pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

音楽の話をしよう Ricardo Villalobos - Sieso

だまされたと思って聴いてほしいシリーズ第5弾

天才Ricardo Villalobosが2005年にLucianoのレーベルCadenzaからリリースしたこれ!
www.discogs.com

ひさしぶりにPCDJを起動して、いろいろ遊んでいたんです。
どんな曲をつかってどんなふうに組み立てようかなって。
そういうときってとりあえず音源を手当たり次第聴いて、思い描く内容にマッチした曲を探すんですよね。

そこで、ひさしぶりに聴いて鳥肌が立ったのが上記リンク先のSiesoという曲。右端にYoutubeのリンクもあるので、そこで聴けるはず。

いや、これはちょっと泣きそうになりましたね。
すばらしい曲です。
リンク先のDiscogのコメント欄にもIncredibleってコメントしてる人がいますね。
どこの国の人なのか知りませんが、わかる!わかるぞ!

これはいつかフロアで聴きたいですね~。
自分の好きな曲をたくさんかけてくれるDJはいないかなぁ?
メランコリックなディープハウス~ミニマルハウス縛りのパーティとか誰かやってほしいですね。

バロキサビル(ゾフルーザ®)は二次感染を防げるのか

ph-minimal.hatenablog.com
以前とりあげたバロキサビルですが、いろいろと話題になっているみたいですね。
テレビでも商品名を出して紹介されてるみたいです。
(商品名って出しちゃっていいんですかね…?)

強調されてるのは、「オセルタミビルと症状持続時間が同程度」という話ではなく、
「オセルタミビルと比べてウイルス検出期間が短縮される」というCapstone1のセカンダリアウトカムのほうを強調されてる模様。
そして、この結果を踏まえて、「人にうつるリスクが"激減"する」と…。


いやあ~、こわいですね。
こわいですよぉぉ!

「この薬を1回飲めば、すぐに治るし、人にもうつさない!症状軽くなったら外出だぜ、うぇーい!!」

という懸念があります。

ウイルス検出期間が短縮するなら、理論上、人にうつしにくくなるとは思うのですが、実際、どの程度の影響があるのか不明です。

そのデータに関しては、Capstone1試験の論文(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30184455)には載ってなかったはず…と思いきや、FDAの資料に載ってるようです。
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/nda/2018/210854Orig1s000MicroR.pdf

69ページ。
The intra-household infection rate between Days 1 and 3 (the period of greatest separation between groups) was numerically lower in the baloxavir marboxil group compared to the oseltamivir and placebo groups (3.9% [overall; n=268] vs 5.2% [≥20 years; n=209] and 6.8% [n=134], respectively), although the difference was not statistically significant. Over the 15-day evaluation period, the rates in the baloxavir marboxil,oseltamivir, and placebo groups were 9.0% (overall), 8.5%, (≥20 years), and 9.3%, respectively.

家庭内感染
1~3日:バロキサビル3.9%、オセルタミビル5.2%、プラセボ6.8%
~15日:バロキサビル9.0%、オセルタミビル8.5%、プラセボ9.3%

うーん。
どうなんでしょうね、これは。
初期は微妙に減少傾向(有意差はない)
15日間にわたる家庭内感染の発生率はなぜか逆転してオセルタミビルのほうがやや少なくなっている(有意差はない)。
これがもしや一部の人においてはアミノ酸変異かなにかでバロキサビル投与群でウイルス検出期間が長引くっていう話とリンクするのでしょうか!?(いや…、わかりませんけどね…。汗)

あるいはこういう考え方もできるかも。
これは家庭内感染の発生率ですが、インフルエンザと診断されて薬を投与する以前にすでにご家族と接触してしまっているケースが多いような気もするので、この結果だけで、バロキサビルのウイルス検出期間短縮による二次感染リスク減少を否定してしまっていいのか?という疑問もあります。

まあ、ぶっちゃけよくわからない。というのが本音です。

ただ、この結果を見れば、「バロキサビルを使えば、人にうつすリスクが激減する」だなんていうテレビのテロップは出来上がらないと思うんですが…。いくらなんでも"激減"はないでしょう…。

まだちゃんと治っていないのに、「オレ、ゾフルーザ飲んだからもう大丈夫~」なんつって、すぐ外出しちゃったりして、インフルエンザの流行が拡大したらどうするんでしょうか?

