pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

糖尿病スクリーニング、HbA1cの特異度が低い件

最近、このネタがちょっと話題ですね。

Efficacy and effectiveness of screen and treat policies in prevention of type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of screening tests an... - PubMed - NCBI
BMJ. 2017 Jan 4;356:i6538.

結果だけ見ちゃいます。

HbA1c had a mean sensitivity of 0.49 (95% confidence interval 0.40 to 0.58) and specificity of 0.79 (0.73 to 0.84), for identification of pre-diabetes, though different studies used different cut-off values.
Fasting plasma glucose had a mean sensitivity of 0.25 (0.19 to 0.32) and specificity of 0.94 (0.92 to 0.96).

スクリーニングっつってんのに感度が悪いとはこれいかに。

次、特異度に着目
空腹時血糖のほうが特異度は高い。まあ、そりゃそうだろって話ですが。
で、HbA1cはちょい低くなって80%くらい。

そこで、昔の記憶がフラッシュバック
ph-minimal.hatenablog.com

2年以上前の記事ですね。
引用文献ゼロ!

HbA1cの偽性高値や偽性低値について書かれていますが、"どの程度?"という肝心のことがまったく書いてないです。

てことでPubりましょう

Effect of iron deficiency anemia on the levels of hemoglobin A1c in nondiabetic patients. - PubMed - NCBI
Acta Haematol. 2004;112(3):126-8.

iron deficiency anemia (IDA) 50名
healthy subjects50名

除外:glucose tolerance abnormalities (impaired glucose tolerance or diabetes mellitus), hemoglobinopathies, hemolytic anemia, chronic alcohol ingestion and chronic renal failure

IDA全員、鉄100mgで3ヶ月治療

治療前のHbA1c
IDA:7.4% +/- 0.8
healthy:5.9% +/- 0.5

IDA群は治療後、7.4% +/- 0.8 → 6.2% +/- 0.6 


Factors affecting A1C in non-diabetic individuals: Review and meta-analysis. - PubMed - NCBI
Clin Chim Acta. 2015 May 20;445:107-14.
こちらもおすすめ

有意差ついてないですが、ちょっと影響ありそうな気がしますね。


と思いきや、
Effect of iron deficiency anemia on hemoglobin A1c levels. - PubMed - NCBI
Ann Lab Med. 2012 Jan;32(1):17-22.
IDA治療により上昇…という逆の結果も…。


このあたり、いまいちはっきりとメカニズムが解明されていない部分もあるようです(HbA1c and iron deficiency: a review. - PubMed - NCBI Diabetes Metab Syndr. 2013 Apr-Jun;7(2):118-22)


なにはともあれ、HbA1cは血糖値以外の要因で変動することがあるのでHbA1cだけで糖尿病の診断はできませんね。
実際、国内のGLに記載されてる診断基準をみても、HbA1cだけでの診断はできないようになってるみたいです。


糖尿病スクリーニング!ってことで血液検査ができる薬局もあるようですが、このような検査の限界も知っておく必要はあるでしょうね。検査値の評価もできないと、なんのために薬剤師がかかわるの?ってことになっちゃいますので、実施してる店舗の方は勉強しとかないといけませんね。


症例によっては、HbA1c10%!!!→→血糖降下薬開始!→空腹時血糖低下(むしろ低め)、でもHbA1c高いまま!
→→異常ヘモグロビン。遺伝子検査にて診断
(糖尿病 Vol. 58 (2015) No. 2 p. 121-127)

みたいなこともあるので、空腹時血糖やOGTTやらないとって感じですねー。

「コデインが駄目なら何を使えばいいの!?」

FDAの「FDA Drug Safety Communication: FDA restricts use of prescription codeine pain and cough medicines and tramadol pain medicines in children; recommends against use in breastfeeding women」というタイトルの通知とともに、小児へのコデインの使用に制限がかかりました。

リンク切れになるかもですが、現時点で閲覧可能なURLはこちら
FDA Drug Safety Communication: FDA restricts use of prescription codeine pain and cough medicines and tramadol pain medicines in children; recommends against use in breastfeeding women

これを踏まえて、国内はどうなるんだろうなぁと思っていたら意外にも対応が早く、添付文書改訂

"重要な基本的注意"の項目に、
(2) 重篤な呼吸抑制があらわれるおそれがあるので,12歳未満の小児には投与しないこと(「小児等への投与」の項参照).
(3) 重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがあるので,18歳未満の肥満,閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者には投与しないこと.

