pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

転倒による怪我の予防介入のRCT

今日は昼休みとれそうです!
昼休みブログ更新活動!さっそく論文!

先日、ベンゾジアゼピンと転倒に関する抄読会のなかで、転倒を予防するための介入はないんだろうかという話になり、気になったので調べてみました。


Interventions for the prevention of falls in older adults: systematic review and meta-analysis of randomised clinical trials. - PubMed - NCBI
SR&MA
対象はRCT
さまざまなデータベースを参照、referenceも。
P:60歳以上の高齢者
E:転倒予防の介入(運動、教育、マネジメントプログラムなど)
C:通常ケア
O:転倒

結果は
22試験より、risk of falling (risk ratio 0.88, 95% confidence interval 0.82 to 0.95) I2=31%

おおむね、リスク減かな?という感じですが、本文のfig2,3を見ると、
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC381224/figure/fig2/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC381224/figure/fig3/
うーん、なんとも微妙な感じですね。
視覚的にみると異質性高そうな気も…

運動の介入も有益(NNT16)ってことですが、きちんと介入しないと逆に転倒したりしそうな気もしますね。
マネジメントプログラムはNNT11

さまざまな介入研究を集めているので、各研究ごとに個別に吟味したほうがよさそうな印象

ちなみにfunnel plot(どこに載ってるのか見つかりませんでしたが)は出版バイアスはないことを示唆
2名で独立して評価し、
元論文バイアスはjadadスコアで評価したっぽい。ちょっと古いやり方ですかね。まあ、10年以上前のSR&MAですから。


じっくり読んでみたいところですが時間がない!

1つだけRCTも!

Prevention of fall-related injuries in long-term care: a randomized controlled trial of staff education. - PubMed - NCBI

クラスターRCT(112施設をランダム化)

P:寝たきりではない65歳以上の高齢者 10,558名
E:2日間の集中的な安全訓練プログラム
(居住空間やpersonal placeでの安全性を目標としたプログラム。)
C:とくに介入なし?(すみません、時間内に記述見つけられず!泣)
O:入院や受診を必要とするような転倒による怪我
フォローアップ:1年

介入の詳細は本文参照
(杖や車椅子の使用における注意なども含まれているみたいです。向精神薬に対する評価・介入も行った模様)

結果は、ネガティブ
There was no difference in injury occurrence between the intervention and control facilities (adjusted rate ratio, 0.98; 95% confidence interval, 0.83-1.16).

これはちょっと驚き。
クラスターRCTですがかなり規模の大きい試験で改善みられず。
ただこの研究は受診を必要とするレベルの転倒による怪我なので、ちょっと転んだだけみたいなのはカウントされません。

このような介入自体が無効なのか、介入方法に問題があった(教育・指導が十分ではなかった等)のか、なんともいえませんが、転倒防止策としてどのような介入が有効なのか、もっといろいろ調べないとなんともいえませんね。
ただちょっと気になったのは、control群の施設も、介入は受けてないにしろ、転倒気をつけようぜっていう意識が働いた可能性はあるような気がします。独自に対策をとったかどうかはわかりませんが、このような研究に参加しているからには、意識は高まるんじゃないかなぁと。


さて、休憩時間が終わりました。
Limitation等、もっと読んでみたいところではありますが今回はこのあたりで終了です。

つづく…かも?

ピロリ菌除菌中、アルコールを飲んでもよい?

お盆明けって混みますね。もう完全に打ちひしがれました。
年末の激混み祭と比べれば患者さん少なかったのですが、途中から「帰りたい」以外の感情は消え去りましたね。

心がドス黒く染まってしまったので、純粋に臨床疑問を解決したいと思います。

「ピロリ菌の除菌治療中にお酒を飲んでもいいのか?」

結論から言いますが、この件、完全には答えが出てないので、「じゃあ、読むのや~めたっ」という方はソッとこのページを閉じてください。

患者さんから聞かれたことのある方、いらっしゃいますか?
どう思われます?

胃酸抑制薬としてボノプラザンを使ったレジメンでしたが(最近はこれが主流でしょうか)、まあとりあえず除菌治療薬のなかにアルコールの相互作用がある薬がないかかどうかを確認しますよね。
とくにアルコールとの相互作用は認められていない薬であることは各種メーカーさんに確認がとれましたが、問題なのはそこではありません。

除菌治療そのものにアルコールが影響してしまうのか?という点が気になるところです。

某学会のガイドラインで言及されているらしいのですが、有料のガイドラインですし(興味のある方はご購入いただければと)、その根拠となる引用文献はどうやら国内の文献らしく、質の高いRCTなどを根拠としたものではないっぽいなぁという気がしてしまいまして、結局、ふつうに原著を探しました。

除菌って英語でなんだっけ?というところでつまずいたのですが、eradicationというワードを使いました。
あとは、pylori、alcoholでこの3ワードで検索


Relation between alcohol consumption and the success of Helicobacter pylori eradication therapy using omeprazole, clarithromycin and amoxicillin fo... - PubMed - NCBI
Eur J Gastroenterol Hepatol. 2002 Mar;14(3):291-6.

