苦味が軽減されているという説はしばしば耳にします。

それって本当?というCQについてPubってみましょう。
この2年ほどの間に、なにかエビデンスが出ているかもしれません。

苦味をアウトカムにした論文はなさそうな気がして、ガチンコ勝負のRCTを探してみると、

Eszopiclone versus zopiclone in the treatment of insomnia. - PubMed - NCBI
Clinics (Sao Paulo). 2016 Jan;71(1):5-9.

P:原発不眠症(at least 3months)20~64歳
E:eszopiclone 3 mg
C:zopiclone 7.5 mg
O:Insomnia Severity Index after four weeks of treatment
介入期間:4週
資金提供:Eurofarma(エーザイと関連あり)

あれ?事前登録では、プライマリアウトカムはLatency to persistent sleep measured by polysomnographyってなってますが…、まあ、そこは本題ではないので保留。

さっそくAEsを。
dysgeusia味覚障害 (eszopiclone: 65 [50.78%]; zopiclone: 78 [60%])

苦味という表記ではなく味覚障害となっています。まあおそらく主に苦味を指しているのだろうと思いますが…
それにしても…、こんなに多いの?って思いますね。

たしかに、ややエスゾピクロンのほうが少ないですが、どっちもどっちですねぇ。国内と違って、エスゾピクロン3mgと高用量なので、その点は差し引いてもいいかも。。
あくまで味覚を検討しようとしたRCTではないので、仮説生成的なデータとなるのでしょうか。



国内でもランダム化二重盲検クロスオーバー試験が実施されており、苦味について比較されています。
CiNii 論文 -  ゾピクロン錠とエスゾピクロン錠の苦味比較(第2報)ランダム化二重盲検クロスオーバー試験
対象:15名
エスゾピクロン2mg、ゾピクロン7.5mgで、
どちらか寝る前1回服用→7日あけて→もう一方を寝る前1回服用

エスゾピクロンのほうが苦味が出る頻度は少ない傾向にあるようです。
が、こちらもやはりエスゾピクロンでも苦味は認められています。


さて、いままでラセミ体がどうのこうのと薬理学的(?)な理由により苦味が少ないとアピールされてきたこの問題ですが、なんだかんだでやや少ない傾向にあると言えるかもしれません。

ですが、エスゾピクロンも苦い!

ゾピクロンで苦味が出てしまったから、じゃあエスゾピクロンにしよう!とはなりませんよね…。
じゃあまったく別の成分で同じくらいの作用時間の眠剤にかえよう、というのが自然な流れかと思います。

苦味がどうこうっていうより、エスゾピクロンは2017年7月時点では向精神薬扱いではないため、長期で出せるってところが最大のメリットなのかも。行政のルールによって与えられたメリットが一番のアピールポイントかもしれないっていうのは感慨深いものがありますね。

向精神薬扱いにならなかったのは、依存性が少ないとか、なんらかの利点が示唆されているのでしょうか?
ちょっと調べてみないとわかりませんが、とりあえず、苦味について、言えるのは以下のとおり。

・たしかに、ゾピクロンよりエスゾピクロンのほうが苦味がやや少ないかもしれない。根拠は約200名のRCTと15名のクロスオーバー試験(もちろん、他にもなにかあるかもしれません。きっちり探しぬいたわけではないので。)

・結局、どちらも苦味の副作用は起こりうる。

です。


さて、次に気になってきたのは、エスゾピクロンが向精神薬として指定されなかった根拠が知りたくなってきました。
安全性が高いことを示唆するデータがあるのでしょうか。

この件は、エチゾラムとゾピクロンが向精神薬に指定されるってときにかなり話題になったので、どなたかがすでに調べているかもしれませんね。
今日はもう眠いので、今回はここまで。

ああ、眠い眠い
勉強してると、ゾピクロンのような眠剤を盛られたんじゃないかと思うくらい、急速に眠くなりますね…うううぅ…zzzz

薬剤師の仕事はAIで代用可能?

 最近、こんな話題をちらほらと目にしました。以前より定期的に話題になるので、ああ、また国民の皆様からディスられてるよ…と思っていたのですが、処方のチェックもAIで代用できるんじゃないかっていう点は微妙な気もしますね。

 医科のレセコンはどうなのでしょう?電子カルテとか見たことないのですが、併用禁忌の薬を入力したら警告がでたりするんでしょうか。調剤のレセコンもある程度は警告がでるような機能があったりします。前立腺肥大と疾患登録された患者さんにPL配合顆粒が処方されていたら警告がでます。このような機能は我々は不要だと思っているわけではなく、是非チェックをかけてくれぇ!と思います。誰でも(医師も薬剤師も)見落としはありうるので、コンピュータがチェックをかけてくれるのはありがたいです。

 ただ、逆に怖いのは、こういう機能に頼りきってしまうことで薬剤師の目がゆるくなってしまうのはまずいですね。勉強しなくなったりして…。

 最近の記憶の中でビビった処方はこちら(内容は一部修正してあります)。

アムロジピン錠2.5mg 1錠
アトルバスタチン錠10mg 1錠
ラベプラゾール錠10mg 1錠
ビソプロロール錠2.5mg 1錠
ワルファリンカリウム錠1mg 1錠
ワルファリンカリウム錠0.5mg 1錠
1日1回 朝食後 28日分

こんな感じの処方でしたが、パッと見、なんの違和感もないですよね。
ただし、薬歴を見たとたん、ザワつきました。(ジョジョ風に、ゴゴゴゴ…でも可)

前回も前々回も、過去数ヶ月の処方は以下のとおり

アムロジピン錠2.5mg 1錠
アトルバスタチン錠10mg 1錠
ラベプラゾール錠10mg 1錠
ビソプロロール錠2.5mg 1錠
ワルファリンカリウム錠1mg 2錠
ワルファリンカリウム錠0.5mg 0.5錠
1日1回 朝食後 28日分

どうでしょう?
ザワつきませんか?