FDAと同じ記載ですね。

私の職場では、ジヒドロコデインリン酸塩, dl-メチルエフェドリン塩酸塩, クロルフェニラミンマレイン酸塩(一般名、長ッ!)の配合錠を在庫しています。たまに小児にも処方されていました。
すぐにDrに情報を伝え、お子様には使わないようにするとのことでしたが、別の店舗の同僚からはこんな話も。

コデインが駄目なら何を使えばいいの!?」

とDrから質問。

なるほど。
全国でこのような質問が飛び交っているのかもしれません。

患者さんの症状緩和のために、あるいは時にめちゃくちゃ語気の強い患者さんの強い要望で、さまざまな薬の処方を検討なさることかと思います。
ハイ、この薬もう使っちゃダメ~ってなっても、いろいろと対応に困る…でしょうね。

そもそも今まで子供にこのような薬を使っていたこと自体どうなの?という声もあるかと思いますが、残念ながら日本においてこの2017年まで添付文書にはっきりと幼児の用量が記載されていたのです。処方されていた事例も多いでしょうね。


さて、上記のような相談を受けたら薬剤師のみなさんはどうお答えしますか?

真っ先に思い浮かぶのはデキストロメトルファンですが、それで治らないような子供にコデイン製剤って流れだったらしくどうしたものかってなってるみたいです。はあ、いろいろと大変ですね。

まあ、その話を聞いて思ったのは、

風邪引いた、咳がでる→デキストロメトルファンを投与→治らねぇ!→コデイン製剤を投与→治ったぁ!

という流れ。
これ、デキストロメトルファンコデイン製剤を逆にしても成り立つケースが多いように思うのは自分だけでしょうか。

いや、わからないですけどね。

わからないから、Pubってみましょう。
(流行することなく廃れていくこの表現をしつこく使っていこうと思う)

1983年
Dextromethorphan and codeine: objective assessment of antitussive activity in patients with chronic cough. - PubMed - NCBI
J Int Med Res. 1983;11(2):92-100.
アブストのみ。二重盲検クロスオーバー試験
慢性咳嗽
デキストロメトルファンvsコデイン

Dextromethorphan lowered cough intensity to a greater degree than codeine (p less than 0.0008)

あららら。こんな結果


1984
Dextromethorphan and codeine: comparison of plasma kinetics and antitussive effects. - PubMed - NCBI
Eur J Respir Dis. 1984 May;65(4):283-91.
薬物動態を調べた研究でしょうか。デザインがいまいちよくわかりません。

Antitussive effects of 30 mg codeine phosphate and 60 mg dextromethorphan hydrobromide did not differ significantly; both were superior to 30 mg dextromethorphan hydrobromide and placebo.
だそうです。


どちらもアブストのみ。
詳細不明ですが、コデインが特別めっちゃ効くって印象は受けないですね。
まあ、国内でよく使われてる"ジヒドロコデインリン酸塩, dl-メチルエフェドリン塩酸塩, クロルフェニラミンマレイン酸塩"(ええい、めんどくせぇ!商品名で書きましょう、フスコデです)はいろいろ入っているので、フスコデとの比較だとどうなるかわかりませんが…。


コクランレビューによると、
Codeine versus placebo for chronic cough in children. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 13;7:CD011914.
18歳未満の子供の慢性咳嗽に対するコデインvsプラセボの試験(RCT限定)

言語制限無し、参考文献もハンドサーチ!
さあ、システマティックレビューだ!