うーん。
もやもやしますね。

ただ、バロキサビルという新薬が悪いのではありません。
「罪を憎んで人を憎まず」っていう言葉がありますが、「薬を憎まず」ですよ。
せっかくの期待の新薬ですからね。
「1回飲むだけで治るよ!」なんていうヘンな説明をして、「1日経っても治らないからまた受診した」とか「次の日になったら熱がさがったから、遊びに行った」みたいなことにならないように、正しい情報を広めないといけませんね~。

ラブサプリで色仕掛けというキラーワードがネットニュースにあがってきたので調べてみた

ヤホーのトップページにそんな記事がでていました。

ラブサプリ「こっそり混ぜて色仕掛け」 批判殺到でピーチ・ジョンが謝罪、販売中止
こっそり飲ませるとかヤバいですね。
そんな売り込みをしかけたのは下着販売がメインの会社だそうです。
批判殺到で販売中止とのこと

さて、ラブサプリというワード…、個人的には「はじめまして」なんですが、世の中にはそんなものがあるんですね。

原材料はなんなのかというと「ココア」とか「マカ」とか書いてある。「マカ」って聞いたことがあるぞ。
さっそくマカについて調べてみましょう。

uptodateでMacaと検索したらヒットせず。

ヤホーの検索ワード「pubmed maca herb」で検索しました。
いきなりシスティマティックレビューがヒット。

Maca (L. meyenii) for improving sexual function: a systematic review. - PubMed - NCBI
BMC Complement Altern Med. 2010 Aug 6;10:44.PMID:20691074

背景:Maca (Lepidium meyenii)の根を調整したものがsexual functionを改善するという報告がある
目的:臨床的効果について評価

システィマティックレビューのInclusion criteriaは、
「sexual dysfunctionの改善を目的としたマカvsプラセボのRCT」
もちろん動物実験は除外です。

基準を満たしたのは4報

ポジティブが2つ、ネガティブが2つ。

SRの結語は、
Macaのsexual function改善効果についてはlimited evidence とのこと。


アブストをざっくり見ると、こんな感じです。


さて、細かい点を
・利用したデータベースはMedline、EMBASE、Cochrane関連をはじめ多数。韓国、中国、日本などのデータベースも対象。
・ハンドサーチも行い、リファレンスも検索。
・言語制限なし。
・重複がないかのチェックも行われ、最初の出版物をピックアップ。
・データの抽出とレビューは3名が独立して実施、意見がわれたらディスカッション

メタアナリシスを実施するつもりだったが、statistical and clinical heterogeneityのため実施できず。

ひとつひとつRCTの概要を見ていくと…、

Subjective effects of Lepidium meyenii (Maca) extract on well-being and sexual performances in patients with mild erectile dysfunction: a randomise... - PubMed - NCBI
Andrologia. 2009 Apr;41(2):95-9.PMID:19260845
P:EDの白人男性50名
E:マカ
C:プラセボ
O:International Index of Erectile Function (IIEF-5) and the Satisfaction Profile (SAT-P).
試験期間:12週

IIEF-5は、日本のガイドラインhttps://www.jssm.info/guideline)に載ってます
0~25点(低いほうが重度のED)
5~7:重度
8~11:中等度
12~16:軽~中
17~21:軽度
22~25:EDではない

前後比較では、マカもプラセボもどっちもIIEF-5は増加
しかしながら、マカvsプラセボで、1.6 +/- 1.1 versus 0.5 +/- 0.6(P < 0.001).
25点満点で1点くらいですね。
ちょっとだけマカが勝ってる。


ほかの3つは割愛……。
Beneficial effects of Lepidium meyenii (Maca) on psychological symptoms and measures of sexual dysfunction in postmenopausal women are not related ... - PubMed - NCBI
PMID:18784609
Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men. - PubMed - NCBI
PMID:12472620
A pilot investigation into the effect of maca supplementation on physical activity and sexual desire in sportsmen. - PubMed - NCBI
PMID:19781622

いちおう、リンクだけはっときます。

すべて小規模のスタディでせいぜい50例程度。

対象者が試験によってさまざまですね。健康な成人男性だったり、閉経後の女性だったり。
エンドポイントもいろいろですね。健康成人を対象としたRCT(PMID:12472620)のエンドポイントはSelf-perception on sexual desireですって。このエンドポイントはラブサプリなるキラーワードが与えるイメージに近いかもしれませんね。4週目で有意差無し、8、12週目で有意差あり。アブストだけで詳細不明ですので、なんとも言いがたい…。せめて、スコアの差をアブストに書いておいてくれればいいんですけど。。

システィマティックレビューの考察によると、4RCTともに、ランダム化と隠蔽化の方法が記載されていないとのこと。

まあ結局のところ、「ようわからん」ってことですかねぇ…。


さて冒頭の炎上ネタに戻りますが、
もし仮に性機能改善効果があったとしても、性機能改善効果と"惚れ薬的な効果"は別物なんじゃないかな(しらんけど)。
性機能が改善したところで、嫌いな人は嫌いなままですよね(しらんけど)。


最後にあたりまえのことを言いますが、好意を寄せている人にヘンなものを飲ませちゃ(食べさせちゃ)ダメでしょう
ヘンなドラッグを飲ませるより、高級焼肉を食べさせたほうが、みんなハッピーなんじゃないかと思います。
だれか特上の牛タン奢ってくれないかなぁ…(そんな人はいない)