最近、ちらほら話題になっているので、デキストロメトルファンについておさらい
備忘録なので、まとまりないです。あしからず。
StatPearls [Internet].
Dextromethorphan Toxicity - StatPearls - NCBI Bookshelf
Dextromethorphan is also a commonly abused drug because of its euphoric, hallucinogenic, and dissociative properties.
abused drug:濫用薬物
euphoric:多幸感、陶酔
hallucinogenic:幻覚
dissociative :解離
デキストロメトルファンの使用および誤用は、デキストロメトルファン中毒を引き起こす可能性がある
1958年に承認、その後まもなくRecreational misuse(娯楽的な濫用)へ
【疫学】
米国では、デキストロメトルファンの濫用により、年間6000件のER受診あり(Identifying and treating patients with synthetic psychoactive drug intoxication PMID:30048361)
【病態生理学】
Dextrorphanはdextromethorphanの活性代謝物
NMDA受容体を遮断し、幻覚(hallucinations)、多幸感(euphoria)、解離(dissociation)、興奮(agitations)、昏睡(coma)を引き起こす
セロトニン受容体と結合し、セロトニン症候群[痙攣(seizures)、筋硬直(muscle rigidity)、自律神経不安定(autonomic instability)、横紋筋融解症]を引き起こす可能性がある
末梢のアドレナリン性神経伝達物質の再取り込みを阻害し、高血圧、頻脈、散瞳(mydriasis)、発汗(diaphoresis)を引き起こす
μ(ミュー)オピオイドやδ(デルタ)オピオイドの受容体には結合せず、σ(シグマ)オピオイドの受容体に結合して鎮咳作用を発揮する
【毒物動態(Toxicokinetics)】
Dextromethorphan has a half-life of 3 to 30 hours.
Peak plasma concentration occurs at 2.5 hours
In immediate-release formulations, standard doses range from 5mg to 30mg with the maximum amount of 120mg in a 24 hour period
(→参考:日本の添付文書 1回15〜30mgを1日1〜4回経口投与する。)
100~300mgで軽度の刺激・興奮(stimulation)、多幸感、幻覚
300~600mgで解離(dissociation )
600mg~でcomplete dissociation and coma
(→100mgは超えないほうが良さそう。)
【History and Physical】
General – 異常高熱(hyperthermia), 発汗(diaphoresis), 精神状態の変化(altered mental status:ranging from mild agitation to coma)
HEENT – 散瞳(mydriasis), 眼振(nystagmus)
Cardiovascular – 頻脈(tachycardia), 高血圧(hypertension)
Respiratory- 呼吸抑制(respiratory depression)
Neurological – mild to severe agitation
, confusion, hallucination, 運動失調(ataxia), 筋硬直(muscular rigidity), seizures, coma
精神状態の変化による外傷
【Treatment / Management】
Benzodiazepines are the preferred medication for chemical sedation in patients with dextromethorphan toxicity.
(→ベンゾジアゼピンの鎮静は有効らしい)
Patients with dextromethorphan toxicity can be discharged home if they are asymptomatic for six hours after ingestion if they are not suicidal and have a negative acetaminophen level.
Dextromethorphan poisoning: an evidence-based consensus guideline for out-of-hospital management
Dextromethorphan poisoning: an evidence-based consensus guideline for out-of-hospital management. Clin Toxicol (Phila). 2007 Sep;45(6):662-77. PMID: 17849242.
一部抜粋
服用後、軽度を上回る症状がある
→救急へ紹介
軽度症状:頻繁ではない嘔吐、傾眠(軽い鎮静、話し声や軽い接触で覚醒する)
5~7.5 mg/kgを服用
→摂取後4時間までの間、約2時間ごとにフォローアップを受けるべきである。軽度を上回るの症状が出た場合は、救急部へ
7.5 mg/kg以上を服用
→救急部へ
モノアミン酸化酵素阻害剤や選択的セロトニン再取り込み阻害剤など、デキストロメトルファンと相互作用してセロトニン症候群を引き起こす可能性の高い他の医薬品を服用している
→2時間ごとに8時間のフォローアップ
無症状で、摂取時から4時間以上経過
→自宅での観察も可能
嘔吐を誘発させないこと
Five deaths resulting from abuse of dextromethorphan sold over the internet
J Anal Toxicol. 2009 Mar;33(2):99-103. PMID: 19239735
デキストロメトルファンを娯楽目的での大量服用による死亡事故3例
どれくらい服用したのかは不明
デキストロメトルファンについての記載あり
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000603826.pdf
デキストロメトルファンの過量投与により、悪心、嘔吐、ジストニア、動揺、混乱、傾眠、昏睡、眼球振とう、心毒性、運動失調、幻覚を伴う精神毒性、過興奮性が起こる可能性がある。大幅な過量投与では、無気力感、呼吸抑制、痙攣が報告されている。
臭化水素酸デキストロメトルファン薬の濫用による中毒【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
中国語で発表された文献みたいです
「中毒例は4例で、いずれも市街地、男女各2例、年齢は13歳前後で、濫用量は90~300mgであった。薬物を服用した後、患児は約20minに典型的な臨床症状が現れた。めまい、頭痛、視物の不明瞭、悪心嘔吐、傾眠、発生位置覚の変化があり、……」
デキストロメトルファンの過剰摂取により死亡した一剖検例 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
日本法医学雑誌 (Japanese Journal of Legal Medicine)
(→日本でも死亡例があるのでしょうか。何mg服用したんだろう。タイトルだけで、中身は閲覧できませんが)
まとめると、100mgは超えないほうがよさそう
日本の添付文書は、1回15~30mgを1日4回までとなっているけど、1回30mg(2錠)でいくなら1日3回までにしといたほうがいいかも。実際90mg越えの処方は見たことない
中毒症状はさまざま。
StatPearlsには載ってなかったけど、悪心、嘔吐も起こりやすい模様
Tmaxは2~3時間らしく、各文献によると、過量服用後のとくに注意を要する時間は比較的短めのようです(4~6時間くらい?)。過量服用から半日以上とか過ぎれば、山は越えたと言えるのでしょうか?保障はできませんが…。ただ、相互作用のある併用薬剤もあれば、より長くフォローが必要かも。
多幸感とか幻覚とか得られるかもしれないらしいですが、他の中毒症状を見る限り、とても楽しめるものとは思えません。やめておきましょう(←当たり前)
※マネジメントの部分も少し抜粋しましたが、あくまで参考として記載しただけです
診療にあたる先生におきましては、原著をご参照くださいませ。