……しーん。。

基準をすべて満たした研究はない…。

these medications are now not recommended for children less than 12 years of age and children between 12 to 18 years with respiratory conditions
との結語


コデインほんとに効くんですかねぇ。

デキストロメトルファンのSR&MAは見つからず。

気になったのはこちら
To compare the effect of dextromethorphan, promethazine and placebo on nocturnal cough in children aged 1-12 y with upper respiratory infections: a... - PubMed - NCBI
Indian J Pediatr. 2013 Nov;80(11):891-5.
URI1~12歳の夜間の咳に、
promethazine, dextromethorphan and placebo
DB-RCT

no superior benefit was noted when individual parameters were compared in the promethazine and dextromethorphan groups with the placebo group

うぉい!
そうですか…。デキストロメトルファンも気休めなのかも。



つぎー、
Placebo effect in the treatment of acute cough in infants and toddlers: a randomized clinical trial. - PubMed - NCBI
JAMA Pediatr. 2014 Dec;168(12):1107-13.
乳幼児の急性咳嗽に対するプラセボ効果は?

アガベシロップvsプラセボシロップvs無治療

In a comparison of agave nectar, placebo, and no treatment, a placebo effect was demonstrated, with no additional benefit offered by agave nectar.

むむ…
結局はプラセボ効果なのか…?
アガベシロップというのはアガベという植物の樹液から作られたシロップだそうです(詳しくは知らん!)

まあ、ハチミツは1歳未満には使えないですからね。

ハチミツといえば咳に有効では?って説が有名ですが、もしやプラセボ効果なんかな?て気もしてきましたよ。

では、ハチミツの文献探しましょう
Honey for acute cough in children. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 23;(12):CD007094.
Honey may be better than 'no treatment'ってことで、無治療よりハチミツのほうが有益かもってコクランには書いてありますね。


こちらはなぞのシロップ
Efficacy of Grintuss® pediatric syrup in treating cough in children: a randomized, multicenter, double blind, placebo-controlled clinical trial. - PubMed - NCBI
デザインは多施設DB-RCT
Grintuss®て有名ですか?
containing a combination of specific fractions of substances such as resins, polysaccharides, saponins, flavonoids and sugars
とのこと。
まあ、国内で手に入るものかどうかわからないのでスルー。


ぶっちゃけ咳を"劇的に"改善するような薬は無いですよね。

まあこんな感じでエビエンスを並べると、論文論文うるせぇ!て怒る人もいるみたいなのでちょっと考えてみましょう。

咳ってなんでしょうね。

長引く場合はいろいろありますが(長引く咳について - pharmacist's record)、咳を止めたほうがいいのかどうかは正直よくわかりません。上気道由来なのか下気道由来なのか、とかいろいろあるみたいですが…。

いや、止めたほうがいいに決まってんだろ!楽になるじゃん!て患者目線では思うでしょうし、自分自身、咳がつづくときは、マジでどうにかしてくれ!て思います。
「咳なんて止めないほうがいいんだよ」という医療者の発言に、患者さんたちは「ええぇ、そんなぁ(涙)」てなるでしょうね。


じゃあ、無理やり咳を止めたらどうなるでしょうね?

たとえば喘息とかで、下気道が閉塞して、呼吸も荒くなり、SpO2が低下して…っていう状況で咳が止まるとどうなるか…。

呼吸(厳密には換気?)が止まっているわけではないのにSpO2が低下するってことは、"呼吸"が不十分ってことですかね。呼吸とは、換気・拡散・運搬、つまり空気の入れ替えと肺でのガス交換、そして血液で全身へ酸素を運搬ですよね。どれが障害されても息苦しいってなるかと。貧血で息切れがおこるのは、運搬が障害されるから。

喘息だと換気が障害されるのかな(肺でのガス交換も障害されるのかな?されない気がするけどちょっと自信ない。ガス交換が障害されるのは間質性肺炎とか?)。
呼吸数が増えて、呼吸(換気)が完全に止まっているわけではないのにSpO2が低下するってことは、換気が不十分で空気の入れ替えができてないって感じでしょうか?

酸素を吸い込むことだけじゃなく、きちんと吐き出すことも大事ってことかと思います。
CO2をきちんと吐き出すことも大事ってイメージ。

なので下気道閉塞して咳するのって、いわば呼気ですよね。これを止めちゃっていいの?っていう疑問。

(すみません、参考文献無しで勝手に思ってることを述べただけなので正確な病態生理は成書をご覧ください。)


てなわけで、なんでもかんでも咳を止めるべき!てのは違うかなって気がしますが、どんな咳でもいっさい有益な治療はないのか!?て言われると…難しいですね。

個人的に嫌なのは、のどがイガイガして咳が止まらないっていう感冒後によくあるパターン。
あれは是非、薬で止めたいですよね。
麦門冬湯とかこういう咳に有効とか言われてますけど、RCTとかやってるのかどうかは不明。

と思って、いろいろPubったら、SRみっけ。
A traditional herbal medication, Maekmoondong-tang, for cough: A systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI
J Ethnopharmacol. 2016 Feb 3;178:144-54.

