pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

新刊告知「形式的疑義照会を減らす! 外来処方箋の書きかた、考えかた」

疑義照会に関する書籍が発売されました。自分もほんの少しだけ執筆にかかわったので献本いただきました。

www.chugaiigaku.jp


著者は青島周一先生です。
自分をEBMの沼に引きずり込んだ招き入れていただいた張本人!
青島先生がいなかったら、自分はブログを書いてないし、書籍を執筆したりすることもなかったでしょう。
ようやく恩師のお仕事のお手伝いができてよかった!

内容は疑義照会を減らすためにはどうすればいいかっていう医師-薬剤師がwinwinになることを目指した一品。

疑義照会については、医師の立場でも、薬剤師の立場でもいろいろと思うところはあるでしょうけど、お互いの主張をぶつけあっても争いしか起きないでしょうね。

今の仕組み(※)では無駄な疑義照会は減らないでしょうけど、そこに切り込んで少しでもお互いの効率をよくしようぜ!っていうのが本書の狙いなのではないかと思います。

ぶっちゃけ、これを執筆したのは2022年なので、もはやなにを書いたのか覚えてないですけどね。
記憶のクリアランスの増加が著しい今日この頃。

まだ他の先生方が書いた内容を読んでないですが、医師のコメントもあるみたいなので、あとで読んでみます~!

※その仕組みってのはですね、「ピンポーン」おっとこんな夜中に誰かきたようだ…。

『エリスロシン錠200mg』の処方を『エリスロマイシン錠200mg「サワイ」』に代替調剤してもいい?

これ、自分は知らなかったのですが、ダメだと教わりました。

えッ!?エリスロシンのジェネリックがエリスロマイシン「サワイ」なんじゃねーの!?
2024年最大の衝撃!
(って言ったら、まだ今年始まったばかりやんってツッコまれたけど)

なんか一般名が違うんですって。

PMDAのやつで検索すると…(外用は除外)

ホンマや…。
ついでにドライシロップも違う。。

両者の違いは添付文書を見るより、こちらの文献をみたほうがいいですね。

抗菌薬内服療法におけるDDS
福森 史郎, 辻 泰弘 Drug Delivery System 33巻1号 p. 18-25 2018

「エリスロマイシンは胃酸による分解を受けやすいために、1回の服薬量および1日の投与回数が多いこと、胃腸管運動促進(酸分解物が原因)があることなどが臨床上の問題となっていた。エリスロマイシンの塩およびエステル体であるエリスロマイシンステアリン酸塩およびエリスロマイシンエチルコハク酸エステルはエリスロマイシン塩基となることにより、難溶性、耐酸性が増し胃内での安定性を増大させたエリスロマイシンのプロドラッグである。胃酸によって分解されずに腸で吸収されるようにプロドラック化したのがエリスロマイシンステアリン酸塩(エリスロシン錠)、一方で腸溶錠としてフィルムコーティングしたものがエリスロマイシン(エリスロマイシン錠「サワイ」)である」

臨床上の違いは小さいかもしれませんが、胃酸で分解されないようにする工夫が異なるようです。
ついでに適応症も微妙に違う模様。


というわけで、一般名が違うから代替調剤はできないってことみたいですね。
弊社のレセコンで代替調剤で入力しようとしたら、できない仕様になってました。

結語
自分よりもレセコンのほうが賢かった。。。

~終~


おまけ
↓以前まとめたこっちも厄介。用法も違うので間違えたら大変だ!
ph-minimal.hatenablog.com

「論文を読め派」 vs 「教科書やガイドラインを読め派」

「論文を読め派」 vs 「教科書やガイドラインを読め派」
定期的に勃発するこの戦争…。
自分は詳細は知りませんが、ぶっちゃけどちらの意見も「それな」と思ってしまうんですよね。
「薬剤師の仕事に役立つ臨床論文」なんていう本を書いておいてアレなんですけど…。
おまえも「論文を読め派の戦士」として戦えや!と怒られるかもしれませんが、どっちも一理あるって思っちゃうんだからしゃーない。
自分は二重人格のジキルとハイドなのです。

真面目に話してもおもしろくもなんともないので、水泳に例えましょう。

 