パッと見、
2アームではなく単一アームの試験っぽいです

参加者は156名のピロリ菌陽性の消化性潰瘍or慢性胃炎

除菌レジメンは、
オメプラゾール20mg、クラリスロマイシンCAM500mg、アモキシシリンAMPC1000mgを1日2回 ×1週間

除菌成功は118名(75.6%成功)

アルコール摂取量との関連を調べると、
除菌失敗はアルコール摂取無しのほうが多いという結果
higher probability of failure non-consumers (29.9%) than in consumers (12.2%)
adjusted OR 3.24 (95% CI, 1.12-9.20; P = 0.03)

さらには用量依存性も
Eradication was dose dependent: 70.1% in abstemious patients (n = 107), rising to 79.3% in users of 4-16 g of pure ethanol a day (n = 29) and to 100% in users of 18-60 g daily (n = 20)

うーむ
ちょっとにわかには信じがたい。アルコール摂取してるほうが除菌成功しやすいとはこれいかに。

もちろんRCTじゃないので、アルコールを摂取する人と、摂取しない人の背景は偏っている可能性があり、これで結論が出るわけではありません。

併用薬は一切なしなので、他の薬剤の関与はありません。
年齢、性別、喫煙、病歴の長さなどは有意な関連はなかった模様。

このconsumptionって日ごろの習慣のことを言ってるんでしょうね。アルコール摂取者は除菌治療中も毎日飲んでいたのかな?というところがちょっと気になるところではあります。


個人的には、ピロリ菌の除菌治療は、PPIやボノプラザンを使って、がっつり胃酸分泌を押さえ込んだ状態で抗菌薬をぶちこむことでしっかりと除菌できるという印象を持っていましたので、胃を刺激して胃酸を促すアルコール摂取者のほうが治療成功率が高いというのは、おいマジか?という感じです。



[The effect of cigarette smoking and alcohol consumption on efficacy of Helicobacter pylori eradication]. - PubMed - NCBI
Pol Arch Med Wewn. 2000 Sep;104(3):569-74.

こちらは喫煙とアルコール摂取のピロリ菌除菌への影響を検討することを目的とした研究

The study was conducted on
142 H. pylori positive peptic ulcer patients treated with either OAT-omeprazole (2 x 20 mg), amoxycillin (2 x 1000 mg), tinidazole (2 x 500 mg) (69 patients) or OAC-omeprazole (2 x 20 mg), amoxycillin (2 x 1000 mg), clarithromycin (2 x 250 mg) (73 patients).

喫煙習慣と飲酒習慣を患者から聞き取り

Patients were defined as smokers if smoked 5 or more cigarettes per day and as drinkers if drank 25 g or more alcohol per week.
1日5本以上を喫煙者と定義、
1週間に25g以上のアルコール摂取を飲酒ありと定義

除菌成功率は、
OAT--69.6%, OAC--78.1%

喫煙習慣と飲酒習慣との関係は、、、
When two groups were analyzed together (OAT + OAC), the lowest efficacy of H. pylori eradication exhibited smokers who do not drink (53.7%) followed by smokers who drink (75.8%), non-smokers who do not drink (83.3%) and non-smokers who drink (92.9%)
詳細は、原著のアブストを見ていただくとして、ざっくり書くと、除菌成功率は、
飲酒あり・非喫煙者>飲酒なし・非喫煙者>飲酒あり・喫煙あり>飲酒なし・喫煙あり

この研究も、RCTとかではなく、①と同じような検討を行っている模様。

①では喫煙についてはとくに除菌に影響していないという結果でしたが、②では喫煙の除菌率低下が示唆



Smoking and drinking habits are important predictors of Helicobacter pylori eradication. - PubMed - NCBI
Adv Med Sci. 2008;53(2):310-5.

こちらは②と同じような研究でしょうか
レジメンも②と同じでOAC,OATの2種ってなってますね。

Drinking was found not to affect the efficacy of H. pylori eradication in any therapeutic group, while smoking decreased it in the OAC group (smokers 69.6%, non-smokers 94.3%, p=0.006).

こちらは飲酒は影響なしで、喫煙が除菌率を減らしていると。

CAMのレジメンのほうをみてみると、
in the OAC treated group, smokers-non-drinkers had lower eradication efficacy than non-smokers-drinkers and non-smokers-non-drinkers (59.1% vs 100% and 91.3%, p=0.01 and p=0.012, respectively).


