Three-year efficacy of complex insulin regimens in type 2 diabetes. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2009 Oct 29;361(18):1736-47
背景
2型糖尿病(T2DM)における経口療法に追加で行う特定のインスリン療法を指示するエビデンスは限られている。
オープンラベルの多施設共同試験
P:T2DM患者708名(HbA1c7.0~10.0%)
E/C:①二相性インスリン1日2回 ②超速効型インスリン1日3回 ③持効型インスリン1日1回
O:HbA1c値、HbA1c6.5%以下の患者の割合、低血糖発生率、体重増加
<患者選定基準>
・18歳以上
・T2DMの既往歴1年以上
・インスリン治療なし
・最大耐容用量のメトホルミンとSU剤を4か月以上使用し、HbA1c7.0~10.0%
(選ばれた患者の5%はメトホルミン、SU剤のどちらか一方のみ使用)
・BMI40以下
<患者除外基準>
・インスリン治療
・チオリダジン療法
・経口糖尿病薬3剤使用
<治療方法>
インスリン製剤はすべてノボノルディスクのフレックスペン製剤
①二相性インスリン インスリンアスパルト(ノボミックス30)1日2回(n=235→201名完遂)
②超速効型インスリン インスリンアスパルト(ノボラピッド)1日3回(n=239→188名完遂)
③持効型インスリン インスリンデテミル(レベミル)1日1回(n=234→189名完遂)
最初の1年間において、HbA1cが10%を超えた場合、または24週間治療後に連続してHbA1c8%以上の場合、または開始1年以降に HbA1c6.5以上の場合に、SU剤のかわりにもう1種類、別のタイプのインスリンを追加可能。
<アウトカム詳細>
プライマリアウトカム:HbA1c値
セカンダリアウトカム:HbA1c6.5%以下の患者の割合、グレード2以上の低血糖
無しでHbA1c6.5%未満の患者の割合、体重増加、血糖 値(自己測定)、インスリ
ン2種使用となった患者の割合、尿中アルブミン/Cr比、QOL
<結果>
二相性(n=235) | 超速効型インスリン(n=239) | 持効型インスリン(n=234) | |
---|---|---|---|
HbA1c(プライマリ) | 7.1% | 6.8% | 6.9% |
HbA1c6.5%以下の患者割合 | 31.9% | 44.8% | 43.2% |
体重増加 | 5.7kg | 6.4kg | 3.6kg |
ウエストの増加 | 6.0cm | 6.6cm | 4.2cm |
インスリン用量の中央値(IU/日) | 70 | 86 | 88 |
インスリン用量の中央値(IU/日/kg) | 0.78 | 0.94 | 1.03 |
低血糖発作grade1~3 | 116名(49.4%) | 122名(51%) | 103名(44%) |
低血糖発作grade3のみ | 6名 | 5名 | 2名 |
年間1人あたりの低血糖発作回数grade1(回/人/yr) | 3.8 | 5.7 | 2.7 |
年間1人あたりの低血糖発作回数grade2(回/人/yr) | 3.0 | 5.5 | 1.7 |
年間1人あたりの低血糖発作回数grade3(回/人/yr) | 0 | 0 | 0 |
尿中Alb/Cr比の変化 | -1.15 | +1.15 | -0.97 |
Crの変化(mg/dL) | 0.08 | 0.08 | 0.07 |
※低血糖の定義
grade1:低血糖症状あり、血糖値56mg/dL以上
grade2:低血糖症状あり、血糖値56mg/dL未満
grade3:第三者の支援が必要
有害事象の項目より
意識消失を伴う低血糖は、二相性1件、超速効型で0件、持効型で3件
死亡は、二相性7名、超速効型で9名、持効型で3名
<結論>
二相性よりも、持効型インスリンや超速効型インスリンのほうがHbA1cのコントロールに優れていた。
体重増加や低血糖が少なかったのは持効型インスリン群
<感想>
印象に残ったのは、
・持効型インスリン群で低血糖が少ない(ただし意識消失を伴う発作例あり)
・持効型インスリン群で体重増加が少ない
・二相性は血糖コントロールがやや悪い
・二相性はインスリン使用量(単位/日)が少ない
・尿中Alb/Crは二相性で増加、持効型・超速効型で減少
プライマリアウトカムはHbA1cという代用のアウトカムなのですが、インスリン療法における血糖コントロールは重要だと思うので、この文献をとりあげてみました。
パッと見、二相性はやや劣る印象。最近、処方も少なくなりましたね。
超速効型は低血糖が少なく、持効型インスリンは低血糖が多いのかなと、なんとなく思っていたのですが、持効型が低血糖が少なかったようです。
超速効型群では、「インスリン打ったけど、急に忙しくなって食事ほとんどとれなかった!」みたいなケースはなかったのかな?とコンプライアンスの問題も気になりました。
自分がインスリン治療を行うとしたら、小さなアウトカムの差よりも注射回数を重要視するかもしれません。1日3回注射よりも1回のほうが良いですよね。患者さんの負担も考慮して治療法を選択することも大事だと思います。