またまた嚥下のおはなし。
Early Dysphagia Screening by Trained Nurses Reduces Pneumonia Rate in Stroke Patients: A Clinical Intervention Study. - PubMed - NCBI
Stroke. 2017 Sep;48(9):2583-2585.
背景
嚥下障害は脳卒中のコモンな症状であり、誤嚥、肺炎のような重篤な合併症を引き起こす
早期の嚥下障害スクリーニングはこれらの合併症を減少しうる。
多くの施設では言語聴覚士(ST)が実施するが、週末や休日はSTがしばしば不在なため、嚥下障害の評価が遅れる
なるほど。STさんは土日お休みのことが多いと。
そこで、看護師さんが代わりに評価しようっていうのがこの研究の趣旨のようです。
早期のスクリーニングにより肺炎を減らせるなら凄いことです。
スクリーニング方法はこれ
Dysphagia bedside screening for acute-stroke patients: the Gugging Swallowing Screen. - PubMed - NCBI
Stroke. 2007 Nov;38(11):2948-52. Epub 2007 Sep 20.PMID:17885261
フルテキスト読めます(読んでないですが)
20点満点で高い方が嚥下機能良好
では、元の論文に戻って…
P:脳卒中急性期患者384名
平均年齢72歳
National Institutes of Health Stroke Scale score(NIHSS) 中央値3
E:pre-intervention n=198
C:post-intervention n=186
O:肺炎、入院期間
ランダム化の記載なし
comparable regarding age,sex,and stroke severity
ということで、年齢、性別、重症度については両群に差はない模様
ちょっと脱線してNIHSSについて
脳卒中の急性期に関わることのない薬局薬剤師としては、42点満点で3点と言われてもピンとこないですね。
NIHSSの項目は、
意識レベル
注視
視野
顔面麻痺
四肢麻痺
失語
構音障害
など。
42点満点で3点ですので、多少麻痺が残っていたりという程度の軽症の患者さんということですね。
(NIHSSによる転帰予測を検討した研究では、0〜6点を軽症として分類しています。理学療法―臨床・研究・教育 Vol. 17 (2010) No. 1 P 31-36)
<結果>
pre-intervention群はスクリーニングまでの時間が中央値7時間、post-intervention群は20時間
何日も評価が遅れたというわけではないようです。
肺炎発症率は、3.8% vs 11.6%(p=0.004)
入院期間(中央値)は8日vs9日(p=0.033)
入院期間は有意差ありといっても1日程度です。ほとんどかわらない気もしますが患者さんにとっては意義のある差なのかも…?
肺炎発症率の差がすごいですね。NNT13ってことですよね?ま、マジか…。半日程度はやくスクリーニングをしただけでこんなに差が出るものなのでしょうか…。
個人的にはランダム化の記載がない点が気になります。重症度や年齢が同じくらいといっても、いろいろ患者背景に差があるかもしれないので、NNT13という驚異的な結果には議論の余地があるかもしれません。
この試験は「やる・やらない」の比較ではなく「早いvs遅い」の比較です。肺炎減らせるかもしれないから、どうせやるならなるべくはやく評価しようぜってところでしょうか。そして、訓練をすれば看護師さんでもスクリーニング出来る、というのがこの報告から得られる知見かと思います。
個人的に気になるのは、土日勤務の看護師さんもお忙しいかと思いますので、そんな余裕がない!という悲鳴が上がるのかな…なんて。病院勤務経験がないので、ちょっと想像できかねますが、看護師さんのマンパワーが足りるのかどうかが気になるところですね。
実際のところ、脳卒中患者さんの嚥下機能の評価ってすぐに行う施設が多いんですかね。STさんの知り合いとかいないので、よくわからない…。病院勤務の方々とも交流を持って、もっといろんな職種の方々と情報交換していきたいですね。そのためには人見知りの壁をぶちこわさなくては…(遠い目)。