論文を読むスキル(情報の質を精査するスキル)は「水泳」です。
情報の渦に放りこまれても、溺れることなくスイスイ泳げるのって超アツいやろ!ってなわけです。
自分も泳げるようになりたくて、身近にトレーナーがいるわけでもないのに、何度も水に飛び込みました。
溺れ死にかけたこと多々あり。
そんな自分だからこそ思うのですが、いきなり泳ごうとしても水難事故を起こしかねない…。つまり、”論文の解釈間違い”や”どう解釈したらいいかわからない”ですね。論文の読み方をかじっても、臨床を知らず、背景知識も薄いままだと、論文を読んでも研究結果の本質をわかったつもりになってしまうリスクがあります。
しっかり体を鍛えていない状態でいきなり水に飛び込んで泳ぎ方だけを練習しようとするのは危険だということです。
いっさい体を鍛えることなく水にドボンしまくって、泳げるようになる人もいるかもしれませんが、それはその人が才能があるんですよ。あるいは、身近にメンターがいるかのどちらかでしょう。

「教科書やガイドラインを読め派」の戦士はおそらくそこを心配しているのではないでしょうか?
基礎体力をつけるのも大事でしょ!ジムに行って筋トレだ!ってことです。

でも、「泳げるようになる必要なんてない」という意見には反対です。泳げたほうがいいに決まってます。
薬剤師なんだから、情報の渦に飲み込まれること必至。
泳げないとニセ情報を信じてしまって溺れます。
ひたすら筋トレしてマッチョになっても(背景知識が増えても)、泳げないものは泳げません(研究結果の吟味ができるとは限らない)。
まあ、いうて、基礎体力の鬼なら、溺れにくいってのはあると思いますけどね。

 

というわけで、自分は最終的にはウルトラスイマーになるのが理想だけど、まずは筋トレも大事だと思ってます。
教科書、添付文書、ガイドライン…、いいじゃないですか。勉強になりますよ。
自分は、背景知識がないまま難しい論文の本質を見極める自信なんてないです。ある程度、知ってる領域(鍛え済みの筋肉)ならまだしも未知の領域を論文情報だけから学ぶのは効率が悪すぎます。まずはガイドラインでしょう。深堀りは論文って感じです。

 

あ、ちょっと待って。反論の声が聞こえてきました。「背景知識・基礎知識も論文から学べばいい」って?
たしかにそうかもしれませんね。
泳ぎの練習をする間に、自然と筋肉はつくと思います。
論文のイントロダクションを読むだけでも背景知識が学べるので、泳いで泳いで鍛えまくれ!っていう体育会系もアリかなと思うんですが、効率よく泳げるようになるためには、基礎体力をつける総合トレーニング(体系的に背景知識を学ぶこと)も必要だと思うんです。
おそらく論文を読むだけで背景知識が増えていった人は、調べ癖がついているんですね。論文の中に書いてあることに関して、わからないことがあれば別途調べるっていうのを徹底して深堀りしつづけたから鍛え抜かれたスイマーになったんじゃないですか?論文を読む過程で、自然と背景知識を収集するという筋トレを無自覚にやってたんじゃないでしょうか。そういう天才風のトレーニングもアリかもしれませんが、いきなり水の中に放り込まれて「さあ、筋肉を鍛えよ!」って言われてもねぇ~。まずはジムの器具(教科書)でトレーニングしたらい
いんじゃないですかねぇ~。

 

さて、かなり雑に書き散らかしましたが、もう飽きてきたので、このへんで終わりにします。

 

自分の指摘としては、

「論文を読め派」 の戦士は、
「教科書やガイドラインを読め派」が「論文なんて読む必要がない。教科書などを読め」と言っていると誤解している。
→おそらく「論文を読む必要はない」とは思っておらず、「まずは教科書とかから学んだほうがいいのでは?」と言っている。

 

「教科書やガイドラインを読め派」の戦士は、
「論文を読め派」が「教科書なんて読む必要がない。論文だけ読め」と言っていると誤解している。
→おそらく「教科書やガイドラインを軽視している」ということではなく、「基礎知識を学ぶことも大事」だけど、「情報を深堀りし、目の前で困っている個別の患者さんに適切な対応をするためには、最終的には論文から情報を入手できるようになったほうがいい」と言っている。

 

こんなところじゃないですか。
要はすれ違いですね~。
人間社会なんて、すれ違いの毎日ですわ。世知辛い世の中っすね~