処方変更になっているのですが、ワルファリンの量が1日2.25mgから1.5mgに減量となっています。
この減量の仕方がどうかというと難しいです。ワルファリンの用量はINRをみながら少しずつ増減するケースが多いと思いますが、絶対おかしい!と言い切れるほどの減量幅かどうかと言われると…うーん、どうでしょうね。

個人的には減量幅がどうというより、錠剤の減らし方がどうもひっかかるのです。
ややこしい減らし方ですよね。患者さんが混乱するような錠数の変更だなと。
疑惑としてあがってくるのが、なんらかのレセコン操作ミスでぜんぶ1錠に上書きされてしまったのではないか?ということです。

いやあ、さすがにそんなことはないかなと思いながらも、次の行動は患者さんに確認です。

薬減量について聞いているか尋ねると「うーん、そんなこと言ってたっけなぁ…」と首をかしげる感じ。
むむ、この反応はDrは説明したけど聞き漏らしているって可能性もありうるな…。

血液検査はしたか尋ねると、採血したが結果はよくわからないと。
INRは測った模様。しかし結果は不明。


さて、どうしましょう。もしかしたら病院さんから「ワルファリンの減量方法にケチつける気かテメー!」と憤慨される可能性もあります。まあでも私が怒られて済むなら別にいいか。もし万が一、入力ミスとかだったら患者さんに健康被害も起こりうるしなぁ…

ってことで、薬が薬なだけに、念のため疑義照会。言葉を選んでうまいこと確認をとってもらってみると、、、



結果は、、、





「前回と同じ処方でお願いします」
とのご返答。





ガラガラガッシャーン

マジか。
あぶねーー!!!!

案の定、レセコン操作ミスでぜんぶ1錠になっちゃったパターンじゃん!

これはもうほんとびっくりしました。
ワルファリンというデリケートな薬でこんなことあるのかと。

こういうケースがごくまれにあるんですね。
だから、薬剤師はこまかいことで疑義照会してきたりするわけです。
病院の方々、お忙しいところすみませんが、イチイチ確認してくんじゃねーとキレないでください。お願いしますm(_)m

あ、もちろん疑義照会のなかには、形式上のくだらない内容も多々含まれてしまいますが、こちらもナントカ指導でフルボッコにされて、調剤報酬を返還しなくてはいけなくなるので、その点はご容赦ください。


もう少し過去にさかのぼると、これもゾッとしました
ph-minimal.hatenablog.com


うーん。
こういうのをすべてコンピュータで防げるならそれにこしたことはないのですが、やはり人の目によるチェックは必要かなと思う今日この頃。

AIの進歩はすごいなと思うのですが、個人的には、在庫管理をAIにおまかせしたいですね。
在庫が少なくなってきたら自動発注なんて機能もありますが、まだまだきちんと対応できる状態には程遠いです。
いつも14日分処方だから在庫足りるはずだけど、次はお盆にさしかかるから21日分に増えるかもしれないって考えると、発注しないと欠品するぞ!みたいなことまでぜんぶコンピュータで管理してくれたらほんと楽ですよ。
前回処方が出なかったけど、それは単に残薬があったから処方されなかっただけなので、計算から除外しないで予測量にいれておく、みたいなことまで対応してくれたら最高ですよ。

まあ、他の会社のレセコンは知らないので、なんとも言えませんが、なにはともあれコンピュータによる管理・チェックは便利なことは確かですが、完全におまかせっていうのは難しいように思います。かといって、人による管理だけではしんどい。

なので、結語としましては、人間とコンピュータの共存こそ我々の未来である! です。

(こんなこと書いたら、なぜか、グラサンに黒いロングコートの男が仰向けに反り返って弾丸を避けている映像が頭に浮かんでしまいました。ハッ!キアヌリーブス! 映画の内容はぜんぜん覚えてないけど…)

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止するときの漸減の目安は? 地域医療ジャーナル 2017年7月号 vol.3

cmj.publishers.fm

地域医療ジャーナル7月号です。

私はベンゾジアゼピン(BZD)に焦点を当てました。
依存症に関するPMDAの通知が記憶に新しいことかと思います。
NEJMのレビューも出たことですし、タイムリーですよね。

BZDは突然中止するのではなく漸減するのが望ましいとされていますが漸減の目安はあるのでしょうか?

このような素朴な疑問について調べてみましたので、ご興味がある方はぜひご覧ください。


今回も勉強になる記事がたくさんありますが、先日東京で行われたワークショップのご報告も。

cmj.publishers.fm

"みんなで愉しく"ってところが素敵ですね。

私は仕事なので参加できずでしたが当日はとても盛り上がったようです!

論文を読むようなワークショップは一度しか行ったことがないのですが、みんなで議論することで、より理解が深まるのでしょうね。

個人的にはワークショップというより、身近なところでゆる~いノリの論文抄読会をやってみたいところです(堅苦しいのはイヤ!!)。
移動に時間をかけるのはもったいないので(体力ももたない…)、近場でそういう場があるといいですね。