結果だけ見ると、異質性もなく、有効って感じですが、漢方のSR&MAって元論文バイアスがちょっとどうなのかなってのはあります。アブストしか見れないのでなんともいえませんが、この研究でも、大部分の試験がmethodological qualityがpoorだとのこと。

ちゃんとデザインしたvsプラセボのRCTやろうぜっていう結語。あるあるですね、この締めくくり。

子供に対してはどうなのかはわかりませんが、感冒後咳嗽への効果を期待したいところではあります。
子供に漢方飲めってのも酷かもしれませんが。。



さて、結局よくわからないままなのですが、

コデインがめっちゃ咳に有効かって言われるとそうでもなさそう
・デキストロメトルファンと大差はないんじゃないか
・咳にはプラセボ効果が期待できるかもしれない(プラセボ効果狙いの投与も許容されるのだろうか!?)
・1歳未満は禁忌なので要注意だが、ハチミツがイケてるかも
・麦門冬湯も効くかもしれないけど味が問題となるかも。
・喘息発作みたいな閉塞の危険がありそうな場合は、無理に咳を止めないほうがいいんじゃないか

て感じです。

Pubって見つけた論文の一部を取り上げましたが、レビュー文献はすべてスルーしました。
そちらのほうが有益なことがたくさん書いてあるかもしれません。
(こういうのとか。 Use of Codeine- and Dextromethorphan-Containing Cough Remedies in Children | AMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS | Pediatrics

とりあげた文献の批判的吟味はしてませんし、憶測で書いてる部分も多いですので、このブログ内容についても批判的吟味のほどよろしくお願いいたします。
今回のブログタイトルのような事例、各地で起こっているかと思いますので、SNS等でいろんな意見が出たら嬉しいです。(そして、それを読んで勉強させていただこうと目論んでおります。)

開口訓練と嚥下機能

嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎の原因になるのでなんとか予防したいところ

嚥下機能とひとことで言っても、食べ物を認知して、咀嚼して、口から喉へ送り込み、ゴックンして、食道から胃へ…という一連の流れがあります。

この流れのなかでどこがおかしくなっても誤嚥はおこりうると思います。
(嚥下にかかわる筋肉に異常がなくても認知機能がしっかりしてなかったら誤嚥しますよね。たぶんですけど。)


今回とりあげるのは、簡単なトレーニングで嚥下障害を改善できるか、です。

Jaw-opening exercise for insufficient opening of upper esophageal sphincter. - PubMed - NCBI
Arch Phys Med Rehabil. 2012 Nov;93(11):1995-9.
前後比較研究
嚥下障害のある8名の患者に4週間、毎日、開口トレーニング実施
口を最大にあけて、そのまま10秒保持。これを5回×2セット

舌骨の隆起、上部食道括約筋の動きなどが有意に改善。
何人かは、咽頭残留物が減少したとのこと。

P値の記載しかなく、どの程度、臨床的意義のある改善だったのかアブストだけではわかりません。
また、前後比較研究なので、その介入によって良くなったとは断言できませんが、まあ簡単なトレーニングですし、やってみてもいいかも。

あるいは、「しゃべりまくる」っていうのも嚥下機能低下を防ぐのに良いのかもしれないなぁ、なんて思いました。
滑舌の良いマシンガントークのおじいちゃんおばあちゃんに嚥下障害があるってちょっと想像つかないですよね。

でも、ただふつうにしゃべるだけではトレーニングにはならないのかも。
この論文は口をめいっぱい開けるという介入ですからね。

発声練習とか、あるいは歌を歌うとかならアリですかねぇ。全力で熱唱するとかw

そういう介入試験あるのかなぁ。
要は筋肉を使えばいいんですよね。

なんかおもしろそうなテーマですね。Pubってみようかとも思いましたが、今日は休日なのでここまで!