飲酒の影響を調べようとしたら、喫煙が除菌率を下げそうだなという説が浮上

アルコールを気にしていたこのご質問の患者さんは喫煙習慣あり。
アルコールを気にするより、喫煙を控えたほうが良いのでは?と思えてきました。

ただ、①~③すべてRCTではないです。単一アームで除菌治療を行い、そのなかで比較検討していますから、介入試験とはいえ交絡の影響も考えなくてはならないのでは?という感じ。

日ごろの習慣により比較検討しているので、喫煙習慣で除菌率さがるかもっていうなら、じゃあ除菌治療時だけ禁煙すれば除菌率があがるのか?て言われるとなんともいえないですね。アルコールも然り。


結局もやもやしたままなんですが、

・アルコールの除菌への悪影響はなさそうなので、禁酒しろとまでは言えないですが、ピロリ菌による潰瘍や胃炎など発生しているなら、アルコールそのものが胃粘膜を障害するので注意ってことと、
・喫煙習慣があるなら、喫煙により除菌失敗の可能性が高まることが示唆されてるので、ためしに除菌治療中だけでも控えてみては?っていう感じで流れを作り、そのまま禁煙へと繋げられれば…

といった感じですね。

(★このレビューはあくまで医療従事者向けの考察です。除菌治療を受ける方で、主治医から飲酒喫煙について別途指示がある場合は、そちらに従ってください。また二次除菌などにおいて、メトロニダゾール(フラジール錠®、ボノピオンパック®、ラベファインパック®、ランピオンパック®など)を用いた除菌の場合は注意。メトロニダゾールはアルコールと相互作用があり、血中のアセトアルデヒドが増加し、腹部の疝痛,嘔吐,潮紅があらわれることがあるので,投与期間中は飲酒を避けることとされています。)

もっといろいろ文献がありそうですが、ここで力尽きました。(誤訳・解釈ミスがございましたらご指摘ください)
眠気MAX、やる気MIN…さっそく寝ましょう。おやすみなさい。

グルコサミンの件

表題の件、最近、話題になってるみたいですね。風の噂で耳にしました。
BMJが元ネタみたいですが、衝撃の報告だとか…。

このサプリメントについては以前BMJ2010の文献をピックアップした覚えが…。
ブログ内検索してみましょう。

ph-minimal.hatenablog.com

かすかに記憶が戻ってまいりました。

スポンサーの有無で別々に解析したらこうなりましたってところが一番印象に残っています(赤字で書いたところ)。


最近発表されたやつも、原著を探してみましょう。

うろ覚えのワードをつかって、
BMJ」「2017」「グルコサミン」で検索してみたところ、
以前のブログで取り上げたBMJ2010の論文がひっかかってしまいました。

おい、2017って入れたのにっ
2010のを引っ掛けんじゃないよと逆ギレしながら、スクロールしていくと、
上記リンクの私のブログが…。

だ〜か〜ら〜、2017のを見たいのに!


英語で検索してみましょうか。
グルコサミンglucosamineを英語に変えたら…

Subgroup analyses of the effectiveness of oral glucosamine for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual patient data meta-analysis from the OA trail bank | Annals of the Rheumatic Diseases

いろいろ文献が上がってくるなか、該当の論文らしきものが引っかかりました。
英語つかえば、pubmed使わなくても大体引っかかるんですよね。

英語検索でたいていはことたりるのですが、実は今回は別の方法で検索して該当論文を見つけたんです。

ツイッター検索!

グルコサミンで検索したら、良識ある医療者からの怒涛のコメントが…。
そして話題の元となった日本の記事がみつかり、引用元も書いてありました。

まあ、この話を耳にしたのがツイッターだったような気がするので、使ってみたんですが、慣れてくればツイッター検索も使えるかもな…と思いました。
話題の論文は誰かしらが呟いてたりしますからね。


さて、話題の論文は衝撃でもなんでもなく、アブストのresultをチラ見したところ、「でしょうね…」という感じなのでちゃんと読む気は失せました。というか、全文フリーじゃないっぽいですね。
一応、PECOだけ

P:patients with clinically or radiographically defined hip or knee osteoarthritis
E:oral glucosamine substance
C:プラセボ
O:Pain

気になったのはシステマティックに論文を集めたのかな?ってところです。メタアナリシスを実施するなら、きちんと網羅的に集めなくてはならず、かつ再現性も必要とされます。タイトルだけ見ると、ただのメタアナリシスかな?と思ってしまいそうですが、一応、システマティックにサーチしたとアブストに記載があります。
ただ、どんなデータベース(MedlineとかEmbaseとか)を使ったのか、などなど、あまりアブストに詳しく書いてなさそうな感じ。参照したデータベースくらいはアブストに記載されてることが多いんですけどね。まあ、BMJに載るような論文なのでそのあたりはちゃんとやってるんでしょうけど。

まあどっちみち、グルコサミンの効果がプラセボを大きく上回るなんてことはなさそうですよね。
全国でどれくらいの売り上げなんでしょうか?すごい額になりそうですけど…その効果はいったい…?

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追記
すみません、これBMJかと思ったら厳密には違ったみたいで、「Annals of the Rheumatic Diseases」に載った論文でした。失礼しました。